◆全国郷土ずし紹介 11月 宮崎県宮崎市の「レタス巻き」
昭和41年(1966)、宮崎市で一つのドラマが生まれました。歌手・平尾昌晃と寿司職人・村岡正二のドラマです。ふたりは、平尾が九州に来た時にはいつも村岡の自宅に泊めるほどの間柄でした。
平尾が体調を崩したとき、野菜嫌いの平尾に村岡が「おいしく野菜が食べられるすしを作ってやる」と考えたのが野菜の巻きずし。芯にレタスを使うというアイディアはすぐに浮かんだものの、それと相性のいい具材がなかなか見つかりません。試行錯誤の末、たまたまネタケースにあったエビを目にし、さらにマヨネーズも加えて、有明産の海苔で一緒に巻いてみたところ、これが美味でした。そこで「レタス巻き」として売り出しました。
当時、レタスという生野菜や、ましてやマヨネーズなどすしに合わないと考えられていましたが、その斬新さが若者を中心に幅広い層に支持され、口コミで日本中に広がって、今日の「サラダ巻き」ができたのです。昭和40〜50年にかけては、すしはスーパーマーケットにも進出をし始めたところ。まさに新しいすしの時代がやってきたわけです。
さて、そのレタスですが、冬レタスは11月から3月までのもの。温暖な宮崎は最高の土地です。パリッとした食感は忘れなくなるでしょう。レタス巻きは、今やこの地の郷土の味となりました。