いつか会えたら
忘れられない人ってみんなそれぞれいると思う。
まだ未練があるとかそういうのだけじゃなくて、すごく感謝しているとかあの時のことを謝りたいとか衝撃的で印象に残っているとか、そういったいろんな意味で忘れられないみたいな。
いくつになってもふと思い出す人がいる。
「Song for…」を聴くたびに思い出す人。
私にこの歌を教えてくれたあの人。
臨時講師としてその人は学校に来た。
初めて見た時、きっとスーツ姿に一目ぼれしたんだと思う。ほんのり香る香水も印象的だった。
匂いは思い出に残ると聞いたことがあるけど本当だ。今でも覚えてる、あのブルガリの香水の香り。
それがブルガリだと分かったのは卒業してからずっと先だけど。
少しでも話したくて放課後に勉強を教えてもらってた。(なんて可愛いの当時の私。恋する乙女全開じゃん。)
でも、今思い返すと2人の関係は教師と生徒を少し越えてたと思う。
毎日メールをしていたし、時々電話もしていた。
当時は今みたいな使い放題のプランがなくて、ある一定の金額に達したら携帯が止まるようになっていたから、携帯が止まったらメールの送受信も出来なくて、電話の受信しか出来なかった私に先生がかけてくれてたのを覚えてる。
そんな先生が私に教えてくれた好きな歌が「Song for…」だった。
初めて聴いた時にものすごく悲しくなったのを覚えてる。だから最後まで聴くことが出来なかった。
この部分を聴いた時、当時の私はこれが私に対する返事なのだと勝手に思ってた。告白した訳じゃないけどきっと私の気持ちは分かっていただろうし、先生なりの答えなんだろうと子供なんだか大人なんだかな解釈をした。
もともと臨時講師だったのもあって、それからすぐに講師期間が終わり学校に来ることもなくなって会えなくなったと思う。
最終日に何かを話したのかその後なぜ連絡をとらなかったのかはもう思い出せない。多分初めて失恋を経験してショックのあまり記憶に残ってないのかもしれない。
しばらく経った後に体育祭に遊びに来ていたのを見かけたけど、私は話しかけに行かなかったのだけは覚えてる。スーツ以外の私服姿を初めて見た時、さらに大人なんだと感じて自分とはやっぱり釣り合わない気がしたのもなんとなく覚えてる。
それから何年も経って大人になったある時、テレビでHYの「Song for…」誕生秘話がやっていた。あれは仲宗根泉さんの実体験を歌にしたとか。
その時初めてあの歌の意味を知った。
最後まで聴くことが出来なかったあの歌を初めて最後まで聴いて、歌詞を全部見た時に衝撃だったのを今でも覚えてる。
これは仲宗根泉さんが20歳の頃に当時15歳だった男の子と恋に落ちて、あなたが20歳になった時にまだお互い同じ気持ちだったら付き合いましょうという思いを込めて作った歌だそう。これを知った時、もしかしてあの時の先生もこういう気持ちだったのかもしれないとふと思った。
いまどこで何をしているかも知らないし、連絡先ももう分からない。
もう会うこともないかもしれないけど、いつか会えたら聞いたみたい。
あの当時同じ気持ちだったのか。
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