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VRChat1周年記-仮想世界で1000時間以上過ごして見たもの感じたこと-

2021年4月22日、VRChatの世界に飛び込んでから1年が経った。1年前のあの日、Japan Shrineに行って日本語じゃない他の言語で話している人たちが居て適当に手を降ったらちゃんと振り返してくれて「インターネット上の世界でどこの誰かも分からない相手とボディランゲージが通じた」ということがひたすらにエモかったということを覚えている。

初めてVRCの世界に入った時のつぶやき、ここから全てが始まった

あれから1年が経ち今ではプレイ時間は1000時間以上、フレンド数も500人を超えるまでになりもはや「VRCを遊ぶ」のではなく「VRCは生活の一部」と呼べるまでになってしまった。そんなVRCで1000時間以上の時を過ごし何を見て何を感じたのか1周年を迎えるこの機会に語って行こうかと思う。

1000時間何をしたのか

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正確に記録していたわけではないのでざっくり換算ではあるが、1000時間の内850時間は適当なワールドで集まって雑談で50時間がワールド巡りをしたりゲームワールドで遊んでいた時間、50時間がアバター集会等のイベントに出ていた時間で残りの50時間くらいがデスクトップモードで起動してUnityを同時起動してアバターを調整していた時間という感じだと思う。

昨年末に書いたnoteでも少し書いたが最初の頃は数人居るフレンドの所にjoinするかpublicに行ってなんかわちゃわちゃしている様子を見に行くくらいしか無かった。だがフレンドが増えるにつれてJoin先は破竹の勢いで増えて行き、500人以上のフレンドが居る今では毎日違う界隈にJoinするような感じになっている。

最初に書いた通りやっていたことの大半は雑談なのだが、一口に雑談と言っても改変したアバターを見せたり話題のワールドやフレンド周りといったVRCらしい話から仕事の愚痴や流行りのゲームやアニメのような学校や職場の友人と話すようなことまで本当に多岐に渡っていた。VRhatの世界に居る人達は本当に色んなことをしている人が居て、普通に生活していただけでは一生出会わなかったであろう人たちと会えて色んな話ができたことは本当に貴重な体験になったと思う。

1000時間居て感じたこと①-VRChatとセカンドライフ-

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VRChatのことを語る上でやはりセカンドライフは避けては通れないだろう。セカンドライフはアメリカのリンデンラボ社が2003年にサービスを開始したサービスで、仮想世界で自分だけのアバターを使い他のユーザーと交流したり土地を買って家を建てたりとやれることはほとんどVRCと同じで経済のあるVRCといった具合だったようだ。日本からも電通やソフトバンクといった有名企業が次々と参入して話題になっていたようではあるが、2020年現在その名前を聞く機会はかなり少なくなったように思う。(しかしながら2021現在もセカンドライフ自体は未だ健在で一応少ないながらも日本人も居るらしい。)

VRChatとSecond Lifeの違いとして、Unityという汎用性の高いゲームエンジンを使っているのでオリジナルのアバターを作りやすいことやPCゲーマーが増えたことでスペックの高いPCを所有している人が増えたこと、一部のVtuberがVRCをやっている動画を投稿して話題になっている等々色々と要因はあると思うがやはり一番大きいのはVRで楽しめることだろう。

VRで楽しめることの凄さは大きく分けて2つある。1つ目は別の自分に成りきれること。VRを被りコントローラーを手に持ってアバターを選択する。その状態で下を向くとアバターの首から下が見え、あたかも自分がそのアバターになったかのように見える。VRChatのワールドには鏡が設置されていることもあり、その鏡の前で様々なポーズを取るとそれに連動してアバターも動くためより一層高い没入感を体験できる。画面越しに操作しているだけではいくら自分と言えど別人に感じることが多かったのが、VRを使うことによりあらゆる動きが自分と連動するためそのアバターが別世界の自分であると十分に体感することができるようになった。

2つ目は第三者から見た時に、ヘッドセットとハンドコントローラーによるトラッキングによってそのアバターがあたかも生きた人間のような動きをしているように見えるということ。基礎的な仕組みはSecond Lifeと同じでもアバターが生きているように見えればそれが単なる3Dポリゴンではなくその世界で生活している人間であると人の目は認識できる。足が動かず頭と腕だけの3点トラッキングでさえこのレベルなので、フルトラならもう完全に生きた人間そのものである、とにかく動きがリアルなのだ。

VRchatの世界には無言勢と呼ばれるボイスコミュニケーションを行わず身振り手振りのボディランゲージでのみコミュニケーションをする人たちが一定数居る。VR機器の高いトラッキング精度に加えて人間以外にも猫耳とか美少女アンドロイドとか色んなアバターを使うことができる仕組みが合わさってカワイイムーブをしているのを見るとこの世界のどこかに本当にこんな生物が存在しているかのように見えてくる。

1000時間居て感じたこと②-ユーザー主体のクリエイティブ文化-

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例えば某国産MMORPGにはハウジングと呼ばれる自分の家を持てる機能があり、それを使って「〇〇屋さん」とか「不定期でオープンするカフェ」といったロールプレイをしている人たちが居る。とはいえあくまでもMMORPGなので運営が開発したメインクエストとかバトルコンテンツをプレイするのが大半のユーザーにとってのメインコンテンツである。

VRChatの場合、極端な話運営が提供しているのはアバターやワールドをUnityを使ってアップロードするためのSDKとそれを動かすためのサーバー、それから一部のpublicアバターとHomeワールドくらいな物でよく見るアバターやよく行くワールドの大半はユーザーによって作られたものである。今現在VRChatには約6万ほどのユーザー作成ワールドがありアバターに至ってはもう何体あるのか数え切れないほどあると書くとどれだけユーザーのクリエイティブ性が高いか伝わるだろうか。(アバターやワールドだけでなく、アバターの設定を簡単にするためのツールを作っている人とかも居る)

勿論みんながみんなワールドやアバターを作っているわけではなく、イベントを主催している人も居る。VRChatイベントカレンダーを見ると、平日でも10~20件、土日ともなると30件ほどのイベントが予定されておりほぼ毎日何かしらのイベントが行われていることが分かる。同じアバターを使っている人同士で集まるアバター集会から始めたての人向けの初心者集会、それこそ「不定期でオープンするカフェ」のようなイベントをVRの世界で本当にやっている人も居る。

とにかくアバターにしてもワールドにしてもイベントにしてもそのほとんどをユーザーが作っているのが今のVRChatでClusterやバーチャルキャスト等の他のVRSNSと比較すると圧倒的に多いアクティブユーザー数が示す所でここまでユーザーのクリエイティブ性が高いサービスも中々無いだろうと感じた。

1000時間居て感じたこと③-「何をするのか」ではなく「誰とするのか」-

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VRChatにはトラストランクというものがあり、一番最初は「Visitor」から始まりひとつ上の「New User」にならないと自分のアバターをアップロードできないという制限がある。だが制限らしい制限はそれくらいの物でどこのワールドに行こうが何をしようが基本的には自由である。

自由であるが故に例えば一人でワールド巡りをしたりゲームワールドで遊ぶこともできるが、正直それではシングルプレイのゲームを遊んでいるのと体験としてほとんど変わらないだろうと思う。フレンドと一緒にワールド巡りをすれば自分が気が付かなかったポイントに気づいて新たな発見ができるかもしれないし、一緒にゲームワールドに挑戦すればクリアした時の喜びを分かち合うことができる。

最初の頃は「せっかくVRの世界に居るのだから現実じゃできない体験がしたい!」と思ってパーティクルライブとか武器を持って戦うゲームワールドに行ったりしていたのだが、次第にゴルフとか釣りとか別に現実でやろうと思えばそんなにお金がかからずにできるようなことでもフレンドと一緒にやればすごく楽しいことに気がついた。本当に大事なのは「何をするのか」ではなく「誰とするのか」だったということに。

ワールド巡りやゲームワールドで遊んだりする以外にも単純に話がしたかったり改変したアバターを見せびらかしに行ったりするのもフレンドが居なければ成り立たないことである。一方でとりあえずVRChatを始めてみたけど、適当なワールドに行ったらよく分からない外人に絡まれて怖くで辞めてしまったという声も少なからず聞く。もしこのnoteを読んでVRChatを始めようと思った人が居れば、「[JP]Tutorial World」や「CONNECT STATION」のような日本人の多いワールドに最初に行ってみることをオススメする。

まとめという名のなぐり書き

自分がVRという物を最初に体験したのが大体2014年頃の話で、Oculus DK2で「恐竜の背中に乗って大自然の中を歩いていく」みたいな内容のコンテンツだった。画面は今ほど綺麗じゃなくてドッド感がすごいし、ポジトラは無いので移動できないしハンドコントローラーなんて影も形も無かったけどそれでも画面の枠を超えて中に入れるという体験は凄かった。

以来すっかりVRにハマってしまい、学生でお金が無かったのでOculusみたいな高価なガジェットは買えずスマホ向けのダンボールで出来るやつを買って「このVRの凄さをみんなに知ってほしい!」と常にリュックに入れて学校の友人とか先生とかに被せて当時はまだまだごく一部のコアな界隈でのみ認知されていたVRを広める活動をしたり自分でVRのゲームを作ったりもしていた。

あれからかなりの時間が経ち、PSVRが発売されたりスタンドアロンで遊べるQuest/Quest2が出たりして世の中のVRに対する認知はかなり上がったと思う。渋谷のスクランブル交差点でインタビューしても20人に1人くらいはなんとなくどういう物か知ってるくらいは居るのではと思う(適当)。しかしながらVRが今のインターネットとかスマホくらい誰でも使うような世界が来るのはもう少し先の未来だと思っていた。

いつ頃からだったかは忘れたけど、坪倉さんとかそういった方々をフォローしていたのでVRChatも存在自体は知っていてなんとなくその世界で起きているできごともTLで流れてくる情報は追っていた(パリピ砲なる物があるとか、WEBPanel死亡事件とか)。Vket4がきっかけでこっちの世界に来て、あとはもうそのままズルズルと沼に引きずり込まれ気がつけばプレイ時間1000時間を超えていた。

VRChatを始めてからというものとにかくVRという物に対する認知が根底から覆されるようなことばかり。例えば市販のVRゲームはそもそも移動しないとか視界が狭くなるといった酔い対策が入っていたりするが、VRChatではそもそも移動が当たり前だしやれ車だの電車だの戦闘機だの何の酔い対策もされていない移動するオブジェクトに平気で乗ってギャーギャー言っている。現実世界じゃ大きなイベントに行くくらいしかVRを持ってる人と会えなかったのが合う人合う人みんなVRヘッドセットを持って頭や手を動かしているし、なんなら足まで動いている人も居る(デスクトップの人もそれなりに居る)。同じインスタンスに入ってVRヘッドセットを付けたまま寝るVR睡眠ということをしている人たちまで居るという。1000時間もこの世界に居る今ではすっかり当たり前になってしまったが、CardboardやらGearVRを片手にVRを広める活動をしていたあの頃の自分からすると、随分と未来に来てしまったなと思う。

VRChatの世界には確かに凄い人はいっぱい居るのだが、本当に重要なのはそうでは無い人が居るということの方だと思っている。ゲームではない明確な目的が無いVRChatのようなサービスでは「作る人」と「遊ぶ/利用する人」の両方が居て始めてサービスが成り立つ。実際自分のフレンドにも数名居るが非エンジニア系の高校生とか大学生が男女とわず普通に居て、そういった「遊ぶ/利用する人」側のたちにまでVRが広まっているのかと思うとこれもまた感慨深い。

初めてVRを体験した時の「画面の枠を超えて向こう側の世界に行ける」という体験は強烈なインパクトで以来画面の向こうの世界の体験を自分も含めたVRコンテンツ開発者達は作ってきたわけだが、VRChatをやり始めてからVRが持つ本当のポテンシャルは「"体験"としての現実を超える」じゃなくて「"空間"としての現実を超える」ということだったんだなと個人的には思った(※一人プレイ用のVRコンテンツを否定するわけではないのでそこはあしからず)。

VRChatのことを一言で表すなら「メタバースとクリエイティブの未来」だと思っている。アバターモデルやアクセサリーといった3DCGモデリングやワールドギミック等のプログラミング等々様々なクリエイティブで実際にプロやそれに近いレベルの人に教えてもらえ、かつその結果を多くの人と近い距離で共有できるサービスは早々無いだろう。「VRChatがきっかけでモデリングを始めてCGデザイナーになりました」という人が出てくるのももう時間の問題だろう(既に居るかもしれない)。

今はまだアバター制作やワールド制作で収入を得て生活している人はまだいない(と思う)が、先日発表された今後のVRChatのロードマップではアバターやワールド製作者、その他パフォーマーを対象にFanboxのような形で支援できる機能の実装予定が公開された。こういった機能が充実してくれば文字通り「仮想世界で生活している」という人ができる可能性もあるのではなかろうか。

VRChatの世界も良いことばかりではなくコミュニケーションが主体であるがゆえの人間関係のもつれとか、市販のゲームソフトからのアセットをぶっこ抜いたワールドとか違法ツールを使ったアバター盗難等々問題も多くある。それでも僕らはこの世界に居続けるだろうし、人が増えれば増えるほどこういった問題は起きてくる物だろうし長く付き合っていかければならないと思う。

最後に初期のころにお世話になった一部のフレンドの方々にお礼を。初めたての頃にシェーダーの設定がミスって変な見た目になっていることに気づいて声を欠けてくれ、その後も色んなゲームワールドで相手になってくれたZさん、最近はあまり会えてないですがすずらんでフレンドになって広い交友関係で色々な方を紹介して頂いて多くの方とフレンドになるきっかけをくれたTさん、テクニカルな部分に強く好きな作品が同じこともあって深夜まで話し相手になることが多かったM先輩、最初に会った頃は酒場を開いていてそのあとも気になるワールド巡りを定期的にやってくれるTちゃん、ちょっと天然な所もあるけど同じアバターで何パターンも改変作っててずっと凄いなって思ってるMちゃん、そして最初期にフレンドになってくれてVRChatの世界のことをアレコレ説明してくれたKさん、貴方が居なければ自分はこの世界にこんなにも長く留まることは無かったと思います本当にありがとうございました。







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