顕ル
※この話は呪われる話ではありません。
ある種の共存の可能性。
久しぶりに地元へ帰ってきた。
もう両親も居ないし、やることもやったから実家というか別荘のような感覚だ。
思えば親孝行といえることもやらなかったし、結婚がどうのとか世界中探してもセンシティブな事を平気で聞いてくる遅れてる日本人の中ではまともな方だったかもしれない。
だからって私が善人の様な行動をとることはないのだ。
遠くの他人が近くの身内より有難いと知ってから自立してこの場を出た。
たまに帰るにはちょうどいい。
それに、私には人には言えない事情があるのだ。
自分の後ろに立っているあの女が心の中まで無言で見つめてくる。
もう少し私の領域のルールを弁えて欲しい。
本当に人外というのはフィクションだけが優しいようだ。
最近はそうでも無いらしいが。
この女は私の幼い頃からずっとそばにいる。
何もしては来ないのだが「害はない」というだけで居るだけで恐怖を与える。
素晴らしい。
こんなプレッシャーのかけ方があるのならジャパニーズヤクザも便利にシノギを削れただろう。
「さあ、せっかく二人きりだしワインでも飲む?」
女は頷いた。
本当の性別は分からないが独身の私がそこまで現状を気にしないのはきっとそばにいる女の存在もあるのかもしれないなあ。
謎の女はされるがままにワインを手に取る。
さあ、乾杯しよう。
ここにはもう煩い奴らはいない。
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