5分で分かる!2020年のAIビジネス
マザーズに上場している、Deep Learning技術などを用いたAIビジネスを主軸とする11社の企業をコンパクトにまとめました。
今のAIビジネスの成功事例や、気をつけるべきポイントなどを知りたい方におすすめです。
第1位 PKSHA Technology(時価総額732億円)
AIベンチャー。画像認識・自動対話などのディープラーニング技術開発が軸。トヨタと連携。
業績・株価
Kabutan「PKSHA Technology(3993)基本情報」2020/2/29時点
PKSHA Technology「第8期第一四半期報告書」
事業内容
PKSHA Technologyは、ディープラーニング技術のシステム受託を中心に、MaaS領域の企業などを買収しています。
PKSHA Technology「2019年9月期 決算説明資料」
2019年6月に駐車場機器メーカーのアイドラ社を買収しています。
考察
アイドラ社の売上成長率をグラフの目分量から推察すると、+3~5%程度だと思われますので、短期的には大きな成長率に貢献しないと思います。
しかし、無人駐車場を実現する技術は、無人コンビニや、様々なRPAソリューションに応用可能でしょう。
したがって、今までのAIモジュールの提供から、IoTとAIを用いた、RPAソリューションの提供が可能になり、中長期的に、ソリューションの幅を大きく拡げることができるのではないかと思います。
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今のAIビジネスの成功事例や、気をつけるべきポイントなどを知りたい方におすすめです。
第2位 AI Inside(時価総額687億円)
人工知能技術を用いた光学式文字読み取り装置(OCR)サービスの提供
業績・株価
Kabutan「AI Inside(4488)基本情報」2020/2/29時点
AI Inside「第5期第3四半期報告書」
事業内容
OCR技術を用いて、手書きの書類の読み取りサービスを提供しています。
AI Inside「2020年3⽉期 第3四半期決算説明資料」
考察
AI企業というより、SaaS企業です。 SaaS企業としては、これ以上無い収益性を実現しています。
(詳しい解説はこの記事を御覧ください。)
Q. 売上100倍の時価総額!AI Inside上場後のAIビジネスの勝因とは?
OCR領域のサービスは、シナモン等のスタートアップ企業の参入もあり、競争が激しくなりつつあります。
OCR以外の領域を攻めていくために、PKSHA Technologyと同じように、アルゴリズムプラットフォームを広く展開していくようです。
第3位 Kudan(時価総額342億円)
人工知覚技術の研究開発やライセンスの提供。国内外の先端技術企業と提携。
業績・株価
Kabutan「Kudan(4425)基本情報」2020/2/29時点
Kudan「第6期第3四半期報告書」
事業
考察
KudanはSLAMという「自己位置推定」と「環境地図作成」の技術に強い会社です。
GPS等は人工衛星などの信号をもとに、自己位置の推定などを行いますが、SLAMは周辺映像技術をもとに、自己位置や周辺の障害物の特定などを可能にする技術です。
上記のyoutubeを見ると、SLAMの技術はGPSを大きく超える自動運転の精度を実現しています。11社の中では、純粋な技術的な優位性を評価されている会社だと思います。
第4位 ロゼッタ(時価総額293億円)
人工知能型機械翻訳のソフト提供。研究・開発や産業企業向け専門に翻訳。
業績
Kabutan「ロゼッタ(6182)基本情報」2020/2/29時点
ロゼッタ「第16期第3四半期報告書」
事業内容
専門用語も網羅したAI自動翻訳ツールの提供です。
考察
専門用語に特化した翻訳システムを提供しています。
AI Insideと同じく、BPO領域のPMFに成功した1社の一つと思われます。
上場から4年以上経過していますが、売上成長率が40%を超えているのは非常に素晴らしいと思います。
AI Insideもそうですが、日本語の読み取り領域は、海外企業よりも優位性を持てるので、良いポジションだと思います。
第5位 ALBERT(時価総額244億円)
ビッグデータをAI活用したマーケティング支援システムを提供。ユニシスと資本業務提携。
業績
Kabutan「ALBELT(3906)基本情報」2020/2/29時点
ALBERT「2019年12月期 第3四半期報告書」
事業内容
ALBELT「2019年12月期 第3四半期 決算説明資料」
考察
基本はデータサイエンティスト人材を派遣するビジネスモデルで、ブレインパッド(東証1部)と似たようなビジネスだと思います。
第6位 アドバンスト・メディア(時価総額171億円)
音声認識技術で各種ソフトを開発。文字起こしサービスや多言語翻訳アプリ展開。
業績
Kabutan「アドバンスト・メディア(3773)基本情報」2020/2/29時点
アドバンスト・メディア「 第23期第3四半期」
事業内容
アドバンスト・メディア「2020年3⽉期第2四半期決算説明会資料」
考察
音声認識技術を、B向けに展開している会社。
事業全体の売上YoY+24%でした。
しかし、売上比率が最も高い、コールセンターAIサービスの売上YoYにおいては、+100%程度あるので、成長角度を引っ張って行くのではないかと思います。
一方で、コールセンターをAIで代替するのは、顧客満足度が低下するリスクがあるので、企業も意思決定しにくい部分もあると思います。
ですが、コールセンターのコストを削減したいニーズは大きいと思われるので、長期的にじわじわと成長していくのではないでしょうか。
第7位 FRONTEO(時価総額91億円)
訴訟支援。証拠開示のデータ収集分析など解析事業。AI活用で効率向上。
業績
Kabutan「FRONTEO(2158)基本情報」2020/2/29時点
FRONTEO「第17期第3四半期報告書」
事業内容
FRONTEO「AIソリューション」2020/03/08アクセス
考察
法務領域や、ライフサイエンス領域のドキュメントチェック領域のAIソリューションを提供する会社です。
領域自体は、先程のロゼッタ(時価総額293億円)の専門用語の翻訳領域と、AI InsideのOCRの領域に少し近い気がしますが、Welq問題に挙げられるように、法務、ライフサイエンスのドキュメントチェックは大変厳しいので、システムに一任するのは難しく、せいぜい誤植をチェックできる程度ではないかなと思いました。
第8位 エルテス(時価総額86億円)
ネットリスク回避のビッグデータ解析・ソリューションを提供。被害予防コンサルに強み。
業績
Kabutan「エルテス(3967)基本情報」2020/2/29時点
エルテス「第9期第3四半期報告書」
事業内容
考察
セキュリティの市場規模は3000億円弱あるそうですが、その中でも、レピュテーションリスク対策の市場は、かなり小さいのではないでしょうか。
第9位 エーアイ(時価総額70億円)
音声合成エンジン「AITalk」を開発・販売。言語種類と感情表現も。導入企業多。
業績
Kabutan「エーアイ(4388)基本情報」2020/2/29時点
エーアイ「第17期第3四半期報告書」
事業内容
考察
ヤマハのボーカロイド技術等と比較すると、初音ミクのようなコンテンツに搭載するのではなく、ニュースやガイダンスで使える合成音声を提供しているようです。
Alexa、Google Homeなどに加えて、Voicyなどのメディアが成長するに連れ、AIによるニュース読み上げなどの市場も拡大していくとは思いますが、正直GoogleやSiriなどの読み上げ機能で十分ではないかと感じます。
第10位 AI CROSS(時価総額55億円)
SMSメッセージサービス、ビジネスチャットサービスなどの開発・提供。AI分析に強み。
業績
Kabutan「AI CROSS(4476)基本情報」2020/2/29時点
AI CROSS「第5期第3四半期報告書」
事業内容
AI Cross「2 0 1 9 年 1 2 月 期 決 算 説 明 資 料」
Nikkei「AI CROSS[4476]:成長可能性に関する説明資料」
考察
2019年後半に上場したチャットボット系の上場会社です。
LINE「2019年12月期第4四半期 決算補足説明資料」によると、アカウント広告(LINE公式アカウント)の四半期売上が15億円程度でしたので、SMSのマーケティング利用は、四半期5~10億円程度行けばいい方ではないでしょうか。
第11位 シルバーエッグ・テクノロジー(時価総額31億円)
AI利用のウェブマーケティングサービスの開発・提供。リアルタイムでおすすめ商品表示。
業績
Kabutan「シルバーエッグ・テクノロジー(3961)基本情報」2020/2/29時点
シルバーエッグ・テクノロジー「第22期第3四半期報告書」
事業内容
シルバーエッグ・テクノロジー「2019年12月期決算説明資料」
考察
成長率はかなり鈍化しているようです。レコメンドエンジンのモジュール提供は、Amazon Personalization等の大型競合が多くいるので、厳しいのではないでしょうか。
2020年のAIビジネス市場考察・まとめ
AIビジネスを3種類に分類すると、
1つ目が、AI技術を用いた受託開発企業です。
PKSHA TechnologyやALBELTが該当します。これらの企業は、個別の開発案件のナレッジを活かして、汎用モジュールを作ったり、自社サービスの提供につなげています。PKSHA Technology社やALBELTの高い成長率を鑑みると、まだまだ市場は成長中だと考えられます。
2つ目は、AI技術を用いたSaaSの提供です。
AI Inside、ロゼッタ、アドバンスト・メディアが該当します。
これらの企業は、主にBPO領域業務を、AI技術で自動化するサービスを提供しています。
手書き文字起こし、専門用語翻訳、コールセンターなどの、少しニッチな領域で独占的なサービスを構築できるかが鍵ではないでしょうか。
ただし、ニッチすぎる領域に陥らない事(音声合成領域など)と、人の作業を代替できるほどのクオリティが上がらないケース(法務領域のドキュメントチェックなど)は気をつけたほうがいいでしょう。
3つ目は、AI技術優位の会社です。
今回でいうと、Kudanなどが該当します。
未上場企業だと、ChainerのOSSを提供していたPreferred Networksが有名ですが、FacebookのPyTorchに敗れるなどの、グローバルとの競争環境が激しいことはリスク要因です。
今後は、PKSHA Technology社がMaaS領域に進出したように、今後はデジタル空間のデータを解析するだけでなく、価値のあるリアルの空間のデータを吸い上げて、人の代わりに業務を遂行できる、AIを実装していく必要あると思いました。
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