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怪談・THE私XXIV
※これは、割と最近のお話です。
解放
胡散臭い話や何かに縋らざるを得ない経験って、皆さんはございませんか?
マジョリティに所属していて弱ってる誰かって凄くターゲットにしやすい。
特に二◯二三年現在で団塊からアラサー辺りまでって極端ですから。
私は霊界でも「メンヘラが好きなの?」と遅れた事を聞かれる事があります。
そういえばその方は「無」へは行けなくてこの世に留まっていました。
私もこの世に留まっているので人の事は言えません。
哀れだと自分達はつくづく思う。
今日も居候先で主人が私に憎い奴を呪って欲しいと大金を集めて頼まれました。
幽霊ってそういう類じゃないと何度話しても聞いてくれない。
そりゃそうですよね。
同じ事を繰り返して生きづらくなる事しか人間は出来ませんから。
既に人間ではない私はこの人に何も感じず、思わず、誰も呪いもしません。
解き放たれたい願いは知っていますから。
けど、一度でいいからフィクションの霊のように誰かを呪ってみたい。
生前の私は悔し涙を流すだけの人生でしたから余計に。
それに何処から持ってきたのか分からない大金を受け取れないのに供えられちゃ、裏切りは許されないと感じましたから。
理由は至ってシンプル。
離婚です。
けれど対象は女性だった。
自慢ではないけれど、私が居候先をしている方は婚約者に理解がある人で高校時代の野生っぽさから惚れ、ずっと主人が働き相手は性だけを求めていた。
勿論主人は喜んであの人の為に働いている。
それと、いつか相手が誰かにたぶらかされる事も知っていた。
多数派はびっくりするほど弱い。
愛着も何もかも体裁以外興味がない。
だからこそ贅沢な多数派のはぐれ者が主人の相手をお互いわかっていたとしても奪われた事に許せない恨みへ変わった。
ひとときかつ自分達がゼロから生み出した幸せを多数派かつはぐれ者に奪われたと知って私は何処か安心しながら呪いを試そうとポルターガイストを起こしてみた。
主人の相手とその方を奪った奴を上手く分断して狙いを定めて追い詰めてやった。
奴は走る。
死にものぐるいで走る。
私は追う。
狩人のように愉悦さを覚えて。
もう霊感なんてなくても殺気がバレれば霊だってすぐに分かる。
今時幽霊相手にここまで怖がられるとは思わなかったから冷やかしのつもりで脅かしてやったっけ。
楽しかったなあ、裏では汚くて表では正論や綺麗事でやりくりしている人間の正体と幽霊に対する態度。
呪いなんてものはないけれど、霊だって人は始末できる。
大金分の仕事を果たす為に私は奴の身体を奪った。
このままだと痛みまで生前のように共有しちゃうから四肢だけマリオネットのように動かす事にした。
舌を噛み千切らせないように布は携帯している。
こんな機会滅多にないから。
✳︎
主人には私が眠らせたと嘘をついておいた。
私が呪いで殺めたと勘違いした主人は今頃その恨みを動けない奴に晴らしているでしょう。
それなりに現実の物体に干渉できる霊である私は処理も任せられるかもしれない。
引っ越しセンターじゃないのに。
でも主人とはこれでおあいこ。
相手は何が起きたか分からず戻ってくる。
私はサラリーマンが嫌いだから例の相手さんと一緒に過ごす時間が堪らない。
この経験を元に仲間を集めて人間を追い詰めるのも趣味としてありだなと手応えを感じた。
そんな私達の一日。
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