日比野日誌(エスパルスドリームプラザ)

複合商業施設「エスパルスドリームプラザ」が運営する「清水すしミュージアム」の公式not…

日比野日誌(エスパルスドリームプラザ)

複合商業施設「エスパルスドリームプラザ」が運営する「清水すしミュージアム」の公式noteです。1999年に日本唯一のすしの博物館として誕生。名誉館長・日比野光敏による「すし」の調査研究を発信しています。 公式サイトは https://www.dream-plaza.co.jp/

記事一覧

すしとあの人・158 「龍造寺隆信」

今週と来週は、歴史学の世界では結論がまだ出ていないことを取り扱いましょう。まずこの人、龍造寺隆信。歴史好きな人はご存じでしょう。 九州は肥前の戦国時代の人。小さ…

◆全国郷土ずし紹介 5月  高知県山間地方の「タケノコずし」

高知県の、海から距離がある地方では「田舎ずし」といって、山菜や野菜類のすしが作られます。これはこのコーナー・第9号にも載っています。その中でも今日は、とくにタケ…

すしとあの人・157 「政井みね」

最初にいっておきますが、ここで記すすしの話と政井みねは、直接、関係はありません。でも、ここで記したような、多分、うれしくもあり、実は悲しい「すし」の話の象徴が、…

4月 北海道沿岸部の「カスベのすし」

カスベ。東北や北海道地方以外の人には、魚の名だとわからないでしょう。カスベとは、前回このコーナーで出しました、韓国の「ホンオ」、つまりガンギエイのことです。ただ…

すしとあの人・156 「大島渚」

前回に引き続きまして、映画監督です。ただしこちらは現代、といっても昭和30年代半ばから活躍した、大島渚です。 それまでの監督、たとえば戦前の小津安二郎が、学暦は中…

◆全国郷土ずし紹介 3月  韓国全羅南道の「ホンオフェ」

これは実はおすしじゃありません。でも発酵ずしなどなじみがない韓国で「発酵させた、独特な香りのする魚」といえば、まず出されるのがこれ。「ホンオフェ」といいます。「…

すしとあの人・155 「小津安二郎」

小津安二郎といえば、日本の映画界の名監督です。彼はすしが好きだったようで、召集令状によって中国戦戦に出向いた昭和14年(1939)2月23日の日記には、「食ひたいもの」…

◆全国郷土ずし紹介 2月  高知県の「巻きずし」

2月といえば節分。で、節分といえば、今や巻きずしがなくてはならないものになりました。そこで、それにちなんで、全国のめずらしい巻きずしを探してみました。まぁ、「巻…

すしとあの人・154 「田中絹代」

黎明期から日本映画界を支えた、大正末期から活躍した大スター。日本映画史を代表する大女優の一人として語られます。大正14年(1925)、すでに15歳で主役を張り、昭和6年…

◆全国郷土ずし紹介 1月  石川県能登地方の「卯の花ずし」

石川県の、そうですねぇ能登地方とでもいいましょうか。たとえば輪島市あたりでは、ごく普通の惣菜として、スーパーマーケットでごく普通に売っています。さすが、石川県を…

すしとあの人・153 「古谷三敏」

「ダメおやじ」。知っていますか、この凄まじい漫画。チビでハゲで、しかもひ弱な、文字どおりのダメな親父。それに引きかえ、その奥さんが強くて、そのイジメのすごいこと…

◆全国郷土ずし紹介 12月  兵庫県香美町の「アユずし」

兵庫県美方郡加美町の香住区。香住の冬の味覚といえば誰もがうなずく松葉ガニでしょう。カニ好きな人はたまりませんね。でも、同じ香美でも山沿いの方を見てみましょう。香…

すしとあの人・152 「前畑秀子」

戦前の水泳選手、と書くと安っぽくなりますが、「前畑ガンバレ」の前畑といえばわかる人も多いでしょう。 昭和7年(1932)、18歳で初出場したロサンゼルスオリンピックの女…

◆全国郷土ずし紹介 11月 青森県の「サケのすし」

われわれがふつうに「サケ」と呼んでいるのは、正式にはシロザケといいます。ベニザケやギンザケ、キングサーモンやアトランティックサーモンとは別種でして、身の色はその…

すしとあの人・151 「フランキー堺」

日本を代表するコメディ俳優として有名ですが、若いころは進駐軍を相手にジャズバンドで稼いでいたといいます。「フランキー」という名前はこのころから使っていたんですね…

◆全国郷土ずし紹介 10月 福岡県直方市の「こうぞうの葉ずし」

直方市は、遠賀川をはさんで西側は市の中心部。昔から鉄工の街で、多くの鉄工所がありました。逆側となると「田舎」。そこが「頓野(とんの)」であり、農村地帯です。今は…

すしとあの人・158 「龍造寺隆信」

すしとあの人・158 「龍造寺隆信」

今週と来週は、歴史学の世界では結論がまだ出ていないことを取り扱いましょう。まずこの人、龍造寺隆信。歴史好きな人はご存じでしょう。
九州は肥前の戦国時代の人。小さい時に出家していましたが、天文15年(1546)、還俗します。以後の活躍はいうまでもなく、やがては肥前全国を統一する武将になったのです。天正8年(1580)、佐賀城を引いて今の須古城に隠居しますが、政治や軍事の実権は握り続けました。

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◆全国郷土ずし紹介 5月  高知県山間地方の「タケノコずし」

◆全国郷土ずし紹介 5月  高知県山間地方の「タケノコずし」

高知県の、海から距離がある地方では「田舎ずし」といって、山菜や野菜類のすしが作られます。これはこのコーナー・第9号にも載っています。その中でも今日は、とくにタケノコずしを紹介しましょう。春になるとニョキニョキ出てくるタケノコ。これを具にしたタケノコのちらしずしは全国どこにでもあるでしょうが、これを「鋳込み」のようにしたり姿ずしの具にしたりするのは、あまり例がないのではないでしょうか?
 写真の、丸

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すしとあの人・157 「政井みね」

すしとあの人・157 「政井みね」

最初にいっておきますが、ここで記すすしの話と政井みねは、直接、関係はありません。でも、ここで記したような、多分、うれしくもあり、実は悲しい「すし」の話の象徴が、政井みねであるのです。
「政井みね」って、いったい誰でしょうか?
ノンフィクション作家・山本茂実が著した「あゝ野麦峠」に出てくる、最後の画面で「あぁ、飛騨が見える」とつぶやきつつ最期を迎えた、あの若い娘です。

明治の日本は富国強兵策の一

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4月 北海道沿岸部の「カスベのすし」

4月 北海道沿岸部の「カスベのすし」

カスベ。東北や北海道地方以外の人には、魚の名だとわからないでしょう。カスベとは、前回このコーナーで出しました、韓国の「ホンオ」、つまりガンギエイのことです。ただ「ガンギエイ」といってもいろいろあって、正確にいうと、ガンギエイ目の総称を指します。名前の由来は、一説にはアイヌ語がもとになったともいわれますが、一般には「カスにしかならない」から「カス」「カスッペ」と呼んだから、と伝えられています。やはり

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すしとあの人・156 「大島渚」

すしとあの人・156 「大島渚」

前回に引き続きまして、映画監督です。ただしこちらは現代、といっても昭和30年代半ばから活躍した、大島渚です。
それまでの監督、たとえば戦前の小津安二郎が、学暦は中学卒であり、それでも人々の感動をさらっていったのですが、昭和も40年代に入ると、映画監督といえども歴とした大学卒。制作映画も「それなりのもの」をレベルキープしていなければなりませんでした。
大島渚も京都大学出身です。作る映画は政治に関する

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◆全国郷土ずし紹介 3月  韓国全羅南道の「ホンオフェ」

◆全国郷土ずし紹介 3月  韓国全羅南道の「ホンオフェ」

これは実はおすしじゃありません。でも発酵ずしなどなじみがない韓国で「発酵させた、独特な香りのする魚」といえば、まず出されるのがこれ。「ホンオフェ」といいます。「フェ」は膾で、「ホンオ」はガンギエイ。ですからエイのお造り料理のことですね。しかしこれ、世界で2番目に臭い食べ物だといわれています。ちなみに1番目はスウェーデンのニシンの塩漬け「シュールストレミング」だそうですよ。
 だいたいホンオに限らず

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すしとあの人・155 「小津安二郎」

すしとあの人・155 「小津安二郎」

小津安二郎といえば、日本の映画界の名監督です。彼はすしが好きだったようで、召集令状によって中国戦戦に出向いた昭和14年(1939)2月23日の日記には、「食ひたいもの」として「かきフライ。天ぷら。蒲焼。すし。鯉茶…」とあります。激しい戦禍に見舞われた時にあっても食欲が旺盛なのは、逆にいえば、それだけ飢えていたのでしょう。



しかし小津映画には、すしはそれほど出てきません。すし屋となると、一作

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◆全国郷土ずし紹介 2月  高知県の「巻きずし」

◆全国郷土ずし紹介 2月  高知県の「巻きずし」

2月といえば節分。で、節分といえば、今や巻きずしがなくてはならないものになりました。そこで、それにちなんで、全国のめずらしい巻きずしを探してみました。まぁ、「巻きずしなんて、何を巻くか、何で巻くかの違いでしょ?」と思っておりましたら、そうでもないところを発見しました。それが高知県です。
 まずはすしの盛り合わせの写真をご覧ください。画面、左に3種類の巻きずしが並んでいます。中央のは「普通の」海苔巻

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すしとあの人・154 「田中絹代」

すしとあの人・154 「田中絹代」

黎明期から日本映画界を支えた、大正末期から活躍した大スター。日本映画史を代表する大女優の一人として語られます。大正14年(1925)、すでに15歳で主役を張り、昭和6年(1931)には日本初のトーキー映画(セリフや擬音、音響すべてが入っている映画)「マダムと女房」で、甘ったるい声を披露しました。これで、全国の銀幕ファンの憧れの的となったのです。

昭和8年(1933)、川端康成原作の「恋の花咲く

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◆全国郷土ずし紹介 1月  石川県能登地方の「卯の花ずし」

◆全国郷土ずし紹介 1月  石川県能登地方の「卯の花ずし」

石川県の、そうですねぇ能登地方とでもいいましょうか。たとえば輪島市あたりでは、ごく普通の惣菜として、スーパーマーケットでごく普通に売っています。さすが、石川県を代表する郷土料理です。でも不思議なことに、いわゆる飲み屋とか小料理屋など酒を提供する店ではあまり見かけません。ですから、郷土料理といっても「家庭料理」に入るのでしょうか。冬の料理です。
 作り方は簡単で、頭と内臓を取り出したマイワシを酢で締

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すしとあの人・153 「古谷三敏」

すしとあの人・153 「古谷三敏」

「ダメおやじ」。知っていますか、この凄まじい漫画。チビでハゲで、しかもひ弱な、文字どおりのダメな親父。それに引きかえ、その奥さんが強くて、そのイジメのすごいこと! 当時、小学生だった私なんかは「そこまでやるか?」といいながらも、その壮絶なイジメっぷりが出てこないと、なんか消化不良に落ち込んでしまうのでした。
ロングヘアーにギター鳴らして新宿でフォークソングを歌ったり、政治批判をしてる連中が内ゲバや

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◆全国郷土ずし紹介 12月  兵庫県香美町の「アユずし」

◆全国郷土ずし紹介 12月  兵庫県香美町の「アユずし」

兵庫県美方郡加美町の香住区。香住の冬の味覚といえば誰もがうなずく松葉ガニでしょう。カニ好きな人はたまりませんね。でも、同じ香美でも山沿いの方を見てみましょう。香美が誇る水産物は松葉ガニだけじゃありません。街のど真ん中を流れる矢田川、それも旧・村岡町で獲れるアユは、釣りに詳しい方ならよくご存じでしょう。ここのアユは、アユ本来の味を持っている逸品だといわれています。今は塩焼きで有名ですが、かつてはアユ

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すしとあの人・152 「前畑秀子」

すしとあの人・152 「前畑秀子」

戦前の水泳選手、と書くと安っぽくなりますが、「前畑ガンバレ」の前畑といえばわかる人も多いでしょう。
昭和7年(1932)、18歳で初出場したロサンゼルスオリンピックの女子200m平泳ぎで銀メダル。続く昭和11年(1936)、ベルリンオリンピックに出場し、200m平泳ぎで金メダルを取りました。当時のオリンピックは国の威信を懸けた戦いの場であり、かなりのプレッシャーの中、泳ぎ切ったことで

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◆全国郷土ずし紹介 11月 青森県の「サケのすし」

◆全国郷土ずし紹介 11月 青森県の「サケのすし」

われわれがふつうに「サケ」と呼んでいるのは、正式にはシロザケといいます。ベニザケやギンザケ、キングサーモンやアトランティックサーモンとは別種でして、身の色はその名のとおり薄めで、淡いオレンジ色。川で生まれて海を回遊して成長し、秋の産卵時期に生まれた川に戻ってきます。そこで水揚げされるシロザケが、別名をアキザケ、アキアジ。卵を蓄えているため、脂は控えめでさっぱりしていますが、身には旨みとコクが詰まっ

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すしとあの人・151 「フランキー堺」

すしとあの人・151 「フランキー堺」

日本を代表するコメディ俳優として有名ですが、若いころは進駐軍を相手にジャズバンドで稼いでいたといいます。「フランキー」という名前はこのころから使っていたんですね。のちにフランキー堺とシティスリッカーズというコミックバンドなるものを立ち上げました。やがて解散することになるのですが、そのメンバーが引き継いでできたのがハナ肇とクレージーキャッツです。

俳優業に転身したきっかけは伴淳三郎との出会い。以

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◆全国郷土ずし紹介 10月 福岡県直方市の「こうぞうの葉ずし」

◆全国郷土ずし紹介 10月 福岡県直方市の「こうぞうの葉ずし」

直方市は、遠賀川をはさんで西側は市の中心部。昔から鉄工の街で、多くの鉄工所がありました。逆側となると「田舎」。そこが「頓野(とんの)」であり、農村地帯です。今はそうでもありませんが、昔は寂しいところでした。それでも八幡神社の秋祭りともなれば、人の心も動き立ちます。今では柿の葉ずしばかりですが、昔懐かしい食べ物に「こうぞうの葉ずし」がありました。

「こうぞう」とは楮(こうぞ)のこと。和紙の原料です

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