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苔蟲
二◯二三年。
日本に留学中のタイ出身タイ生まれの青年、ヤングァックは女性顔がコンプレックスの筋肉金髪青年である日本人、流棚と友達である。
二人が今の関係になったキッカケは筋トレだった。
まだインターネットが市民権を得る前に、中学時代で動画投稿をしていた時に二人は今で言う「コラボ」をしたのだ。
その当時は流棚がヤンキー気質で友達が多く、そこにいた別の国の出身だがほぼ日本で暮らしている女の子がいた。
ヤングァックは彼女に惚れ、流棚がそれに気がついたので
「俺さ、顔で性別間違われるの嫌で身体鍛えてるんだよね。半裸になるの好きだけど変態じゃない。
アピールだ。
今よりもヤングァックが日本語を上手くなればケイルもヤングァックの筋肉に惚れる。
頼む。
日本語教えるからタイ語を教えて欲しい。」
思ったよりもといったら失礼だが、血が通った対応をしてくれた流棚。
親切な人だが仲間意識が高く、見た目とは裏腹に仲間を馬鹿にされたら金髪で殴りにいってまで助けるその姿はスーパー◯◯ヤ人そっくりで憧れでもある。
自分も筋肉質で、「日本人じゃヤングァック君には勝てないよ。」とあまり褒めてない事を言われるが「流棚には勝てないと思う。」と付け足されると安心するヤングァック。
留学したのも母国の嫌な人がヤングァックの腹を殴ったので逃げるように流棚の元へホームステイしている。
といっても流棚が会社員でヤングァックもバイト生活をしているからホームステイというよりルームシェアをしている。
流棚はシャドーボクシングが好きだが格闘技には興味が無く、英語のアニメやサブカル小説を読む為に駅前留学をしている。
ヤングァックは流棚が駅前留学をしているのは単純に女性講師に惚れているからだ。
「俺達で村みたいなグループ作ろうぜ!」
とヤングァックのようなタイプの仲間を増やし、助け合って生きていくその願いをヤングァックも叶えたいと応援していた。
今でも動画配信はしているが、特定が怖いのでヤングァックが流棚をタイに誘って活動を行なっている。
もう二人でルームシェアするぐらいの関係なのか。
ケイルの事をそろそろ流棚から聞かないと。
子供の頃のようには、やっぱり聞かないな。
ヤングァックは敢えて筋肉を見せつけるようにタンクトップで学校へ通い、帰りはマックで済ませようと都市の中で比較的落ち着いた場所で川を眺めていた。
すると、人の形のような何かが流れてきた。
最初はスマホで撮っていたがだんだん興味が湧いてきて、その物体まで近づいた。
見るとゼリー状の形容しがたい塊だった。
けれど、この物体をどこで見た事がある。
するとその物体はまるで人間のように立ち上がり、ヤングァックの前までやってきた。
物体は人間のようにパンプアップし、男性のマッチョのような形に変わった。
「う、うわぁ…」
万国共通の恐れを言葉にするヤングァック。
顔のような部分は擬態だ。
その物体はヤングァックの顔を掴む。
臭い!
川の臭いと藻の臭いが融合している。
ヤングァックは正当防衛で殴ったがゼリー状の腹筋は抉れても元に戻った。
ダメージが通じない?
物体の腕が ヤングァックの腹筋を殴る。
「うあっ!」
体力が一瞬で奪われる。
若くてタイで鍛えた肉体があったから死なずに済んだがこの物体は、攻撃する時に組織を硬く出来るようだ。
しかも人間の拳のように。
そう言われると強さにピンとこないだろうがコンクリートにヒビが入るくらいの力待ちなのにこちらの攻撃はゼリー状の身体で効かず、再生する物体が相手といえば実感できると思う。
「ぐはっ!」
壁に叩きつけられ、人型ゼリー状生物はヤングァックの肩に手を当てた。
そこから皮膚と神経を攻撃し、ダメージを与えてくる。
一体なんなんだ。
なんでこんな目に?
オラァッ!
ゼリー状生物の身体が粉々になる。
「連絡したのに反応がないから心配したぞヤングァック!」
「流棚?」
ピンチになると現れる金髪細身青年流棚!
こう見えても手を出す時は今みたいな緊急時のみなんです!
「その生物はオオマリコケムシだ。」
「動画で見た事あると思っていたら、やっぱり!」
「こいつを喰うぞ!」
ええ?
サバイバル動画なんて作った事ないだろう?といいかけたヤングァックはすっかり流棚に染まっている。
ヤングァックは流棚と協力し、このオオマリコケムシを倒す事に成功した。
「また助けられたな。ありがとう流棚。」
「仲間の緊急事態だ。助けねえわけないだろ。」
相変わらずだ。
なら、この動画を公開するかもしれない空気で彼女の事を聞こう。
「話を変えるけどさ、ケイルって元気?」
すると流棚が
「離婚した。
今は時々会ってる。
昔より仲がいい。」
これが日本でかつて流行っていた「今北産業」か。
相変わらず流棚は直球の関係じゃない方が上手くいってるな。
「ヤングァックって、ケイル好きだったっけ。
再婚するならヤングァックがいいってさ。」
流れが色々と急すぎる。
「昔みたいに仲間揃えて、ルームシェアしようぜ。態々式挙げなくてもいい。」
日本も相変わらずようだ。
みんな生きやすくなるといいな。
ヤングァックは流棚の肩を抱き、家まで歩く。
「ずっと馬鹿やってこうぜ流棚。」
「ああ!」
ただ今は人型オオマリコケムシを研究してこのご時世で一攫千金を狙う計画を立てている。
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