見出し画像

5分で分かる!2020年のAIビジネス

マザーズに上場している、Deep Learning技術などを用いたAIビジネスを主軸とする11社の企業をコンパクトにまとめました。

今のAIビジネスの成功事例や、気をつけるべきポイントなどを知りたい方におすすめです。

第1位 PKSHA Technology(時価総額732億円)

AIベンチャー。画像認識・自動対話などのディープラーニング技術開発が軸。トヨタと連携。

業績・株価

Kabutan「PKSHA Technology(3993)基本情報」2020/2/29時点
PKSHA Technology「第8期第一四半期報告書」

・時価総額: 732億円
・PSR: 23.9倍
・株式公開: 2017/09/22
・売上(※): 18.6億円
・売上YoY: +267%
・営利率: 6%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

PKSHA Technologyは、ディープラーニング技術のシステム受託を中心に、MaaS領域の企業などを買収しています。

PKSHA Technology「2019年9月期 決算説明資料」

画像1

2019年6月に駐車場機器メーカーのアイドラ社を買収しています。

画像2

考察

アイドラ社の売上成長率をグラフの目分量から推察すると、+3~5%程度だと思われますので、短期的には大きな成長率に貢献しないと思います。

しかし、無人駐車場を実現する技術は、無人コンビニや、様々なRPAソリューションに応用可能でしょう。

したがって、今までのAIモジュールの提供から、IoTとAIを用いた、RPAソリューションの提供が可能になり、中長期的に、ソリューションの幅を大きく拡げることができるのではないかと思います。


ここから先は有料になります。有料版を購入すると、以下のコンテンツが閲覧可能です。

今のAIビジネスの成功事例や、気をつけるべきポイントなどを知りたい方におすすめです。

第2位 AI Inside(時価総額687億円)
第3位 Kudan(時価総額342億円)
第4位 ロゼッタ(時価総額293億円)
第5位 ALBERT(時価総額244億円)
第6位 アドバンスト・メディア(時価総額171億円)
第7位 FRONTEO(時価総額91億円)
第8位 エルテス(時価総額86億円)
第9位 エーアイ(時価総額70億円)
第10位 AI CROSS(時価総額55億円)
第11位 シルバーエッグ・テクノロジー(時価総額31億円)
2020年のAIビジネス市場考察・まとめ

第2位 AI Inside(時価総額687億円)

人工知能技術を用いた光学式文字読み取り装置(OCR)サービスの提供

業績・株価

Kabutan「AI Inside(4488)基本情報」2020/2/29時点
AI Inside「第5期第3四半期報告書」

・時価総額: 687億円
・PSR: 154.4倍
・株式公開: 2019/12/25
・売上(※): 3.5億円
・売上YoY: 134%
・営利率: 28%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

OCR技術を用いて、手書きの書類の読み取りサービスを提供しています。

AI Inside「2020年3⽉期 第3四半期決算説明資料」

画像3

考察

AI企業というより、SaaS企業です。 SaaS企業としては、これ以上無い収益性を実現しています。
(詳しい解説はこの記事を御覧ください。)
Q. 売上100倍の時価総額!AI Inside上場後のAIビジネスの勝因とは?

OCR領域のサービスは、シナモン等のスタートアップ企業の参入もあり、競争が激しくなりつつあります。

OCR以外の領域を攻めていくために、PKSHA Technologyと同じように、アルゴリズムプラットフォームを広く展開していくようです。

第3位 Kudan(時価総額342億円)

人工知覚技術の研究開発やライセンスの提供。国内外の先端技術企業と提携。

業績・株価

Kabutan「Kudan(4425)基本情報」2020/2/29時点
Kudan「第6期第3四半期報告書」

・時価総額: 342億円
・株式公開: 2018/12/19
・PSR: 91倍
・売上(※): 0.7億円
・売上YoY: -38%
・営利率: -58%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業

Kudan「2020年3月期 第3四半期 決算説明会資料」

画像4

考察

KudanはSLAMという「自己位置推定」と「環境地図作成」の技術に強い会社です。

GPS等は人工衛星などの信号をもとに、自己位置の推定などを行いますが、SLAMは周辺映像技術をもとに、自己位置や周辺の障害物の特定などを可能にする技術です。

上記のyoutubeを見ると、SLAMの技術はGPSを大きく超える自動運転の精度を実現しています。11社の中では、純粋な技術的な優位性を評価されている会社だと思います。

第4位 ロゼッタ(時価総額293億円)

人工知能型機械翻訳のソフト提供。研究・開発や産業企業向け専門に翻訳。

業績

Kabutan「ロゼッタ(6182)基本情報」2020/2/29時点
ロゼッタ「第16期第3四半期報告書」

・時価総額: 293億円
・株式公開: 2015/11/19
・PSR: 10.1倍
・売上(※): 9.8億円
・売上YoY: 42%
・営利率:14%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

専門用語も網羅したAI自動翻訳ツールの提供です。

画像5


考察

専門用語に特化した翻訳システムを提供しています。
AI Insideと同じく、BPO領域のPMFに成功した1社の一つと思われます。
上場から4年以上経過していますが、売上成長率が40%を超えているのは非常に素晴らしいと思います。

AI Insideもそうですが、日本語の読み取り領域は、海外企業よりも優位性を持てるので、良いポジションだと思います。

第5位 ALBERT(時価総額244億円)

ビッグデータをAI活用したマーケティング支援システムを提供。ユニシスと資本業務提携。

業績

Kabutan「ALBELT(3906)基本情報」2020/2/29時点
ALBERT「2019年12月期 第3四半期報告書」

時価総額: 244億円
株式公開: 2015/2/19
PSR: 15倍
売上(※): 5.5億円
売上YoY: 50%
営利率: 4%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

ALBELT「2019年12月期 第3四半期 決算説明資料」

画像6


考察

基本はデータサイエンティスト人材を派遣するビジネスモデルで、ブレインパッド(東証1部)と似たようなビジネスだと思います。

第6位 アドバンスト・メディア(時価総額171億円)

音声認識技術で各種ソフトを開発。文字起こしサービスや多言語翻訳アプリ展開。

業績

Kabutan「アドバンスト・メディア(3773)基本情報」2020/2/29時点
アドバンスト・メディア「 第23期第3四半期」

・時価総額: 171億円
・株式公開: 2005/6/27
・PSR: 4倍
・売上(※): 11.3億円
・売上YoY: 24%
・営利率: 11%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

アドバンスト・メディア「2020年3⽉期第2四半期決算説明会資料」

画像7

考察

音声認識技術を、B向けに展開している会社。
事業全体の売上YoY+24%でした。
しかし、売上比率が最も高い、コールセンターAIサービスの売上YoYにおいては、+100%程度あるので、成長角度を引っ張って行くのではないかと思います。

一方で、コールセンターをAIで代替するのは、顧客満足度が低下するリスクがあるので、企業も意思決定しにくい部分もあると思います。

ですが、コールセンターのコストを削減したいニーズは大きいと思われるので、長期的にじわじわと成長していくのではないでしょうか。

第7位 FRONTEO(時価総額91億円)

訴訟支援。証拠開示のデータ収集分析など解析事業。AI活用で効率向上。

業績

Kabutan「FRONTEO(2158)基本情報」2020/2/29時点
FRONTEO「第17期第3四半期報告書」

・時価総額: 91億円
・株式公開: 2007/6/26
・PSR: 0.8倍
・売上(※): 2.5億円
・売上YoY: -11%
・営利率: -12%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

FRONTEO「AIソリューション」2020/03/08アクセス

画像8

考察

法務領域や、ライフサイエンス領域のドキュメントチェック領域のAIソリューションを提供する会社です。

領域自体は、先程のロゼッタ(時価総額293億円)の専門用語の翻訳領域と、AI InsideのOCRの領域に少し近い気がしますが、Welq問題に挙げられるように、法務、ライフサイエンスのドキュメントチェックは大変厳しいので、システムに一任するのは難しく、せいぜい誤植をチェックできる程度ではないかなと思いました。

第8位 エルテス(時価総額86億円)

ネットリスク回避のビッグデータ解析・ソリューションを提供。被害予防コンサルに強み。

業績

Kabutan「エルテス(3967)基本情報」2020/2/29時点
エルテス「第9期第3四半期報告書」

・時価総額: 86億円
・株式公開: 2016/11/29
・PSR: 5.2倍
・売上(※): 4.8億円
・売上YoY: 18%
・営利率: 15%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

画像9

考察

セキュリティの市場規模は3000億円弱あるそうですが、その中でも、レピュテーションリスク対策の市場は、かなり小さいのではないでしょうか。

第9位 エーアイ(時価総額70億円)

音声合成エンジン「AITalk」を開発・販売。言語種類と感情表現も。導入企業多。

業績

Kabutan「エーアイ(4388)基本情報」2020/2/29時点
エーアイ「第17期第3四半期報告書」

・時価総額: 70億円
・上場日: 2018/06/27
・PSR: 9.4倍
・売上(※): 1.7億円
・売上YoY: 4%
・営利率: 26%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

エーアイ「2020年3月期 第2四半期決算補足説明資料」

画像10

考察
ヤマハのボーカロイド技術等と比較すると、初音ミクのようなコンテンツに搭載するのではなく、ニュースやガイダンスで使える合成音声を提供しているようです。

Alexa、Google Homeなどに加えて、Voicyなどのメディアが成長するに連れ、AIによるニュース読み上げなどの市場も拡大していくとは思いますが、正直GoogleやSiriなどの読み上げ機能で十分ではないかと感じます。

第10位 AI CROSS(時価総額55億円)

SMSメッセージサービス、ビジネスチャットサービスなどの開発・提供。AI分析に強み。

業績

Kabutan「AI CROSS(4476)基本情報」2020/2/29時点
AI CROSS「第5期第3四半期報告書」

・時価総額: 55億円
・株式公開: 2019/10/8
・PSR: 3.8倍
・売上(※): 3.3億円
・売上YoY: +29%
・営利率: 17%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容
AI Cross「2 0 1 9 年 1 2 月 期 決 算 説 明 資 料」


画像11

Nikkei「AI CROSS[4476]:成長可能性に関する説明資料」

画像12

考察

2019年後半に上場したチャットボット系の上場会社です。

LINE「2019年12月期第4四半期 決算補足説明資料」によると、アカウント広告(LINE公式アカウント)の四半期売上が15億円程度でしたので、SMSのマーケティング利用は、四半期5~10億円程度行けばいい方ではないでしょうか。

第11位 シルバーエッグ・テクノロジー(時価総額31億円)

AI利用のウェブマーケティングサービスの開発・提供。リアルタイムでおすすめ商品表示。

業績

Kabutan「シルバーエッグ・テクノロジー(3961)基本情報」2020/2/29時点
シルバーエッグ・テクノロジー「第22期第3四半期報告書」

・時価総額: 31億円
・株式公開: 2016/9/27
・PSR: 3.1倍
・売上(※): 2.4億円
・売上YoY: 7%
・営利率: 9%

※  売上は、当会計年度の四半期平均を算出

事業内容

シルバーエッグ・テクノロジー「2019年12月期決算説明資料」

画像13

考察
成長率はかなり鈍化しているようです。レコメンドエンジンのモジュール提供は、Amazon Personalization等の大型競合が多くいるので、厳しいのではないでしょうか。

2020年のAIビジネス市場考察・まとめ

AIビジネスを3種類に分類すると、

1つ目が、AI技術を用いた受託開発企業です。
PKSHA TechnologyやALBELTが該当します。これらの企業は、個別の開発案件のナレッジを活かして、汎用モジュールを作ったり、自社サービスの提供につなげています。PKSHA Technology社やALBELTの高い成長率を鑑みると、まだまだ市場は成長中だと考えられます。

2つ目は、AI技術を用いたSaaSの提供です。 
AI Inside、ロゼッタ、アドバンスト・メディアが該当します。
これらの企業は、主にBPO領域業務を、AI技術で自動化するサービスを提供しています。
手書き文字起こし、専門用語翻訳、コールセンターなどの、少しニッチな領域で独占的なサービスを構築できるかが鍵ではないでしょうか。

ただし、ニッチすぎる領域に陥らない事(音声合成領域など)と、人の作業を代替できるほどのクオリティが上がらないケース(法務領域のドキュメントチェックなど)は気をつけたほうがいいでしょう。

3つ目は、AI技術優位の会社です。
今回でいうと、Kudanなどが該当します。
未上場企業だと、ChainerのOSSを提供していたPreferred Networksが有名ですが、FacebookのPyTorchに敗れるなどの、グローバルとの競争環境が激しいことはリスク要因です。

今後は、PKSHA Technology社がMaaS領域に進出したように、今後はデジタル空間のデータを解析するだけでなく、価値のあるリアルの空間のデータを吸い上げて、人の代わりに業務を遂行できる、AIを実装していく必要あると思いました。

アンケートの

今後クオリティの高い記事を執筆するために、もしよければアンケートにご回答いただけますと幸いです。(最短2問で、1分で終わります)

「5分で分かる!2020年のAIビジネス」アンケート


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?