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怪談・THE私XX

※忘れられない想い出というのは非常に厄介だ。
濃厚であればあるほど、また求めたくなるように搾取への道が待っている。
味わうというのはそういう経験を繰り返すだけ。
欲は煽られるように出来ているのかもしれない。

消し炭

いくらつぎ込んでも弱体化させられるだけか。
新規待ってんだけどなあ!

現実で何かを構築する時にはどうしても新規かつハイクオリティのパーツが必須だ。
自分でゼロから作った物なら、好きな時にカスタムは出来る。
だが全てはそう単純じゃない。

二十個目の新規がくればすぐに購入する。
貯めていた資金も全てはその為。
節制するだけの価値があると思って三年が経過した。

結局は新規は来なかった。
この嘆きを何処にぶつければいい?
今更貯めた資金を他に使う目的もない。

爆発しそうになる気持ちをしまい込んだまま、経過した時間が戻らない絶望を噛み締める。

逆に欲望が消えてしまったともいえる。

硬派は辛い思いをするのが運命なのかもな。

水を溜めた風呂の中に顔を埋め、思考をフラットにする。
注ぐコップがなければ水は注げない。
飲めなければ腐るだけ。

何を構築しているかって?
それは人には言えない。

俺は箱の中を覗いた。

あと一つあれば、この恨みを解放できる。
お前を育てるパーツが買えるだけ今まではありがたかったのかもしれない。

心を開ける存在の欲望を満たせられないのはパートナーとして、配慮に欠けている。

いっそ、この身を捧げてしまおう。
先の人生を考えられるほど根がポジティブではないからな。

一気に、痛みなく俺をパーツとして使ってくれ。
その後にお前が完成するなら、俺は生きているも同然だからな。

犠牲じゃない。
構築に過ぎないだけ。

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