見出し画像

アメリカの入学式


 アメリカの入学式

 アメリカに入学する事になった。
 アメリカに入学する事になったのはいいけれど、そういう事に決まったのはいいのだけれど、どうやったらアメリカに入学できるのか、俺、教えてもらってないんだよね。でも決まっているので、アメリカへの入学は完全に決まっているとの事なので俺はしっかり入学しなくちゃな、って思ってる。決定事項だよ、って言われたので。俺は入学をしっかりする。それだけ。オーケー。まかせろ。レッツ入学。そう、それだけ。それだけって、俺、そう思うよ。

 まずは入学方法として考えられる物事を思いつく限り書き出してみようと思う。思うっていうか、思うだけでは駄目だって俺、そう教わってるから思うだけでは終わらない男なんだけれど。そういう男なんだけれど。別に女でもいいかなとも思うんだけれど俺は男なんだよね。何でだろう。何でだろうとは思いつつ、あ、また思っちゃった。すぐ思っちゃう。やん。しかしあれです何だっけ。そうそう。この俺は思うだけでは駄目だと知っているので、教わったので、思う事と同時に行動に移すんだよね。行動するといいらしいよ。そう言ってた。なんかそう言ってたよ。教わったんだよね。いにしえの記憶に刻まれてんだよね。刻むといえば俺は今からアメリカへの入学方法を書き書き書きとノートに刻むという事を行動に移すのだったよね。行動するといいらしい、と、そう言ってた。言ってましたから。教わったから。書く。書き書き書き、と。

【アメリカへの入学方法】
 ・アメリカへ架電する
 ・アメリカへ

 くぅーん。アメリカへ架電するしか思い浮かばず。思い浮かばずでした。しかしこれは、逆に道は開けたと言える。言えちゃうな。言ってみるか実際に。否、言ってみなくてもいい。今はその時ではない。全然ちがう。俺、そう思うよ。じゃあ、いつその時が来るのかって、そんなものは俺の決める事ではないんだよね。流れだから。すべては流れの中なんだから。ではその流れでアメリカちゃんへとちょっくら架電してみましょうと、そう思うんだよね。思ったからには実行ピポパ。

「もしもし」
「わたし、メリー」
「あ? あー。あれですか、斬新な略し方。ア『メリー』カとかそういう事ですか。事でしょ」
「今、ゴミ捨て場にいるの」
「斬新。斬新な話題フリ。斬新パートツーだ。自由。そういう事か。あ! 違うか、ブラックジョークですね、特有の! お得意の! ね。アメリカの特有とされるやつだ。ま、あれだ。世の中アメリカに限らずゴミ捨て場みたいなもんですわなつって、え? いやはやさすがアメリカってわけだワオ、ワオワオつって。ワ……おい、切るなし! おい! 急に寂しさをくれんなし! くれんじゃないし! なーん!」

 んだよ。ちょっと舞いあがっちゃっただけだっつの。切るなし。もっかいかけ直さねばなんじゃんじゃん。んーだよ。電話帳どこ置いたか。俺、電話帳どこ置いたか? 置いた電話帳どこ。あ、あったあった。あ? あれ、あれれ。うわ。電話番号間違えてたかもこれ。『アメリカ』にかけたつもりが『ア・メリーさん』にかけちゃってたかも。隣だったわ。番号。隣番だった。ホンダララッタ。なーん。なんだよいやんなっちゃう。やん。死のうかな。死ぬかっつの。ボンッ。気を取り直して実行ピポパ。

「もしもし」
「もしもし」
「もしもし?」
「もしもし」
「アメリカ?」
「はい、アメリカです」
「ハロー」
「はい、どうもこんにちは」
「アメリカに入学が決定しているのですが、決定だけしていてその後どうしたらよいのか、その謎をお尋ね申します」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね。そしたらね、一応、こちらから入学式を向かわせるか、まぁ又は来てもらうかになるんですけれど、んー、まぁ最近は大体みなさんやっぱり向かわせる事の方が多いんですが、あー、いかがされますか」
「えーじゃあみなさんと同じ方で」
「ほほほ、最近の若い方はやっぱりそうですよね。えぇえぇ、承知いたしました。それではすぐ入学式の手配を……おや? もうすでにそちらへ向かわせるお手続きはお済みのようでございますな」
「え。そうなんですか。すみません、俺の知らない内にちゃんと手配してくれてたのかもしれません。お手数をおかけしました。頭が下がります。下がる思いです」
「いえいえ、ほほほ。では、入学式の到着までもうしばしお待ちいただければと。えぇえぇ、ほほほ」
「オーケー、テンキュ、グッバーイ」
「はい、どうも。失礼いたします」

 なんだよなんだよなんですか。大丈夫だったなんじゃん。安心。安心だよほんと。安心て大事。てか日々、床に安らぎだけがあればいいんだよ。安眠てやつ。安眠。あんみんかと思わせてやすみんだったりして。なんてな。はー安心した。あ? なんだよ着信だ。入電だ。入電かと思いきや人電だったりして。これは違うなまぁいいや。

「もしもし」
「わたし、メリー」
「あ、先程の。すみません、間違えて電話しちゃったみたいで。こわいですよね。安心を害してしまって申し訳ないです」
「今、玄関にいるの」
「え。へー。玄関で電話? 靴紐の結び方がわからなくなったとかですか。サンダルでいいと思いますよ。俺は最近サンダルばっかりです。めちゃ楽なんでておい! 切るなし! 急に寂しさくれんなし! なんなんなーん!」

 ッだよマジで。安心を害すなっつってんのによ。言ったばっかりでしょっつってんのに。あー? なんー? コイツ、はぁ? 入電だよ、また入電。なんなんなんなん。にゅう〜……でん! (ポーズ)

「はいもしもしメリーですか」
「わたし、メリー」
「知ってる」
「今、あなたの後ろにいるの」
「あ?」

 振り返ると、いた。なるほどね。と。俺、そう思いました。

「お前が入学式か」
「わたし、メリー」
「いい名だ。ハッピーな名前。ぴったりんこぴっぴちゃん、そう思うよ」

 目の前の入学式がおもむろにその門を開く。入学式の学の部分。多分その部分だと思われる。その部分が、開く。式典だ。セレモニー。やいヘゲモニーとは誰の言葉だった? まぁいい。別にいい。それよりも。
 俺は深く、正しく、腰を曲げ首を垂れる。それが礼儀ってもんだと知っているから。教わったから。知識。これからも色々と教わる。そのための入学だ。学び。学びに入らせていただく。入学。それが入学。これが入学。俺、そう思うよ。そして実行に移す。
 俺はその身を入学式に入れ込んでいく。
 うッ。学っぽいところ、結構牙っぽい。
 足から入れ込んでみたらうまくいかず股が裂けそうになったので、頭から行ってみたらかなりスムースにうまいこと入学できた。
 地頭がいいから。俺、地頭がいいからさ。こういう時に差が出るよね。

「わたし、メリー。今、あなたと共にあるの」
「あぁ。俺も、そう思うよ。なんか生臭ぇけど」

 ほほほ。またひとつゴミが増えた。はい、ようこそようこそ。ようこそおいで下さいました。ほほほ、ほほほほほ。

#古賀コン
#古賀コン2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?