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OVERS PROFILE

※この物語はフィクションです。

紹介:怪人として

二〇〇二年十二月生まれ。
オレのデータなんざこんなもんでいいだろうがよお!
なに小説の主人公に期待してんだよあぁ?
困ったら哲学に頼ってるのと、力に頼ってるオレとどちらが勝ってるのか分かってんだろうがぁ?
倫理観がどうだって?

「そこはワタシが説明させてもらおう。擁護ではなくて軽蔑ですけどよね。」

ふん。
ムカつくパートナーフェアリーだぜ。
妖精ってのはもっと優しいモンだと思ってたのによ。

「それは別の世界の話ですよ。固定概念に囚われた幸せは幸せではございませんし、固定概念に囚われた決めつけは人間関係を破綻させますよ?」

んだとお?
まっ、いいや。
ヤッシェの言うことだ。
その通り。
俺の人生は破綻の連続だった。
その辺りの掘り下げが欲しいだあ?
んなもん、教えるかよ!

でも、オレも承認欲求があるからある程度自己紹介してやるぜ。
冒頭では言ったけどな。

オレは廛隻やしきたつき
ヤッシェっていう妖精と共にこの世に不必要な奴らをぶっ潰す!
労働ともボランティアとも違う役割を担ってんのさ。
また倫理感がどうのって言うんだろ?
じゃあてめえは今まで倫理感守って貢献してきたのかよ。
金積まれたらお前の首を狙うぜ。

「隻。
今はターゲットを追跡する必要がある。
あのお爺さんだよ。」

ああ。
巷で噂の老害だな。
歪んだ道徳観を引っ提げて臭い体臭と金を持ってるなんざあ、死ぬ以外が価値がねえよなあ!

「その通り。だから私を媒介にあの姿で潰すよ。」

それが貧しく育ったオーバーセカンド世代のオレの役割だった。
常にターゲットがいるこの終わった世界でオレは満たされているよ。
なんと言われてもなあ!
ここでオレの力を行使させてもらうぜえ!

生活:病原菌

 俺は少子高齢化が嫌いだ。
大好きだったコンテンツが次々と予定していないものになってしまった。
年寄りのせいなのは確実だ。
俺は学生運動に参加していた年寄りの元で孫として生まれ、腐った田舎とも都会とも言えない世界で生きている。
歪んだ価値観や道徳を押し付ける両親も嫌いだし、鬱で俺達兄妹に当たってくる。

この世にスーパーヒーローはいない。
みんな自分の利益ばかり求める。

馬鹿だ!
家族?幸せ?就労?
どこにも幸せなんかなかった。
他人を巻き込んだ幸せなんていつか消えてなくなる。
いつまでも人間はここまで馬鹿で搾取されるなら俺は何の為に生きている?
せっかく今年二十になるというのに!
普通が羨ましい社会に誰がしたんだ!
普通なんて…存在しないのに。

 俺は駅に自転車で向かった。
しかし今日から無料駐輪が出来なくなった。
どこに停めればいいんだ?
仕方なく人通りの少ない場所に停めて俺はホームへ向かい、稼げない仕事に取り掛かる。

━━━夕方

ない?
自転車がない?
俺は近くにいた年寄りに食いかかった。

「すみません!俺の自転車はどこですか?」

最早胸倉を掴みかけた。
その勢いのおかげか、年寄りはトラックに積みかけた俺の自転車を渡してくれた。
よかった俺の自転車!
それから年寄りに何か言われた。
若手から搾取しておいて…いつか見てろ?
そんな恨みを拳に震わせていると

「つまらない者にはメーン!」

俺の頬に年寄りの血液が着いた。

「アンドクラッシュ!」

その場に居た年寄り達が謎の死神に始末された。

「ヤッシェ?これで全てか?」

「ええ。頼まれた仕事はこれで片付きました。」

まるでピカソが描いたようなゲルニカ型の死神が段々人間と謎のトンボに分離した。

「ああ?何立ち尽くしてんだてめえ?」

殺気は無いが口調は荒い。
普通は怖がる。
だが固定概念に囚われたくなかった俺は、見た所歳が近そうな彼に声をかけた。

「ま、まさか俺が憎かったあのジジイを殺してくれるなんて。」

すると唾を路上に吐いた彼は無表情で応えてくれた。

「溜まってんなあどいつもこいつも。これでもオレは汚れ役背負ってんだぜ?このジジイ達はあるお婆様から始末を頼まれたのさ。
コンプラを守る為に多くは言えないが、このジジイ達は偽善者だ。殺すべきな。」

「依頼人の財産を奪った以上、私達が手を貸すのも無理はないのです。」

「正義や悪、ましてやお前の独り善がりな憎悪の為に俺達は活動はしてねえんだよ。」

結構高圧的なのに俺はゾクゾクした。
質問を続けよう。
殺されても構わない。

「あなたは、年齢は幾つですか?」

彼は目を文字通り丸くした。
こんなやり取りは初めてというように。

「変わってんなお前。じゃあヒントだ。あるヒーロー番組がバトルロワイヤルを最初にした年にオレは産まれた。
まさかこんなしょーもない世界になるとは思わなかったけどなあ!」

なるほど。
だとしたら。

「俺もそうなんだ。02年生まれ。」

「おいおい。
お前サブカル野郎かよ。
ヤッシェ!こりゃあ面白いやつが出てきやがった。」

邪魔な年寄りも消えた。
けどまた湧いてくる。
依頼があったらこの一人と一体がまた死神となって整理してくれる。
そんなことを思っているとトンボが近寄ってきた。

「貴方変わってますね。
けど、隻…彼の名前です。
貴方が同い年でなければ邪魔な時間を取られたと殺されていた所ですよ?」

なんだって?
けど恐怖はなかった。
もう面白いことも何も無いし。
欲望も何も無い。
だから彼とこのトンボこそ希望。
そう思っていると彼は後ろから語りかけてきた。

「久しぶりにコミュニケーション出来て嬉しいぜ。
まあ役割を遂行している所を目撃されたし、仲良くするか。」

「あと貴方内心では私を虫だと思っていますね?私は妖精ヤッシェ。以後お見知り置きを。」

「かてえなお前は。」

はは。
なんだか騒がしいな。
怖い筈なのに嬉しい。

どうせ世知辛い世の中だ。
俺は彼らの力になろうと心から決めた。
例えどんな末路だとしても。

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