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アリスの落ちたウサギ穴を掘ったのはだあれ?



◆落とし穴になりたい

仕事において、「落とし穴みたいな存在」になりたいと思っている。
でも、落とし穴って何?
実際のところ、自分でもよくわかっていない。
けれども、「やる気があります」「どんどん発言します」「行動力があります」「みんなを引っ張っていく存在です」みたいなところの真逆の立ち位置でいたい。
ちょっと疲れたときに傍らで仕事をしていても邪魔にならない人、困っているときにそっと手を差し伸べられる人、考えごとをするときの話し相手。
…こう書いていると、産業医みたいだなあと思えてきた。
会社にとってすごく役に立つ存在じゃないかもしれないけれど、こういう人がひとりやふたり、いたっていいじゃないかしら。
それでもわたしがなりたいのは「落とし穴」という「場」であって、カウンセラーではない。

野中柊さんの小説「恋と恋のあいだ」の登場人物、早季子さんに昔から憧れを抱いている。
カメラマンをしている早季子の部屋に大学生の悠が遊びにくる。
そのときの悠の気持ちとしてこんな文章が描かれている。

悠は、ここにいると、自分も植物になったような気がする。
もとはといえば、フォトグラファーという職業や、早季子の佇まいに興味をそそられて、彼女に近づいたのだったけれど、いつしか、光を求めて、ただただ伸びやかに存在する植物みたいになりたいとき、悠はこの部屋を訪れるようになった。そして、窓際の日向にぺたり坐って、壁にもたれかかり、本を読んだり、うとうとしたり。
早季子はカウチに横になって、雑誌のページを捲っている。悠がいることなど、これっぽちも意に介さないようすで。
こうやって、何時間過ごしても平気なのだ。

野中柊「恋と恋のあいだ」

そういう傍にいて邪魔にならない、ゆるしている人に憧れがある。
いてもいいけど、必要以上に絡まない、放っておく。
「素っ気ない」という言葉はあまり良い意味ではないけれど、その素っ気なさをもちたいと思う。


♧お金があればやりたいこと

自問自答ファッションで、「お金と才能があったら何がしたいですか?」という問いがある。
わたしがそれに答えるならば、「箱みたいな建物のオーナーになりたい」
その建物はただの箱(入れ物)なので、ご飯作りが得意な人がいれば、カフェやレストランになるし、音楽家がいれば、コンサートホールになる。
芸術家がいれば、ギャラリーになるのだろう。
そういう変幻自在な建物を持ちたい。
イメージ的にはレンタルスペースに近いのだろうか。
自分がその場で何かをしたいというわけではなく、場所の提供をしたい。
そしてその中身にあったレイアウトをウキウキと考えたい。

美術館の、展示内容によって内装を変えるやり方がとても好きなのです。
いつでも同じではなく、その都度その都度で景色を変える。

そして何もないときは、有料の休憩所にしたい。
普段、どこかで休憩しようとすると、カフェになりがちだと思う。
だけどお茶や食べ物を胃に入れたくなく、ただ座りたいだけ、というときもある。
そういうとき、困るなあと思うのだ。
待ち合わせの時間つぶし、買い物のすき間の一休み、本を読む場所、おしゃべりをする場所、考えごとをする場所。
日常のすき間にするりと入り込める、そういう場所があったらなあと思っている。路地裏のような。裏庭のような。
飲食の持ち込みもオッケー。ただ、おしゃべりする人もいるし、ご飯を食べる人もいるし、考え事をしている人もいるから、お互い了承してね、というルールは必要だけど。

要するに、身をひそめる場所、隠れる場所を求めているらしい。
冒頭の落とし穴的存在もそういうところから来ている気がする。
ただ存在していられる場所。

わたしは多分、程度の差はあれ、HSPが入っているような気がしていて、
強い光や音、匂いが苦手だ。
だから買い物も苦手。わたしがオンラインショップで物を買ってしまうのは、そういうところもあると思う。
照明が嫌で入れない店がある。
スーパーも本当はあんまり行きたくない。

あきやさんが自問自答ガールズのことを「孤高のモグラ」と称したけれど、言い得て妙だった。太陽がまぶしすぎて、土の中にいがち。
そしてわたしの穴は誰ともぶつかりあうことはないのだろう。
ただただ好き勝手進んでいくだけ。


♠落ちた先のワンダーランド

一昨年だったか去年だったかで行った美術展で、サンタクロースの絵本の原画を見ながら「あきやさん…わたしサンタクロースになりたいです…」と思わずこぼしてしまった。
わたしにとって、スポットライトが当たる機会は一年に一回でいいらしい。
その一回のために一年かけて準備をする。
隠れたい心と表舞台に立ちたい心は共存していた。
一発でっかい花火を打ち上げようぜ!というやつである。
長期的なプランは途中で飽きてしまうし、一回でスッパリと終わらせて、また違うところへ転々としていきたい。
長編ではなく短編をぽんぽん書いていきたいタイプ。

たまにそうやって表に出て、外をうろついたら、誰かに見つけてもらえることもあるだろう。
そのとき、アリスにとってのワンダーランドが広がっていたように、コンセプトワールド(?)が広がっていたらいいなと思う。
(不思議の国のアリスで、アリスが穴に落ちているときに食器棚やら本棚とかがある描写、自問自答中みたいな感じがしてきたので面白い)

♡あたしは女王

笹川美和さんの「女王」という曲が素晴らしすぎて、この度めでたくわたしの自問自答ソングとなった。

それでも あたし
考え、悩み、選んできたから

何を恥じろと言うの、あたしよ?
何ひとつ無駄なものなどないの
全部あたしが決めてきた
それが今のあたし

笹川美和「女王」

どうやっても好奇心旺盛で冒険へ繰り出すアリス側ではなく、マイワールドを構築するハートの女王側の人間だった。


…と、ここまで「不思議の国のアリス」を下敷きに書いてきたけれど、わたしはアリスの物語は「こわい」と思ってしまう。モチーフは可愛いと思うけれど。

ハートの女王がいる世界にとって、異質な存在なアリス。
その異質なことをひどく気にしてしまう。

同じく異世界へ旅立つ「オズの魔法使い」は大好きだから、何が違うんだろう?と考えたところ、仲間がいるかどうかが問題なのかもしれなかった。
異質な存在であっても、仲間がいれば、その世界との接点が出来る。
だからわたしは世界と接点を持つために服を、鞄を、靴を。
選んでもいいのかなと思った。

そしてそれらは、全部わたしが決めるのだ。











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