僕の彼女は殺人鬼

〈耕介へ。七時三十分までに二見にくること。遅れたら殺す〉
 朝、起床早々に確認したスマートフォンに届いていたメールの文面に従って、僕は七時二十分には、バス停「二見」に並んでいた。僕の前には、二人組の女子中学生が並んでいて、楽しそうにおしゃべりしている。
 七時二十九分過ぎ、道路を挟んだバス停の向かい側に、メールの送り主である僕のクラスメイトにして恋人である、牙城戦(がじょういくさ)が現れた。彼女は、首の中ほどまで伸びたつやのある黒い髪に、くっきりと高い鼻に、小さな可愛らしい唇に、はっきりとした知的そうな目に、端整な顔かたちに細い体に形のいい胸を持つ、美少女である。
「お早う、戦」
 僕が手をふって挨拶すると、彼女は「お早う耕介」とぶっきらぼうに返事をした。
 その時。
「ひふぉふしちゃう~(遅刻しちゃう~)」
 と、食パンを口にくわえながら叫ぶなんて器用な真似をしながら、僕と同じ学校の制服を着た少女が、走って来て。
 道の石につまずいて。バランスを崩して転倒して。
 牙城戦に、ぶつかった。
 戦はすぐに腰に下げた鞘から日本刀を抜き、「ご、ごめんなさ……」と謝ろうとする少女の首を、切った。
 女子中学生たちが、悲鳴を上げた。
 飛び散る鮮血。アスファルトに転がる少女の首。首を無くして倒れる身体。刀を鞘に納める戦。
 戦には、些細な切っ掛けで人を殺してしまう悪癖がある。僕は思わず目を瞑り、殺された少女の冥福を祈り、ついでに朝から僕に好きな人が人殺しをする光景を見せる神様への、呪詛を念じた。
 僕の前の女子中学生2人が、ひそひそと話す。
「ねえ、あれが噂の……?」
「うん。人殺しばかりしている女子高生……」
「怖……」
「し! こっち来るよ……」
「あんたたち……」
 バス停に並ぶ僕の傍まで来た戦は、二人の女子中学生を睨みつけてそう言うと、
「陰でこそこそ言われるのって、すごく不愉快なの」
 再び刀を抜き、彼女たちを一刀両断のもとに斬り捨てた。
 飛び散った鮮血を浴びながら、僕は泣きそうな声で言った。
「ねえ戦。こんな些細なことで人を殺しちゃいけないよ」
 いつも会うたびに僕が口にする言葉への戦の返答は、今朝も変わらなかった。
「うるさい。私の勝手でしょ」
 バスが来た。僕たちは乗り込んだ。車内では、血まみれの僕達が、乗客の注目を浴びているようだったが、戦が殺意に満ちた目を見せていたおかげか、誰も彼も恐る恐る僕らに視線をちらちら送るのみだった。
 高校最寄りのバス停に着くまでの間、戦はずっと、最近殺した人の話を、僕に話し続けた。
「コンビニの店員にお金を渡したらね、そいつ、私の方を見ないで受け取りやがるのよ。むかついたから、頭を握りつぶしてやったわ」
「散歩してたらね、サッカーボールが飛んできたの。蹴り返してやったってのにそのボールで遊んでた餓鬼ときたら、お礼の一つも言わないのよ! 首切ってやったわ」
「切った首をボール代わりにして公園で蹴ってたらね、そいつの母親らしき女が来てギャンギャン喚くのよ。うるさいからそいつの首も切ってやったんだけど、ねえ耕介、親子でサッカーボールになるなんて、傑作じゃない?」
 あはははっ、と、高らかに笑う戦の隣で僕は、周囲からの恐怖と嫌悪の視線を感じ、いたたまれない気持ちになった。
 校門をくぐる時、(今日はもう誰も、戦に殺されませんように)と、僕は願った。無駄だと知りつつも。
 教室のドアを僕と戦が通ると、それまで賑やかにおしゃべりしていたクラスメイトたちが、突然シーンと静まり返った。
 戦は誰のも挨拶などせず、早く自分の机に座ってしまった。
「耕介。ちょっと話できるか?」
 机にカバンを下した僕に、中学時代からの友人である江崎卓也が話しかけてきた。僕が「良いよ」とうなずくと、「ついてきてくれ」と言って、卓也は教室を出た。僕は彼についていった。男子トイレに入った江崎卓也は、ドアを閉めた僕を真正面から見つめ、言った。
「耕介。インドにいる俺の叔父の所に今すぐ行け。そうすりゃいくら牙城でも追ってこないだろう。とにかくお前は一刻も早く、あの女から逃げるべきだ」
 僕は、ため息を吐いた。
「また、その手の話か……」
「俺は、お前のためを思っていっているんだ」
 卓也は僕の肩を掴んで、教えさとすように、懇願するように、言葉を紡いだ。
「なあ耕介。俺たちと同じ中学からこの高校に進学した奴らの内だけでも、何人が牙城に殺されたと思う? そう遠くない未来に、お前だって殺されるに決まっている。そりゃ、牙城は見てくれは良い。殺人癖さえなければ、俺だって惚れていただろう。あんな逆上癖の、殺人狂の女でさえなけりゃ――」
「誰だって、欠陥の一つぐらいあるだろ。戦はそれが、よく人を殺すことだって言うだけだ」
 彼女の悪口を聞かされて、僕は段々、腹が立ってきた。
「彼女が人を殺すたびに、僕は言っているんだ。『そんな些細なことで人を殺しちゃいけないよ、戦』って。だから――」
「それで、あいつがその言葉を聞き入れる気配はあるか?」
 僕は、言葉に詰まった。
「今朝だって、あいつは登校する前に、一人殺してきたんじゃないのか?」
 僕は、何も言えなかった。
「なあ耕介。あいつを、殺人鬼を改心させるなんて、お前にも誰にも無理だ。諦めて別れろ。お前自身のためなんだ」
「それでも、それでも僕は……」
 僕は、言葉をつっかえながらも、はっきりと言った。
「僕は、戦が好きなんだ」

 僕が牙城戦と初めて出会ったのは、この高校への入学式の時だった。
 僕と同じように新入生として出席していた戦は、突然日本刀を抜き、周囲の人たちに切りつけ始めた。後で本人に理由を聞いてみたところ、会場がムッとして暑くて、「なんかイライラしたから」だそうだ。
 会場は、怒号と悲鳴で満ちた。先生たちは彼女を止めようとして、次々と返り討ちにあった。
 僕は、隣に来た卓也から、「逃げるぞ! 耕介!」と腕を引っ張られながらも、どうしてもその場を動くことが出来なかった。
 どうしても、止められなかったのだ。卓越した運動能力で動き回りながら、人を殺し続ける彼女を、見つめ続けることが。
 その美しい瞳から、目をそらすことが。
 いつの間にか、その瞳は、僕の目の前にあった。
 牙城戦の構える刀が、僕に振り下ろされようとする、まさにその直前に。
「付き合ってください!」
 頭を下げて、僕は叫んでいた。
 戦は刀を止め、唖然として僕を見つめた。ほかの人たちも、同じようにぽかんとして、僕を見つめた。

 卓也との会話を終えて教室に戻ってすぐ、僕たちの担任である年配の女性教師がやってきて、ホームルームが始まった。
「今日は、皆さんに新しいクラスメイトを紹介する筈でしたが、」
 彼女は、悲痛な表情で言った。
「残念なことに、それは永遠にできなくなりました。彼女の元気な姿を、皆さんは決して見ることは出来ません。この学校に来る途中に、首を切られてお亡くなりになったからです」
 彼女は、目頭をハンカチで押さえ、くっ、と、嗚咽を漏らしつつ、言った。
「私には分かりません――。16歳の女の子に、こんな酷いことが出来る人間の心が、分かりません」
 僕は、ぎょっとした。本人の、戦のいる前で、こんなあからさまな非難を口にするなんて!
「彼女は、お父様の仕事の都合で転校しざるを得なくなり、これまでの友達たちと別れざるを得ないことを寂しがりつつも、それでもこの高校で新しい友達とあえることを、楽しみにしていました。こんな、何の罪のない少女を殺すなんて、こんなことは、人間の所業では――」
 彼女はそれ以上、言葉を継げなかった。
 立ち上がった戦が投げたボールペンが、高速で空を切り、女性教師の頸動脈を掻き切ったからだ。
 ペンが黒板に突き立つと同時に、女性教師の喉から血が噴き出た。
「先生――!」
 生徒たちが駆け寄った時には、彼らの担任はもう、絶命していた。
「お前……! いい加減にしろよ!」
 江崎卓也が立ち上がり、戦を指して叫んだ。
「こんなことをして、楽しいのかよ! この鬼! 悪魔! 鬼畜!」
 戦は卓也を見返した。
 僕は戦が動くよりも先に、卓也に殴りかかった。好きな人を侮辱されて黙っているようでは、男ではない。
 卓也も「この馬鹿野郎!」と言って、殴り返してきた。
 卓也に近寄ろうとした戦は、僕たちの始めた喧嘩を前にして立ち止まり、自分の机に戻った。
 その日の午前中、戦はずっと不機嫌な様子だった。
 数学の時間には、教師から解いてみろと言われた問題を間違えた男子生徒を、素手で絞殺。(「馬鹿って見ていてイライラするの」)
 体育の時間には、サッカーボールを高速でキーパーの頭に叩き込んで、撲殺。(「あいつ姿勢がきにいらないわ」)
 家庭科の時間には、教師を縫い針で刺殺。(「私より下手に縫うからよ」)
 昼休み、他に誰もいない教室で、僕と戦は並んで昼食を食べる。敷き詰められた白米の中央に梅干しが一つ埋め込まれただけの簡素なお弁当をぱくつく僕の前に、戦が「これやるわ」とタッパーを差し出した。その中には、空揚げやブロッコリー、ハンバーグが入っていた。ハンバーグは明らかに買ったものではなく、手作り感にあふれた外見をしていた。
「えっと……これは?」
 僕は聞いた。
「……おかずよ。あなたいつもそんな粗末なものばかり食べているから、作ってやったのよ。感謝しなさい」
 そう言って、戦はぷいっと、顔を背ける。頬がほんのりと、赤みをさしているようだ。
 僕はじっと、タッパーを見つめた。戦が僕の為に食事を作ってくれるなんて、初めてだ。
「ありがとう。戦」
 僕は蓋を開けて、彼女の作ってくれたおかずを味わった。美味しかった。
 午後の授業では、戦は誰も殺さなかった。
 放課後、僕と戦は一緒に、帰路につくバスに乗り込んだ。しかし僕たちは、朝に乗った二見より、二つほど前のバス停で、バスを降りた。そこは、この街の中心部だ。沢山の自動車が行き交う車道。人が行き交う歩道。
 僕たちは横に並んで、気まずそうにちょっと距離を置いて、歩いた。
「HOTEL SUN」という名の建物の前で、立ち止まるまで。
 僕は戦へと向いた。彼女はちょっと、じっと正面を見つめた後、僕へと向いた。
「……行こうか」
 彼女の気持ちを確認するように、僕は言った。
 戦は小さく頷くと、手を出してきた。僕はそれをしっかりと握りしめて、前を向く。
 その時だった。
「は、離してください!」
 少女の、甲高い叫びが、聞こえてきた。戦は手を振り払い、声のした方向へ向かった。
「待ってよ、戦」 
 僕も追いかけた。戦はホテルと隣のビルの間の路地裏へ入っていった。
 そこでは、胸糞の悪い光景が展開されていた。
 女子高生と思しき少女を、同年代らしき六人の少年たちが取り囲み、肩に手を置いたりして、にやにやと厭らしく笑っているのだ。
「ギャンギャン喚くなよお。楽しいことしようぜえ」
「すぐ終わるからさあ」
 ……何となく、彼らの目的は察せられた。あの少女を、輪姦するつもりなのだろう。彼女には可哀想だが、厄介ごとには首を突っ込まないのが賢明な判断だ。すぐに離れて、僕らの用事を済ませようと、戦に伝えようとしたが――遅かった。
 刀を抜き、少年たちに向かってかけていく牙城戦。
 ぶしゅ! 戦の一閃が、少年たちの一人の首を切り落とし、噴出した血がシャワーのように彼女に降りかかる。続いて、他の一人を背から斬る。
「ぎゃ~」
「な、何だ?!」
 驚愕しながらも、少年たちは突然来襲し、二人の仲間に危害を加えた存在――戦への攻撃を開始した。
 一人がナイフを取り出し、戦へと振り下ろす。が、その刃が身をえぐる前に間一髪で、彼女はナイフを回避。彼のナイフを握る手を手首から切断。悲鳴を上げる彼の腹に蹴りを叩き込んで、体勢を崩した隙に肩から胴にかけて一刀両断に斬り捨てる。
 続いて襲い掛かる一人の腹を、姿勢を低くした戦の刀が一閃。彼は内臓を盛大にまき散らしながら、転倒した。
 更に襲い掛かる一人を、頭から斬殺。
「ひ、ひ~」
 残る一人は、逃げようとした。しかし戦は刀を投げ捨てると、猛スピードで彼の頭を掴み、引き寄せ、壁へと激突させる。何度も何度も。彼の顔が血で濡れながら変形するまで。そして彼の両の瞳に、左手の人差指と中指を突き刺し、抜いた。彼は倒れ、動かなくなった。戦はその頭に垂直から両足を落下させ、圧殺。
 わずか数秒の内に、牙城戦は六人を虐殺した。
 地面には血の水だまりが出来ていた。
 戦は刀を拾って鞘に戻すと、「もう大丈夫よ」と言って、血まみれの顔を少女に向けて、微笑んだ。
 少女は、目の前の急変した事態に、唖然としているようだった。
 意外にも、戦は正義感が強い。弱いものを集団で傷つけようとするものを見ると、問答無用に殺してしまう。
 しかしたいていの場合、彼女に救われた人は、感謝するどころか――。
「きゃああああ! 人殺しいいいいいい!」
 少女は絶叫し、走り去っていった。
 戦は、ぽつんと残された。
 僕は彼女の傍に歩み寄り、ぽん、と肩に手を置いた。
「行こう。戦」
「どうして……!」
 彼女は、肩を震わせていた。
「助けてやったってのに、あんな言いぐさをするのよ!」
「仕方ないよ、戦。あれが目の前で人を殺された、普通の人の反応なんだ」
「クズを殺しても、そうじゃない奴を殺しても駄目だっていうなら、私は誰を殺せばいいって言うのよ!」
「人を殺すことは、いけないことなんだよ。戦」
「何でよ!」
 戦は、僕の肩を掴んだ。
「皆、自分の好きなことを勝手にやっているって言うのに、どうして私にはそれが許されないわけ!」
 牙城戦は、人殺しが好きだ。
 残虐な殺人が、大好きだ。
 だけど、この世界に住む大半の人たちは、そんな彼女を「殺人鬼」と呼んで、恐れ、忌み嫌っている。
 なぜなら、それはきっと。
「戦。今殺したこの六人の事も、家族とか、大切に思っている人たちがいるかもしれないんだ。今日、君が殺したほかの人たちだって」
 このことを彼女に伝えるのは、きっと、僕の役割なのだろう。
「例えば、もしも誰かが戦を殺せば、僕はその人間を、絶対に殺したいと思う。
 僕は君が好きで、自分の命よりも大切だと思っているから。だから、ほかの人たちにも、大切な人が殺される悲しみを、味わって欲しくないんだ。
 お願いだから、人を殺さないでくれ」
 戦は黙って、僕を睨みつける。
 僕はほぼ毎日のように、こんな嘆願を繰り返している。
 この言葉が、いつか彼女の心を縛る枷となってくれることを祈って。彼女がいつか、人を殺さなくなることを、祈って。
 戦はふんっと、鼻を鳴らして、吐き捨てた。
「いつも、がちゃがちゃ五月蠅いわね。私の勝手でしょ」
 いつもと変わらない彼女の反応に、僕は苦笑した。
 でも少なくとも彼女は、こんなことを言う僕を殺しはしない。
 それは、僕の言葉が、幾分かは届いているからだ……と、僕は信じたい。これからも、根気よく言い続けるのみだ。今日は、ここまででいい。
 今日の、本来の予定に戻ろう。僕は彼女の手を握って、言った。
「僕たちが今日やろうとしていたことを、やろうか」
 戦はちょっと顔を赤らめてから、頷いた。
 僕は彼女の手を引いて、「hotel sun」に入り、一室を借りた。部屋に入って、ドアのカギを閉めた後に僕が真っ先にしたことは、戦の唇を、僕の唇で塞ぐことだった。舌が絡み合い、唾液が混じり合う。
 そのまま僕は、戦をベッドへと押し倒し、その制服に手をかけて、脱がそうとする……が、彼女に止められた。
「止めてよ。――自分で、出来るから」
 キスを中断して、彼女は僕の耳元でささやいた。僕は頷いて、彼女から離れた。
 彼女はベッドの上で上半身を起こし、制服をブラジャーを、パンツを脱いで、全裸となった。美しい姿だった。
 僕も急いで、服を脱ぎ、再び彼女を押し倒す。
「……優しくしないと、殺すからね」
 彼女はまた、僕の耳元に囁いた。
 僕は、それには答えず、むさぼるように、彼女の体に覆いかぶさる。
「愛しているよ。戦」
 彼女の耳元で、今度は僕が、囁いた。

 数時間後。
「今日はありがとう」
 二見のバス停で別れる時、僕は戦に言った。
 彼女はもじもじと、何かを言いたそうにしていた。
「え? 何? 戦」
 僕は彼女をぎゅっと抱きしめて、耳元で聞いた。
「ま、また、やりたくなったら……、いつでも言ってくれて、いいんだからね!」
 耳元まで真っ赤にしながら、彼女は囁いた。
「うん。そうするよ」
 僕は、彼女の頭を撫でると、
「じゃね。また明日」
 手を振って、彼女から離れた。
「さよなら」
 と、彼女も言った。
 家に帰った僕は、まず真っ先に、仏壇の前に座り、合掌した。
 そこには、僕の両親と、妹の写真が、飾ってある。
 三人は、僕がこの家に初めて戦を招いた日に、彼女に殺された。
 両親は、「殺人鬼の女の子と付き合うなんて、私たちは許さない」と、彼女の前で僕に言ったから。
 妹は、「お兄ちゃんと結ばれるのは私よ! 貴方なんかに渡さない!」と叫んで、包丁を手に彼女に襲い掛かったから。
 自分の家族を殺した人間を好きでいる僕も、戦と同じように、世間の人とずれているのかもしれない。
 いつか、僕も彼らと同じように、戦に殺されるのだろうか。卓也の言う通り、今の僕の生活は、いつ殺されるか分からない、綱渡りのように危険なものだ。
 でも例え、僕の人生が彼女に殺されることで終わったとしても、僕は彼女の近くにいたことを後悔しないだろう。
 だって僕は、牙城戦が好きだから。
 僕は立ち上がり、手を洗いに洗面所へ向かった。
 僕と両親と妹が並んで笑っている写真に、背を向けて。
 
 

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