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怪談・THE私XXVI:Turning 亀の死骸

※この体験は僕の生前です。

  人間が道路を作り、ドブや側溝を作り、僕を野放しにした。

本来僕達はこの国に存在してはいけないらしい。

他の水辺へ渡る為、勇気を出して道路へ渡ったら甲羅ごと車に潰された。

人間にも良くいる勇なき成功者は、人の立場を考えずに行動しろと宣う。

馬鹿な奴だよね。
僕もその馬鹿のひとつ。

ただ違うのは勇気なんかなくても本能で水を探すにはドブから這い上がって道路を渡るしかない。

普段は獲物の蛙や蛇を見て、その時は実感しなかったがやっと身を以て実証できた。

もう。
僕は死んだのか。

✳︎

  空?
まさか飛んでいる?
いや、感覚も何もない。
死んだら此の世に留まらずに済むのではなかったのか?

そこには私と海老を運ぶ鴻が飛んでいた。

海老に対して襲う気持ちはない。
向こうも怯えていない。

きっと生きているつもりで僕達は死んでいる。

それが現実だと改めて死に至ることで発見した。



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