怪談・THE私XXVI:Turning 鴻の死骸
※この話は、私の生前のお話です。
弱ったまま何時間か経過した。
飛ぶ時に遅れて車にぶつかった。
同時に橋へ貼られたガラスに身体をぶつけて瀕死の恋愛相手がいる。
すぐ側にいるのに手が出せない。
お互いに交わせる言葉はない。
鳴き声も奪われた。
人は自然の一部というが、傲慢で劣悪で強欲。
そして頭が悪い。
飛行能力があっても、すぐ側で愛した仲間に救いの手が届けられないのであるなら意味がない。
私に痛みがのたうつ。
死への手向けかもしれない。
それよりも…羽根を伸ばせば手が届く…
それまで…それ…ま…
✳︎
空間が何処かまでは分からない。
水の中で泳いでいる。
それなのに息が出来る。
その瞬間に私は死んだと理解した。
なら此処は?
一体の海老が私を運んでいる。
初めてあったのに優しい対応だ。
きっとこの方も…
死んだのか生前なのか分からぬまま時が過ぎた。
ただ一つ言えるのは私には彼女を救えなかった事だ。
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