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ヴィクトリアマイルの戦評 ~人馬が奏でる競馬は複雑、だからこそ魅力的~

ヴィクトリアマイルを見て、競馬はそれぞれが個別の意思を持った多くの人と馬が一体になって、さほど広くない馬場を団子状態で一緒にゴールに向けて、一等賞を目標に走るため、変数が非常に多い競走だと痛感しました。特に、言葉が通じないものの、確りした自我を持つ馬を御しながら走るので、想定通りに進まないことも多々あると改めて認識しました。

1着 テンハッピーローズ (6歳牝)
昨日も投稿しましたが、レース前は低評価でした。レースを改めて見直すと、比較的良いスタートから後方に下げて、馬場の外目で他馬からのストレスを全く感じないポジションをとり、コーナーも上手く回り、4コーナー杉では大外に良い進路を確保できています。津村騎手は慌てず、残り400mで1回ムチを入れてやる気スイッチをオンにし、同300mで促すと1頭だけ違う勢いで猛進します。先に抜け出していたフィアスプライドを目標に定め、加速が緩まないように馬体を寄せました。一昨日は抜群に体調も、気持ちも良かったのでしょう。ストレスが一切なく1600mを走り切った感じです。

2着 フィアスプライド(6歳牝)
彼女が最もスムーズなレース運びをしました。ルメール騎手を背にゲートからうまく飛び出すと、そのまま好位に位置取りします。4コーナーを回ると、目の前に誰もいないルートが開かれていて、あとはそのルートを走らせればよいという状況を作り出せていました。ゴール直前でテンハッピーローズの急襲に遭い敗れましたが、ルメール騎手の完璧な騎乗に導かれた2着だった印象です。

3着 マスクトディーヴァ(4歳牝)
モレイラ騎手渾身の騎乗でしたが、一昨日最も運のなかったのは彼女でした。スタートもよく、そこから中団の内側に滑り込み、素晴らしいポジションをとりました。4コーナーを回った時には、内と外に分かれていますが、トップとの距離はテンハッピーローズと同じような位置でした。そこから馬群をさばこうとするも、目の前に壁ができてしまいます。残り300mでテンハッピーローズが加速するのに対し、彼女はブレーキをかけました。その後もう一度進路を取り直し鋭く伸びますが、結局は3着まででした。心底悔しい結果だったと思います。

8着 ナミュール(5歳牝)
スタートでは最も出遅れてしまい、最後方になりました。それでも未だチャンスはあったと思います。4コーナーを回った時点では、テンハッピーローズやマスクトディーヴァとさほど差のない位置にいましたが、そこから伸びず、見せ場なく8着に敗れました。
本格化した昨秋からの半年間で香港とドバイへの遠征を含む4回激走した疲れがたまっており、走る意欲を失っていたり、集中力が欠如したりしていたのかもしれません。テレビでは解説者がパドックや返し馬で、これまでに見せたことないような落ち着きを示していると表現していましたが、一昨日は走ることに後ろ向きだったのかもしれません。

◆ そのほか
一昨日は、競馬は馬の心身の状態、他馬との関係、運や不運など、単純な走力以外の多くの要素が絡み合って結果が変わると改めて認識しました。本当に競馬は複雑です。その分、とても面白いし魅力的です。

◆ 余談
テンハッピーローズのファンサービスが秀逸と評判になっています。ウイニングランでスタンド前に戻ってきたとき、「私すごいでしょ!私を見て~~」とばかりに観客席に近づき、顔を客席に向けたまま、超ゆっくりと横走りして、写真に納まりやすいようにしました。

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