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スプリンターズSの戦評 ~瞬きする間もない電撃戦~

1200mのレースは、よく「電撃の6ハロン(1ハロンは200m)」と言われますが、一昨日のレースはまさに「電撃」でした。ゲートが開いて、直ぐにゴールになったような感じを受けました。

◆ 8着 ピューロマジック(3歳牝)
最初に電撃線を演出した、ピューロマジックの走りっぷりを紹介します。

彼女が前半600mを32.1秒という驚きのハイペースでレースを引っ張ったことが、電撃戦を生み出した理由です。
しかし、彼女は玉砕覚悟の一か八かの賭けにでたのではないと思います。3歳牝馬ということで54㎏の最軽量斤量だったこと、内側/先行馬有利の馬場状況を考え、勝つためには後続を大きく引き離して逃げて、ギリギリでゴールになだれ込む作戦を選んだのだと思います。

実際5馬身程度のリードを保って4コーナーを回ってきており、作戦は計画通りに進んでいました。ただし、現在の超一流スプリンターたちの実力は高く、一歩ずつ差を詰められ、ゴール前50mで馬群に飲み込まれました。
それでも8着に粘りました。狙い通りの好走だったと思います。
以下では、上位馬のレース運びを見ていきます。

◆ 1着 ルガル(4歳牡)
今春の高松宮記念で1番人気に推されるも、レース中に骨折してしまい大敗を喫しました。それ以来のレースとなったルガルは、9番人気と低評価でした。しかし、関係者は今春のシルクロードSで見せた強い勝ち方の再現を虎視眈々と狙っていました。

その通り、好スタートから3番手に付けます。彼は、逃げたピューロマジックや2番手に付けたビクターザウィナーが押して先行したのに対し、自分のペースで好位に付けられたことで、ペース自体は速くても、一息付けているのだと思います。

直線では内ラチ沿いから数頭分外に出して、内側に詰まることを避けると、確りと伸びて、ゴール前50mでピューロマジックをかわすと、後続の追撃を凌いで勝利しました。着差はクビですが、3番手で超ハイペースに付いていっての勝利は、それ以上の完勝劇でした。

ハイペースに怯まず、ルガルの実力を信頼し、予定通りに先行して抜け出した西村淳騎手の好騎乗が光りました。G1初制覇の西村淳騎手はゴール後から感涙を流しており、最後までゴーグルを外せず、ルガルの首元に顔を埋めていたシーンは、感動ものでした。

◆ 2着 トウシンマカオ(5歳牡)
ゲートから上手く出ると、2番枠を活かして中団の内ラチ沿いを進みます。そのまま無理せずに進み、得意のコーナーワークを活かして4コーナーをタイトに回ると、内ラチ沿いの狭い進路を見つけて末脚を伸ばします。

彼は完璧なレース運びをしたと思いますが、一昨日のルガルはそれよりも強かったという感じでした。完璧にエスコートしたのに勝てなかった菅原明騎手は、レース後のインタビューで悔しさを隠しませんでした。

◆ 3着 ナムラクレア(5歳牝)
推し馬の彼女は、今回も再び惜敗でした。ファンとしては切ない気持ちでいっぱいです。あえて敗因を探せば、スタート直後のポジション争いで後れを取り、後方5番手あたりまでポジションが下がったことです。
直線では大外の進路を選び、最後の600mを最速で駆け抜けましたが、全馬をかわし切る前にゴール板を通過してしまいました。本当に悔しい惜敗です。

関係者は来春の高松宮記念に再挑戦することも検討したいとのことでした。
騎乗停止の浜中騎手に代わって彼女をエスコートした横山武史騎手もまた、結果に対して悔しさを露わにしていました。

◆ 4着 ママコチャ(5歳牝)
彼女は姉のソダシ以上に気性の難しさがあるといわれます。今日も前半に少し引っ掛かったように、頸を上げている仕草がありました。
道中はトウシンマカオの斜め前と絶好のポジションをとれていましたが、最後の末脚勝負で2、3着馬に遅れました。その遅れの原因は、道中での引っ掛かりがあったのかもしれません。

それでも、ディフェンディングチャンピオンとしての実力を、確りと見せつけたと思います。若手騎手の悔しさを前面に出しているコメントに対して、川田騎手の淡々としたコメントが、逆に悔しさを感じさせました。

◆ 最後に
香港から来日してくれた2頭に感謝です。今回両馬とも苦戦を強いられましたが、日港の相互交流が深まれば、もっと面白くなると思っています。
今回、本当にありがとうございました。無事に帰国してください。今度は12月に日本馬が香港遠征をする順番ですね。

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