§1. 度数即読して移動ドで歌って弾く5度
『きらきら星』は、冒頭でドからソに向かって5度上がります。度数即読と移動ドで、どんな調にでも簡単に移調して弾けるのをぜひ体験してください。
なお、ドレミは移動ドで読んでいます。最初の音に対する相対的な音の高さをドレミで感じる歌い方で、例えば『きらきら星』ならどんな調でも「♪ドードーソーソー ラーラーソ〜」と歌います。カラオケのKeyの変更みたいな感覚です。
■音程と度数 数え始める前に
音程という言葉は、漠然と “音の高さ” の意味で使われることがよくありますが、音楽用語としては「ある音を基準とした相対的な音の高さ」のことをいいます。「2つの音の間の、音の高さの差」といってもよいです。
度数を数えるときのポイント
音程を数える単位が度数です。度数は、メジャースケール「ドレミファソラシ」に沿って、スタートの音を「1度」として数えます。また、半音単位ではスタートの音は「ゼロ個」と数えます。
Key=Cのメジャースケールは白鍵だけでわかりやすいので、まずはとりあえず、Key=C上の2つのキー(白鍵から白鍵)の間で数えましょう。
その後、黒鍵も含めていろんな2つのキーの組合せで数えます。半音単位で数えて同じなら度数は同じです。人間の耳には相対的に同じように聞こえます。
度数の数え方はちょっと複雑ですが、このnoteでは、鍵盤上で度数を一つ一つ具体的にしてひと目で読み取っていきます。これを度数即読と名付けます。
5度は即読しやすい度数なのでここから始めます。コードの元となるいろんな度数の第一歩です。
■白鍵スタートの5度
まず、Key=C(ハ長調)で「♪ドソ」
▼右手のひらを鍵盤にのせ、親指をC(ハ長調のド)に置くと、小指に当たるのが5度上のソです。
▼「♪ ドーソー」と弾くと、『きらきら星』の冒頭と同じ音です。半音7個分で、厳密には完全5度といいます。完全というのは、すっごく響きあうというような意味です。
▼「♪ ドーソー ドーソー」と歌いながら弾いて、音を耳に覚えさせます。
ぜひ、実際に鍵盤を弾いて音を確かめて、歌いながら進めてみてくださいね!
次は、Key=D(ニ長調)で移動ドに初挑戦です!
▼親指で白鍵Dを押します。これがKey=Dでの“ド”です。
▼小指のところにある5番目の白鍵をホイっと押します。すると押せたのが、ソになります。
▼新しいドとソを弾きながら、ハミングしたり「♪ドーソー」と歌ってみてください。どうですか?「♪ きーらーきーらー」も歌えますよね。
半音単位ではこれも7個分です。人間の感覚としては、半音単位で数えて同じならば相対的には同じに聞こえます。
それでは、いろんなキーを“ド”にしてやっていきましょう。
■白白の5度の組合せと例外
白白の5度の組合せを順番に弾いていく
▼基準となる“ド”のキーを、白鍵で隣、隣 … つまり E、F、G … と動かしていき、順番に弾きましょう。はい、どーぞ!
全部弾けましたか?なにかヘンな音の組合せはありませんか?
ヘン?な音の組合せ
▼一番最後のBーFだけちょっと変わっています。5度の一種ですが、半音1個分少ない減5度という不安な響きです。これについては、第2集で詳しくやります。
Bからの完全5度は?
▼Bからは、さらに半音上の黒鍵F♯が半音7個分になり、ソになります。白黒の完全5度の組合せが1組みつかりました。
■先に歌ってから鍵盤を弾く
鍵盤に頼らずにソが歌えると、頭でイメージを作ってからキーを押すということにつながっていき、メロディーもコードも演奏しやすくなります。そのためのコツがあります。
先に歌ってから鍵盤を弾く練習
▼新しい“ド”の音を鍵盤で弾いて、その音の同じ高さで何回か歌います。
これで新しいドに頭をリセットするのです。この時、「♪ドミソー 」とか「♪ドレミファソー 」とか歌ったら、よりリセットしやすいかもしれません。
▼そして、おもむろに歌います。ソの音は、自分の感覚でしぼり出してくださいね。
ここで、『きらきら星』を歌ってもいいですね。
カラオケでKeyを変更する感覚です。こうやって新しいソの音を、耳の感覚を使って自分で作り出してから、確かめるみたいに、5度上のキーを弾きます。
こんなことを繰り返して、耳と目の両方からその度数に慣れていきます。目の前の鍵盤の景色と耳の感覚がつながって、コードを弾くのに役立ちます。
■黒鍵スタートの5度
次に、黒鍵スタートでやってみます。
黒黒の組合せ
▼黒鍵C♯のキーに親指をのせて新しい“ド”とします。
▼そして、エイッと小指のところにある黒鍵を弾きます。これがソになります。白鍵のときみたいに指と鍵盤がきれいに対応しませんが、それは気にせず、両端の黒と黒だけ意識すると見つけやすいです。
どうでしょう。ハミングしたり「♪ドーソー」と歌ってみてください。そして目で数えると、半音7個分でちゃんと完全5度になっています。
▼この調子でD♯、F♯ … と、すべての黒鍵で始まる組合せを試していくと、どれも黒黒なことがわかります。ですが、やはり例外がみつかります。
黒白の組合せ
▼最後の組だけ例外的に黒白となります。
ここではA♯でなく、“B♭”と記載しました。F から下に数えて5個目の白鍵であるBの仲間ということを示しています。もしA♯と記した場合は、その完全5度上の音もE♯となります。まぁ、E♯は結局Fと同じですが、ちょっとまわりくどいですよね。B♭ーFと書いた方がスマートです。
音名は、1個の黒鍵につき♯系と♭系の2つがありますが、コードのルート音(一番低い音)には♭系を使う時が多いです。以後は、音名の♭系の表記を多く使っていきます。読み方は、例えばB♭なら「ビーフラット」となります。
■完全5度の組合せ まとめ
数えてみましょう
まとめです。完全5度の色の組合せの個数はそれぞれいくつになりますか。ここまでの話を振り返りつつ、お手元の鍵盤で数えてみてください。
白鍵7個、黒鍵5個、計12個のキーがあるので、ペアは全部で12組あります。
度数を数えるとき、白鍵のEF、BCの前後が例外になりやすいのですが、これは絵的に考えると何となくわかります。そう、黒鍵がないからですね。このことは、次の§2.でもう少し掘り下げたいと思います。
ここまでで、鍵盤上でどんなキーからでも「ドソ」がみえるようになり、『きらきら星』の最初のところが攻略?できましたね。
次は、ラに進みましょう。
■ソからラへ、鍵盤上で探してみましょう。
ソからラは、半音2個分=全音です。これは近いので比較的みつけやすいです。以下のパターンがあります。
全音の白黒の並びのパターン
▼「♪ソーラー」と歌いながらいろんなキーで弾いてみましょう。指使いは自由でいいですよ。両手の人差し指でも楽しいかも。
黒黒や白黒は、全音にしては少し意外な(大げさかもしれませんが)感じがしないでしょうか。このちょっと意外、な感覚をよく味わっておくのがコツです。
■それでは『きらきら星』の冒頭部分を全調でどうぞ!
♪ドーソー や ♪ソーラー が馴染んできたら、『きらきら星』のほんとに冒頭だけですけど12の調で弾けます。どうぞ弾いてみてください。(よけいなお世話かもしれませんが、この時は、ソの音を薬指などに変えちゃっていいですよ。)
「♪ドードー ソーソー ラーラー ソー」と歌いながらがおすすめです。そうすることで、度数が耳と目から染み込んできます。
《練習メニュー》 完全5度
順番に ♪ドーソー や ♪ソードー を弾いていきましょう。どれも片手です。いっしょに歌うのに疲れたら、口をモグモグだけとか頭の中だけでもいいです。頭の中の響きと鍵盤の景色を馴染ませていってください。
弾き方1 「♪ドーソー」などと歌いながら同時にピアノで弾く。
弾き方2 ピアノで最初の音(ドなど)だけを弾き、それを基準に「♪ドーソー」などと歌う。それから、ピアノで弾いて音を確認する。
※詳細は、本文中の ■先に歌ってから鍵盤を弾く 参照
使用する鍵盤の範囲
「まん中のCから 左側2オクターブを左手、右側2オクターブを右手 」を、おおよその目安とします。範囲からはみ出たり低音が濁ると感じたら、途中からでもオクターブ上下に移動してください。
⒈右手 白鍵スタート ♪ドーソー
⒉右手 黒鍵スタート ♪ドーソー
⒊左手で ♪ドーソー と ♪ソードー
完全5度がみえるようなってきたでしょうか。
上記の左手の練習は、まず、前半の「Cからスタート」の6組を攻略しましょう。完全5度の鍵盤の白黒のパターンがほぼ全部入っているので、この6組で12組全部を攻略したのも同然です。
キーを1つ飛ばしに全音ずつ音を下げていくと、鍵盤の景色がどんどん変わって、いろんなパターンに即座に対応する練習になります。
小指が全音で上下するのは、ホールトーンスケールという浮遊感のあるちょっと変わった響きのスケール(音階)で、『鉄腕アトム』や『A列車で行こう』のイントロの音と同じです。全音下の音に着地する時のちょっとしたスリルを楽しんでいただけるとよいのですが … 。
コードを弾くのは左手が多いので、左手の練習は大事です。以降の練習でも、同様にすすめていきます。
■5度の終わりに
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。いかがでしたか。5度と仲良くなれましたか? 目の前の鍵盤の景色と耳の感覚が、結びついてきたでしょうか。
この後、度数を増やしていきます。次の§2.は「完全5度が主に白白・黒黒になる理由」を確認し、『きらきら星』を最後まで12の調で弾きます。これもぜひ試してみてくださいね!
さらにそのあとは、即読できる度数を4度、3度と増やし、度数がたまったら組み合わせてコードを作る、という具合に続きます。あの有名なオバケの歌で度数に慣れたりもします。ぜひご覧ください。コードを弾くのがぐっと楽になりますよ!
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丸暗記しないピアノコード / 第1集
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