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怪談・THE私49夏最終

※個人の怪談です。

霊達の決意

 生者って何百年、何千年経っても進歩がなくて気持ち悪いじゃない?
まあ、選民思想せんみんしそうが嫌な上にこっちは既に死んでいるから群れても一人でも意味は無いけど。
死んでるしね。

 流石に死んでるからって華がないおどろおどろしい姿が黒歴史としてホラー制作スタッフに弄られるのもなんだか質素だし、時代遅れだし、ムカつく。

「死んでもフラストレーション溜まるなんて。」

「孫に囲まれて大往生したのになんかつまらない。」

「私たちは海で散骨して貰えたからよかったよ。
家族いないと役所で無縁仏だし。」

 率直に言えば生者ってみんなバカでキモくて嫌い。
資本主義も共産も必要なく、SNSもいらないし進歩しなくていいし性別も関係なくていい…なんなら生きてすらいないから別にいい!
けど…私たちは欲深いからなんか行動したい。

「幽霊アイドルなんてどう?」

 発案者が言うのもなんだが、ネーミングセンスがなくて安直。

「え?部活?所属だけしているあれ?」

「違う違う。
一応生きてる人間のエゴやら世界観だと、私たちは幽霊って概念じゃない?
それに私は作家だったわけじゃないし、そんな経験もないからなんとなく!」

「意外とおちゃめな所があるんだね。」
なんてからかわれながらも私は凛として主張した。

「死んだ私たちや、最悪生きている人間共にも通じる曲を提供するのも死んだ後の…生き方?上手く言葉に出来ないし、よくは分からないけど乙なものじゃない?」

 簡単に言えば無情にも意識が残ってしまったから生きている人間達に腹いせがしたいのだ。
誰のせいでもないけれど。

 それでなんとか私たちで歌詞を作成した。
曲は保留。

遅れた怨嗟-全うせし者の願い-

やっと天寿を全う出来ました
私たちのその後、聞いてもらえますぅ?

やっと解き放たれた

制約ばかりの意味なき生死

ニーチェさんはいいですね 転生もしてないので

死者の時代よ ようやく来たれり

遅れた生者は オワコン

フワフワな 幽霊こそ素晴らしい

※セリフパート
「生者なんて臭ーい もう近寄らないで欲しい
介護も嫌ー」

立ち向かおう 幽霊達

霊の恨み 排他的理由はいたてきりゆう

亡者達も棲み分けして

霊のパラダイス

つ く り た い!

 やっと歌詞が出来た。
まあ、私たち死者ができるのはこんな捨て台詞しかないけれどもう死んでるから許して欲しい。

 それなのに死者である皆は、霊体アイドルに興味があるらしい。
こちらの作詞も気に入って貰えた。

 これからユニット開設の過程を死者の目線でお届けしようかな。

 なぜなら。
それくらいしか楽しみがないから!

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