怪談・THE私Ver.7
※この怪談は運動とゲームが好きだけれど勉学が苦手だった人からお聞きしました。
有刺鉄線
私は彼と話すのが好きだった。
暗い子ではなかったけれど、乱暴な人とノリ良く過ごさざるを得ない小学生時代には娯楽があると違うなあと思う。
運動得意でそのままサバンナとか密林にいてもおかしくない姿をしているのにゲームとか遊び系統の話をしている時に目を輝かせる姿を見ると何故か私も安心する。
面白い子だなあって私は思ってても友達は顔の良い子しか興味がなさそうだから私はダンマリを決め込むのだった。
つまらない。
私は兄が置いていった恐らく大人向けであろう四コマ漫画を見つけて読んでしまった。
抵抗出来たのに吸い込まれるようにその漫画に釘付けになった。
そこでマイルドに描かれた所謂
『大人の恋愛』の先に待っていたのは独特の世界だった。
別に拒絶するつもりはないけれど凄まじい世界だった。
そうだよね。
サスペンスの主人公とサブキャラが特に恋に発展しないまま事件の解決に向かうのもよく考えられているのかもと子供ながらに思ったものだ。
そう思うと彼のギャップさが面白く感じていつの間にかよく話すようになった。
話を聞いていると妹の力が強くて困ってるとか体育のテストしか頑張れないのに評価が低いのが嫌でよく凹むらしい。
ゲームセンター◯らしみたいな生活をしたいとよく言っていた。
私はそんな彼の話を聞くだけでもよかったのだが、妙な関係だと周りに誤解されないようにと彼が私に気を回してくれてゲームの攻略法と引き換えに私は彼に勉強を教えている設定が付与された。
ほほう。
妹が強いのは確かなようだ。
少しだけ彼が「暑い」といって一旦Tシャツを脱ぐと、赤い模様が彼の身体に蛇のように纏わりついていた。
「え?それ、大丈夫?」
と聞くと彼はキョトンとしていた。
どうやら全く気がついていないようだ。
虐待?
いじめ?
と不安になったがそれは無さそうだ。
何故ならあの模様は人間の力で付けられる様な形では無かった。
謎は深まるばかりだ。
妹との喧嘩にしては派手すぎるし、彼の周囲の友人は体育での力強さや体力テストで彼の握力を見てからゴリラを恐れる目と純粋に力に飲まれる少年達だったから丁重に扱っている。
ならなんだ?
しかもあの模様は何処かで見た事がある。
刑務所?
か、CMで見た事がある怖そうなシーン。
小学生がまず触れる事がない単語なのは分かる。
刑務所…兄の漫画…まさか!
私は家ですぐに調べた。
当時はインターネットも発達していないし発想がなければ分からない物だったから。
私は外出した方が早いと近所を調べる事にした。
すると誰かの手招きが見えた。
私に?
手だけなのに此方を睨まれているような感覚だったが、本能的にその手に誘われる事にした。
人間の手だが人間ではない。
それを証拠に人通りの無い公園へと息切れしながら辿り着いた。
手はもう見えない。
幻覚か錯覚か。
よく分からないまま振り向くと誰かが立っていた。
「てっ…せ…」
あとは口だけ開いただけで消えた。
「てっせ?」
何故かは分からないが私が彼の模様を見てここまで走った事が謎の存在にバレていた。
だがお陰でその正体が分かった。
今思えばアナログ過ぎる探し方だった。
そして、子供のままでは分からなかった世界を知った。
それからも彼とはよく分からない関係が続く。
彼の好きな話を聞きながら、彼の苦手な勉強を教えるシチュエーション。
もうあの模様を見かけるような瞬間は無かった。
女子の前で服を脱いで悪かったと後に彼から謝れた。
いや、気にしなくていいよと正直に言うと彼は赤くなっていた。
逞しい力と同い年らしさがあり、誤解が多い世界を何だかんだ生きているのかもしれない。
上から目線になってしまうのが彼に対して申し訳なくなるが別にいい。
彼の側に立っている、私に単語を教えてくれた存在。
無害だといいなと祈りながら、私は見えないフリを続ける。
これを霊感と言うのだろうか?
誰かこの事態の対処法を教えて欲しい。
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