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映画 『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』

ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火(字幕版) https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07WDRD46C/ref=cm_sw_tw_r_pv_wb_Hpni1xYiPA2tu… 遅い昼飯のついでに見終わる。もっと集中して観たかった。アマプラの非ハリウッド映画には掘り出し物が多いかも。「彼は戦車の神を信じている」。

ロシアの土俗的神秘感情のような、基督教化以前の宗教感情の名残のようなものが戦争という人間の原初的経験において復活する話。その意味でヒトラーのモノローグで終わる意外な展開には必然性があるのかもしれない。戦争を生命そのものとして賛美する古代異教的「信仰」。「ヨーロッパの夢」とは何か。

リアリズムに徹したファンタジーと見ることもできる。ロシア映画(2012年)がどのような仕組みで作られているのか知りませんが、ハリウッド映画であればCGですますようなところも実写で映像化しているように思われる。ハリウッド製娯楽映画では許されないと思われる観念的戦争映画。

音楽としてワーグナー『タンホイザー序曲』のバリエーションが使われていたことも対ナチス・ドイツの戦争が題材であったからだけではなく「異教的なるものの”誘惑”に身を委ねた男たち」の話であったとすれば納得できる。

「私は共産党員だが戦争で神も悪魔も信じるようになった」というソビエト軍高官のセリフにリアリティを感じた。十代の工科兵として渡った中国大陸で九死に一生を得たことで「運命論者」になった木原孝一のことなど。

カンヌ(?)映画祭では歓迎されなかったらしい。ハリウッド映画的な単純なナチス=悪者映画ではなく、戦争や「ヨーロッパ文明」そのものを対象化する意思を感じさせる映画だったからだろう。やはりロシアはおもしろい。

”幽霊戦車”の隠喩がヒトラーの独白で明らかになる。主人公の不死身の意味も明らかになる。ホワイト・タイガーの”エミッション・ガス”が遠くに見える意味も明らかになる。ロシア人による苦い戦争論でもあるが、われわれは不死身の主人公への強い共感を抱いて観終わることになる。

形而上学的戦争は終結することがない。世の終わりまで。

ハリウッド映画的に感情を揺さぶる映画よりも、あとあとまで意味を考えさせる映画の方が「上」であるとぼくは思う。この映画は知られざる傑作だ(と言うことになる)。

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