見出し画像

すしとあの人・151 「フランキー堺」

日本を代表するコメディ俳優として有名ですが、若いころは進駐軍を相手にジャズバンドで稼いでいたといいます。「フランキー」という名前はこのころから使っていたんですね。のちにフランキー堺とシティスリッカーズというコミックバンドなるものを立ち上げました。やがて解散することになるのですが、そのメンバーが引き継いでできたのがハナ肇とクレージーキャッツです。
 
俳優業に転身したきっかけは伴淳三郎との出会い。以来、コメディの役者へと突き進みます。バンジュン(伴)や森繁久彌と組んで、映画・駅前シリーズを生み出しました。映画には、すし屋はよく登場します。「喜劇・駅前女将」ではバンジュンが下町・両国のすし屋の大将。その妹の旦那が森繁。フランキーはバンジュンの養子、という役どころです。
 
「喜劇・大安旅行」ではバンジュンの演ずる父親の息子役で登場。舞台は南紀で、フランキーは天王寺と新宮を結ぶ列車の車掌です。彼は新宮のすし屋の娘・新珠三千代に惚れておりましたが、いつもその母親の未亡人・笠木シヅ子に邪魔されてしまいます。ところがその新珠に惚れてしまったのがバンジュン。親子そろって、同じ娘に恋をしちゃったわけです。結局、バンジュンは未亡人の笠木と結ばれ、フランキーにも新珠と結婚するチャンスとなりますが、新珠がフランキーにいったのは「私たち、兄妹でしょ」。あ、そうか…。
 
映画俳優ですから、すし屋を演ずることもあります。「女は二度生まれる」では、若尾文子演ずる枕芸者に恋心を抱く、新橋の若きすし職人。「将来は自分の店を持ちたいけれど、場末になるだろうなぁ」なんてことをポツンというと、若尾芸者の彼を見る目が変わってくるのでした。
 
フランキーのヒット作のひとつに、「わたしは貝になりたい」というのがあります。タイトルを見て、こいつはアカガイやトリガイを扱う魚屋かすし屋のコメディか、と、私は思いこんでおりました。でも、映画を見て、前言撤回!
彼は喜劇役者ではなく、シリアス俳優でもあったのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?