Villain's Speech

『ふっふっふ。ここまでだファンタジーレッド!!お前がどんなにこの世界のキラメキを守ろうとしたところで、このリアリティノス伯爵の前では無力なのだ!!死ねぃ!!!』

『そうはさせるか!!!』『何っ!!??』デーンデンデンデデーーン♪

『キラメキ戦隊!!ファンタジャー!!』

もう許さないぞと、毎週日曜日の朝に激闘を繰り広げた宿敵を完膚なきまでに叩きのめす。1年間早起きお疲れ様でした。

俺はヒーローが大好きだ。正義はいつだって勝つのだ。仲間を信じていれば、最後に笑うのは正義なのだ。

だけどわかる。わかるぞリアリティノス伯爵。勝てると思ったんだから、せっかく今まで手を変え品を変え頑張ってきたんだから、誰よりも現実を見て頭使ってきたんだから、相手を倒す前に自分の苦労を語るスピーチくらいしたいよな。

悪の組織は完全歩合制

自分が主人公でないとしたら、主人公を追い詰めるところまでが見せ場だ。ヒーローの真の力が覚醒するのは、往々にして悪役に追い込まれたときだ。どんな修行よりも、ヒーローの個性を引き出している。

それを毎回、絆だ修行だ、新しい武器だと言われて、尺の都合で30分でカタをつけられていたらたまったもんじゃない。

ヒーローは常に後手に回らざるを得ない。対策委員会の立ち上げを提言し、許諾を取り、予算の適切な用途の決をとる。前衛的に現状を打開していく統制された組織であるのは、いつも悪の組織なのだ。

『すげぇ楽しかったよ。幸せになってね。』

その時...!!!....仲間は現れない。大逆転は起こり得ない。別れ際のスピーチが成立しないのは、どちらかが既に戦意を喪失しているからだ。

言葉ではなく態度で語れ。幸せなら手を叩こう。悪の正義のため、手を尽くして戦おう。

Episode.52 『勝手にしやがれ』

正義か悪かを決めたがっても、大概は途中で面倒になってしまう。だけどそれじゃいけない。

戦隊ヒーローシリーズの最終回が『自然消滅』なんて許されない。

だけど予定調和にも似た1年間の激闘の中で、宿敵の癖はなんとなくわかっているはずだ。視聴者ともなれば、7時50分頃に敵が巨大化していないと不安になってくるくらいだ。

寝たふりしてる間に最終回を迎えないためにも、自分の正義はしっかりと言語化しておきたい。

悪には悪なりの美学がなくては、魅力的なヴィランにはなれない。ジョーカーはバットマンの『殺さない』の美学があるからあんなにも魅力的な宿敵となったのだ。同時に、バットマンはジョーカーの『美学なんてない』という美学ゆえ、ルールの中で戦う苦悩を背負うヒーローとなるのだ。

正義の背後にはきっと『守りたいもの』がある。だから正義は勝たなくてはいけない。だから正義は美しい。悪の背後にはきっとそれがない。だからいつも言われてしまう。

『お前の好きにはさせない!!!』

その名に花束を、その声に拍手を

高校の時、『ダークナイト』の感想を国語教師がこう言った。

『面白かったけど、大の大人がコスプレして伝えるべきメッセージだったのかな』

多分否定はしていなかったんだと思う。その先生は好きだ。だけど順番が違う。当時の俺はそう思った。

卵が先か鶏が先か。メッセージが先かヒーローが先か。平和を訴えるために最適な手段がヒーロー映画なら、今頃世界はもっと平和になっているはずだ。暴力的なゲームやアニメが犯罪を誘発する最大の原因なら、世界は今頃世紀末だ。

ナスカの地上絵が古代人の暇つぶしだったとしてもいい。筆者の意図を添削するのが筆者ではなく採点者だとしても、目の前の事象を『問題』として投げかけられたと認識した時、人は自問するのだ。その過程にこそ意味がある。

バットマンがゴッサムシティを守るために1.8mのコウモリになったのが先。映画になったのはバットマンの活動に何かを感じた人が多かったから。空想の世界から現実の世界に、第4の壁を超えて訴える力があるから。

ヒーローの正義は視聴者が決める。絆も勇気も友情も、同じチームに見えてちゃんとそれぞれの正義があって、15話くらいで仲間割れをするように出来ている。

この命に替えても、考えさせる

真の最後のスピーチは、息絶える瞬間に取っておこう。

ヒーローを追い詰めた時に高笑いで話すスピーチは、自分の正義を悪として貫いた自分への褒め言葉として。平和ボケした赤い仮面の熱血野郎に聞かせてやろう。

息絶える瞬間のスピーチは、自分の美学を語る生きた証として。せっかくだから多くの人に、駆けつけた仲間たちにも聞かせてやろう。

人は勝手に受け取る。意図したことなんてほとんど伝わらないように出来ている。だから、伝え方の前に受け取り方を学ぼう。

何にだって噛みつく猛犬は正義のヒーローにはなれない。悪の美学を聞いた時、対比させた自分の正義をもう一度見つめ直すような、そんなヒーローになろう。

宿敵のお通夜で心に残る弔辞を読むのが、悪の美学への最大の敬意だ。

心にキラメキ携えて、今日も悪に立ち向かう。

最後に

誰かにもらった力で変身しないと悪とは戦えないヒーローが、この世には溢れている。

初回で力を手に入れたら万々歳、1年間悪との早朝草野球を頑張りましょう。残念ながら、まだ力を手に入れていない皆さん、逃げ惑いましょう。

悪に『染まる』と人は表現するけれど、最初から人の心には悪が潜んでいて、人生のどこかで共鳴するだけなんだ。

24話くらいでやっと全キャラクターが出揃って、33話くらいでもう1人の自分と戦って、40話くらいで真の力が覚醒して、52話で悪を倒したら、しっかり年金をもらって引退後を楽しめばいい。

いつか力を授かったら、メインの5人ではなくて助っ人のシルバーになりたい。

冷静沈着で悪にも少し共感して、熱血の赤色と1話丸々使って本気の戦いをしたい。









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