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名馬紹介 オジュウチョウサン

【名馬紹介 オジュウチョウサン】
オジュウチョウサン(2011年生 牡)の生涯戦績は、障害が32戦18勝、平地は8戦2勝、合計40戦20勝です。障害G1の9勝を含む重賞15勝は、前人未到の大記録です。
近い将来に史上2頭目となる障害界からの顕彰馬に選ばれるであろう、現役時代から既に伝説だった彼のことを紹介します。

1.デビューから3歳時
彼は2歳の10月にデビューし、平地で2戦するも、いずれも大敗を喫しました。それから一年近く休養をとり、3歳の11月に障害に転向しました。しかし、初戦はブービー馬からも大きく離されたダントツのビリでした。

2.4歳時
結論から言うと9戦3勝です。暮れには中山大障害に初参戦するなど、障害競走への適応力を一定程度見せましたが、未だこの時点ではその後の大活躍を予感させるほどではありませんでした。実際、初めての中山大障害では、勝ったアップトゥデイトから4.3秒遅れた6着でした。

3.覚醒
彼は5歳になって突然覚醒しました。初戦こそ2着と取りこぼすも、次戦の中山GJでG1初制覇すると、2年間4つのG1を含む破竹の重賞9連勝。レコード勝ち、大差勝ちもあり、史上最強と言われ始めました。
覚醒のきっかけの一つとして、マスク(メンコ)の耳部分を外したことで、集中力が増したことがあげられています。
後述しますが、2度の平地競走挑戦を挟んで、障害重賞競走の連勝はさらに4つ(うち2つはG1)加えて、13まで伸ばしました。

4.平地競走への再挑戦
7歳の秋に5年ぶりに平地競走に再挑戦しました。1勝クラスと2勝クラスの特別レースを連勝すると、ファン投票で選ばれて有馬記念に出走。武豊騎手を背に16頭中9着と健闘しました。
8歳秋にも平地競走に再挑戦。無尽蔵のスタミナを武器に長距離重賞2つを含む3レースに参戦するも、最高6着と掲示板に載れませんでした。
因みに、8歳春には、平地競走挑戦の合間を縫って障害重賞を2戦走っており、中山GJを制しています。

5.最終章
これらの結果を受け、9歳に障害に本格復帰。前年同様、春は中山GJを含む2戦2勝(ここまでで障害重賞13連勝)しました。しかし、9歳秋、10歳春と故障もあって 1戦ずつだけの出走、且つ3着と5着と、障害戦では4年半ぶりに負けました。さすがに絶対王者も衰えたかと言われましたが、10歳秋の中山大障害で感動の復活勝利を上げると、翌春の中山GJも勝利しました。もう驚きを超えて、涙腺崩壊レベルの感動ストーリーです。
しかし、楽しい旅にも必ず終わりがあります。11歳の秋初戦に9着と大敗すると、暮れの中山大障害を最後に引退することが発表されました。ラストランは6着でしたが、温かい拍手が競馬場を包みました。

6.オジュウチョウサンの強さの源
(1)飛越技術
彼は飛越があまり上手くないと言われることがあります。しかし、体幹バランスや柔軟性が飛び抜けて高く、飛越後に体制を崩しても直ぐに立て直し加速できます。そのため、飛越前後のスピードが他馬より速いので、私は総合的にみれば彼の飛越技術は高いと思っています。
(2)ランニングフォーム
全盛期のフォームは、障害馬ではあり得ないほど低い姿勢で、美しく走ります。当然に飛越も周囲を心配させるほど、ギリギリの高さで飛び越えます。しかも、9歳の秋に障害に脚をぶつけて骨折してからは、少し高く飛ぶフォームに変えたように見えます。後述しますが、とても賢いです。
(3)馬場不問の対応力
良馬馬のスピード決着も、不良馬場での体力勝負も、どちらにも対応します。2017年の中山大障害での驚愕のレコード決着(4100m、4分36.1秒)も、2020年の泥んこ馬場での中山GJでの史上最遅決着(4250m、5分2.9秒)のいずれも制しています。
(4)スタミナ
彼の身体面での最大の武器は無尽蔵なスタミナに基づく、平地でのスピード能力です。彼は道中好位につけて、4コーナーあたりで先頭に並びかけて、最後の直線で突き放すという展開を得意にしていました。彼のベストレースだと思う2017年の中山大障害は、その真骨頂です。
(5)競馬IQの高さ
そして、彼の最大の武器は賢さ、競馬IQの高さだと思います。上述のように歳を重ねたこともあって骨折を機に飛越フォームを変えたり、障害前で歩幅が合わないと判断すると障害に脚をかけて越えていったりという逸話があります。彼は身体だけではなく心も柔軟で、とても賢いと思います。見習うところが多々あります。


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