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高松宮記念の戦評 ~見応え十分の同期対決~

高松宮記念の戦評です。スプリント界の中心勢力である5歳馬が、ワンツーフィニッシュしました。ただ大混迷期に終止符が打たれた印象は未だありません。

マッドクール(5歳牡)に乗った坂井騎手は2番枠から好スタートを切ると、押して抜け出しました。しかし、外からビクターザウィナー(6歳騸)が彼以上に押してハナを切ろうとするのをチラッと横目で見ると、競わずに先頭を譲り、内ラチ沿いの好位に落ち着かせました。

レース前から逃げ宣言をしていた通りにハナを切ったビクターザウィナーは、マイペースで逃げます。近年の香港馬はスプリント戦で強さを発揮しています。1月に香港でG1を制したばかりの彼の逃げ脚は快調です。4コーナーを回ると、直線では馬場状態の比較的良さそうな真ん中に進路をとるも、直線途中で脚があがり2頭にかわされました。それでも3着に粘り、実力があるところを見せました。

マッドクールはタイトに4コーナーを回ると、迷うことなく内ラチ沿いにコースを選択しました。レース後のインタビューによると、坂井騎手は戦前から逃げ馬の後ろに位置し、直線では最内を進むことをシミュレーションしていたとのこと。事前計画の通りにエスコートした素晴らしい騎乗です。

そして、惜敗のナムラクレア(5歳牝)です。彼女は道中やや後ろ目の内側にポジションをとりました。彼女に騎乗した浜中俊騎手の作戦も坂井騎手と同様に直線内側狙いです。先行各馬が直線で外の進路を目指すなか、絶妙なコーナーリングで内ラチ沿いを一気に加速し先頭を目指します。

残り300m前後で、彼女がマッドクールのさらに内側を目指して加速しようとした瞬間、先を走るマッドクールに内ラチ沿いのコースを塞がれます。そのために、マッドクールの1頭分外側に進路を取り直すために、一瞬加速が鈍ったように見えます。これが最後に両馬の勝敗を分けたポイントだったと思います。
200mを切ってから再加速した末脚は、さすがナムラクレアという切れ味で、一歩ずつマッドクールとの差を詰めました。しかし、マッドクールも根性を出して、何とかしのぎ切りました。

2頭とも騎手の作戦を完遂する極めて高い能力を発揮した、「これがG1」という見応え十分のレースだったと思います。2組の人馬のコンビは結果こそ明暗を分けましたが、共に全力を尽くした素晴らしいレースを見せてくれました。関係者の皆様、ありがとうございました。
なお、個人的には、次回はナムラクレアの戴冠を切に願います。


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