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怪談・THE私XXI

※このお話は、
某場所で起こった出来事を、お聞きした内容です。

もろとも

いつもは連絡の来ない友人からトークが送られてきた。

「また見ちゃったよ。
人が死ぬ瞬間。」

不吉だと指摘して欲しいのだろうか。
普段は連絡してこない癖に。
漬物を嗜んでいる身として、こういう事には他人事でいたい。

蜘蛛のように獲物を待つ生活は俺には合わないから、自分から作って待つ生活が実行と待機を繰り返せるので、喫茶店で態々ノートパソコンを開くサラリーマン
や、誰も助けもしない啓発家が嫌いな俺としては誰にも指図されないこの瞬間が好きだ。

「はっ!一生画面に食いついてろ!」

俺は最近怒りが湧く体験ばかりしているからか、外出を控えている。
喫茶店で仕事をしている姿を見ると本当にイラつく。
そこで奴のトークだ。

別に今いった連中が死んで欲しいわけじゃない。
勉強や読書なら全然理にかなっている。
遠回しに飲食経営を馬鹿にしている態度を取られるのが気持ち悪いだけだ。

「たかが人間の癖に。」

俺の口癖だ。

すると奴のトークに写真が添付されていた。

そこには俺がイメージしたサラリーマンらしき姿が砂嵐のような画面で叫んでいる。

人が死ぬ瞬間…あいつは何を見たんだ?

「おい。どういうシチュエーションだったか教えろ!」

すると慣れているのか、あいつが説明を伺った。

友人は酔い潰れていて、詳しくはわからなかったがパソコンを抱えている男性を見かけたという。
ただし、その先は街から離れた田舎道へ続く場所でその時間帯に誰かが向かうなんて低確率だ。
朦朧とする意識の中で夢を見たのだと思った友人はそのまま駅に向かっていると、突如古い屋敷が夢に現れ、そこに先程の男性がいたという。
何をするのかまでは分からなかったが、その男性が此方を振り返ったという。

するとノイズのように景色が揺れ、目の前に何者かの顔がインクのように友人の顔を塗りつぶした。

らしい。

そして送られた写真には俺が知るサラリーマンらしき人物だったのだ。

「言いたいことが多すぎる。
だけど、なんでこんな形で俺の元へ?」

不可解だ。

俺はその写真を消し、端末で動画を見ながら寝た。

あれから友人から連絡はない。
それから俺は喫茶店に行くのを辞めた。

                    視えたからだ。

あのサラリーマンが意識のたかそうな別のサラリーマンの肩に手を乗せているのを。

「好きで仕事してるわけじゃないよな。」

考えを改め、これからはそういう会社員を見たら偏見を持つのを金輪際辞めた。

今のところ俺に手は出されていない。

しかし、友人越しで俺にあの姿を見せた理由はなんだ?

俺は恨む側から恨まれる側になったということなのか?

もう、誰かに思想を押し付けることもやめよう。

いつか、あの人が死なば諸共とヤケを起こしそうだから。

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