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怪談・THE私Ver.4

※個人の怪談です。
私はヤンキー気質が大の苦手ですが、この話はヤンキー気質の方からお聞きした話です。
どうやらその人は自分と住む世界が違う異性と付き合った経験があるらしいのですが婚約は破談になり、特に聞きたくもない冠婚葬祭の話を周りからされてから話し合いになって

『居るんですよねぇ。自分の成功体験が相手の幸せになると考えてる老害候補って。大変でしたね。』

と私が言うと

『話が合うな。』

と私に興味を抱かれたので笑える程度の闇を共有したことも。

最終的に人間が怖いよねと結論が出た後にそれ以外の怖い話を教えられました。
変に生きる事について背伸びしなくていいのに。
とフォローしておけばよかったですね。

グッドスタッフ

バイト帰りで疲れる毎日も慣れてきた頃。
専門学生として暮らし、己の為、学費の為、家族の為と目的が増えるが何十年繰り返せばいいのかを考えるとあまりにも先が見出せなかった。

考えてみれば、自分はいつも一つの事にも多くの事にも取り組むのには苦労ばかりしている。
今日の愚かな行動は電柱を殴った事だった。

いてぇ。
当たり前だがヒビなんて入りはしない。
八つ当たりなんて初めての経験だが、ここは街だ。
不審で邪念に満ちたこの手の行動は二度としないようにしよう。
自分はあまり、荒れた行動が似合うタイプではなかった。

気が付けば首を絞められてばかりで、反撃なんて簡単に出来ない。
そう言えば、誰に首を締められたのだろう?
喧嘩した覚えはないし、死の淵を彷徨う経験もない。
特にトレーニングも負荷をかけていないレベルではあるが、健康をなんとなく目指すくらいの動機で行動しているだけだ。

しばらくして、布団から飛び起きた。
夢を見たわけでもない。
けれどどこか首が痛い。
電柱を殴ったからなのか?
なら夢にその記憶が現れる筈だ。

呪いというのは基本的に「やられたらやり返せ」の世界だと聞く。
電柱といっても建築した人間は必ず居て、犬が用を足していたり、他にも人間が関わる場所でもある。
電気も流れているし、電線には鳥も止まる。

カードゲームのデッキ作成で『グッドスタッフ』というやり方を知った。
詳しくはないが、性能のいい高いカードだけで組んだデッキをそう呼ぶらしい。

電柱は生物の居場所として何十年の歴史が受け継がれている生の営みのグッドスタッフだ。
喧嘩も出来ない、自分のような最近鍛え始めた学生の拳というデッキでは電柱というグッドスタッフは倒せなかった。

だから、報いを受けている。

もしかしたら自分は見えないしょうはいによって気絶させられたのかもしれない。

なら、呪詛返しとして反撃をしたかった。
いつもやられてばかりで得体の知れない何かに電柱へ八つ当たりした事で眠れなくなるのなら、人として抗ってみたかった。

翌日。
今日もいつも通りの生活をした。
電柱の道は避けて、少し目星をつけた店を見学してから帰宅した。

夜に奴は現れる。
無駄なやり取り、だと客観的に見られればそうかも知れない。
このまま先の見えない未来を進むよりもくだらない八つ当たりの報いを受けて死んだ方がマシかも知れない。

それならまた、別の機会で訪れる寿命のリミットだと認識してから受け入れてしまえばいい。
だがいつも首を絞められる側なのは納得いかない。

狸寝入りをしながら奴が訪れるのを待っていた。

ミシッ…ミシッ…

足音とは違う。
だが歩いてはいる。

よかった。
想定外の存在だが、予想通り生物ではない。

ここで死んでたまるか。

熊が相手ではないのだ。
だからこそ得体の知れないそいつが首を絞めにやってきた時に

「はっ!」

どういう名前の攻撃かは自分でも分からなかったが自分の拳が奴の身体に命中した。

電柱を殴った時の痛みと同じ硬さ。
敢えて痛いとは言わないように沈黙を貫いた。

奴の気配が消え、自分は過呼吸になっめいた事に気が付いた。
呪詛返しというよりもただの反撃。
恐怖よりも達成感がある。

もう大人しく一人で過ごすのもいいが、こういう時に誰かと部屋で飲むのも選択肢に入れる事にしよう。

それから自分は帰りに、前に目星をつけた店で食事を済ませた。
ここの常連になる事から始めよう。
学生といえばこういう縁の在り方が漫画にもあったし。

少なくとも溜まったストレスを理不尽に電柱へぶつけて首を絞められるよりはマシだ。

こんな体験も、自分以外にあるかも知らないと頭の片隅にしまい込んで語る事も無く過ごすように心がけながら。

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