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中銀カプセルタワー_1

近しい人やお仕事をご一緒させていただいた方はご存知かと思いますが
d'oresは今年の5月までカプセルタワーに事務所を構えておりました。

2018年秋
その年が始まってからずっと
『独立』
の単語が頭から離れず何か大きなきっかけがあったわけではなく
きっかけがないけど深層心理ではその流れになっていたのか
その当時のことははっきり覚えてません。

d'oresにはサポートの立ち位置で協力していただいている会社さんがあります。
その会社代表者の方が所有していたのが中銀カプセルタワーのとある一室。

「独立するんだったらこの部屋使っていいよ、家賃○万円でいいから」

その瞬間に決まりました

翌年2019年2月1日 d'ores 立ち上げ

よくよく聞くとカプセルタワーを借りたい人は何十人待ちでだったようで
d'ores事務所はB棟の最も景色の良い日当たりもいい首都高側に
位置してました。
提示された家賃もカプセルタワーの平均賃料と比較しても半額以下
そんな部屋なんか賃貸に出たらどんだけの倍率になったか
どんだけの跳躍力で飛び越えてそこに収まったことか

運ですね
持ってますね


これはA棟、B棟は青いビニールシートでした


周知の通りアスベストが大問題になった建築物でもあり
カプセルは全144戸(だったかな?)の内半分以上は廃墟化しているか
リノベしないと使えない状態になってしまっているかで長年放置されてしまった生きる廃墟と化していました。

アスベスト除去費は非常に高額で狭いカプセル一部屋全て除去するだけでも
数百万はかかりますから二の足を踏んで悩んでいるうちに劣化が進み
放置されてしまうというのが多かったようです。

ベニヤで厳重に封をされている部屋も多く
扉が半壊して中が覗ける部屋もあり、例の危険物質も容易に視認化できる
慣れてしまっていたので何とも思っていませんでしたが
常識でいうとアウトですよね。

私の部屋も天井裏を無理やり見ると完全養生はされていましたが
養生越しには見えてましたね。

とはいえカプセルタワーについての魅力は散々ネット上で見れますので
ここでつらつらと書くことはしません。

計2年半拠点にしていた場所で
独立した場所でもあるので他の方とは違う意味で愛着と思い入れがあります。
4×2.5mの居室内はお世辞にも快適とは言えませんが
不思議と扉を閉めると静けさに包まれて仕事に集中できる環境で
夜になり首都高の明かりがついて走る車のヘッドライトの光を
絶えず見ていると、まるで異世界に訪れたような
銀座という場所ながら別世界の空間でした。

社交はしなかったのでカプセル飲みと言われる住人たちで
カプセルタワーへの想いを語り合ったりする会合にも参加せず
(そもそも誘われていなかった?)
唯一交流があったのが管理人のおじいちゃんと
保存再生活動を取り仕切っていた前田さんぐらいでした。
前田さんとは何故か人に遭遇しないカプセルタワーの中でも
しょっちゅう顔を合わせることが多く
色々お話しをしたこともいい思い出です。

管理人のおじいちゃんは普段釈迦のように固まって無表情でしたが
話しかけるとニコッとしてくれる優しい方で
製作家具の仕上げが居室内で収まりきらず共用部で作業している時
(↑そもそも居住ルール守れって話ですけどね)
「他の人からシンナー臭いってクレーム入ってるよ!
ここじゃなくて下に場所用意したからあっちでやりな!」
と本当は使用NGな場所を使わせてくれたり
助けていただいたこともしばしば。
仕事でいただいたお土産の量が多くてお裾分けした時も
ニコッと笑って受け取ってくれました。


立ち上げてからしばらく経ったある日
いつだったか失念してしまいましたがたまたまB棟のエレベーターで
とある方と乗り合わせて話しかけられることがありました。

普段から話しかけにくいと10人いたら12人にそう言われる私ですが
その声をかけていただいた方は非常にフランクで穏やかな中年男性でした。

「君はいつからここを使っているの?どう?使いやすい?
使いにくいよね笑!!!
君の部屋見せてよ!なんか格好良さそうな部屋として使ってそうだね!
(中略)
こんなに古くなっても愛情を持って使ってくれる人がいたら
亡き父も喜ぶよ!」




ん. . . . . . . . .???




何か引っかかったのでもしかしたら. . . . .?
と思ってお尋ねしたところ


「ご挨拶がまだだったね、黒川と申します」



あの黒川紀章氏のご子息である未来夫氏でした。








続きはまた次回。
カプセルタワーについては続き物で掲載していこうと思いますので
楽しみにしていただける人だけお楽しみに。



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takumi@d-ores.art


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