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チームジャーニーを読んだ 第一部

「ともにつくる」本

市谷聡啓さんの著作「正しいものを正しくつくる」が出版されたのは2019年6月だった。

ありがたいことにレビュワーの一人として名を連ね、出版記念イベントで対談させていただく機会もいただいた。そういった経緯もあり思い入れの深い本だ。

この本は、最終章で「ともにつくる」ことを示唆したところで締めくくられる。もう少し深く知りたいような余韻を残すものだった。

上で少し触れた出版記念イベントで「次は何を書くのですか」と質問させていただいたとき、「書き上げた直後なので次のことは考えていない」と回答いただいたような記憶がある。

しかし、一年足らずのインターバルでそれは姿を現した。「ともにつくる」本、チームジャーニーの登場である。

二部構成、分厚いがスラスラ読める

チームジャーニーに関しても、ありがたいことにレビュワーとして参加させていただいた。なので大方の内容は既に触れているし、実際レビュー時点から根本的に変化しているわけではない。しかし、圧倒的に読みやすくなっている。

いや、レビュー時点で十二分に読みやすかったのだが、図表の配置やレイアウト、そして推敲に推敲を重ねた文章がスッと入ってくる。300ページを超える重厚な佇まいからは意外なほど読みすすめやすい。

カイゼンジャーニーとチームジャーニー

前述のように、本書は二部構成だ。一部は一つの、二部は複数のチームについての話だ。本稿では第一部について扱う。その前に、ある書籍との関係性について触れておこう。

「チームジャーニー」というタイトルから想像がつくとは思うが、本書は「カイゼンジャーニー」と繋がる部分がある。(内容としては独立しているため、未読でも問題はない)

カイゼンジャーニーでは、見聞きしたことはあるプラクティスやフレームワークをどういったタイミングで使うのか、というケーススタディにジャーニー形式のストーリーを通して触れていくスタイルだった。

チームジャーニーでもジャーニー形式のストーリーという構造こそ一緒だが、コンテンツ自体もジャーニー的である、つまり「段階の設計」で構成されている点が特徴的だ。この思想は通奏低音のように本書を下支えしている。

第1部 1チームのジャーニーの感想

主人公が「うまくいっていないチーム」のチームリーダーを任されるところから、物語は始まる。

グループとチームの違い、ドラッカー風エクササイズ、星取表など比較的馴染み深い概念やプラクティスが顔を出し、タックマンモデルや成功循環モデル、コルブの経験学習モデルにも触れてゆき、カイゼンジャーニーと同じく「ああ、確かにこのタイミングではこのプラクティスだよね」と共感できる工夫がなされていてスッと入ってくる。

しかし、徐々にミッションジャーニーやチームとのDIFF、チームフォーメーションや背骨と肉など、自分にとっては新しい概念が顔を出してきた。

既に知っているプラクティスをどう使うかを学ぶカイゼンジャーニーとは異なり、まず新しく出会った概念たちの解釈が必要となった。

これがプラクティス単体で紹介されていたならば、意味と意図を解釈し落とし込むには時間がかかるだろう。しかし本書ではストーリーを通してなぜそのプラクティスなのかが解説され、また適応するべき場面がわかるため落とし込むまでにそこまで時間はかからない。これがストーリーの強みなのだろう。

タックマンモデルの混乱期を長く彷徨うようなストーリーラインは、妙にリアリティを感じた。本当にこういう現場があるかもしれない、いや自分の現場のことなのではないかと錯覚するほどに生々しいものだ。

一応、混乱期を抜けたような感触を得て第1部は終わりを迎える。

ここまで読んで思ったのは「自分のチームメイトたちと読みたい」ということだ。いや、本当にチームで読み合わせするべきなのではなかろうか。

単純にここで紹介されるプラクティスが役に立ちそう、ということもあるが、それ以上にチームの課題と向き合う姿勢、段階で発展していくというジャーニー設計などマインドセットに近い部分で学ぶところが多分にあるのだ。

第一部だけでも読む価値はある

あなたが複数チームと関わる人なのかそうでないのかに関わらず、少なくとも1つのチームとは関わっているだろう。そういったチームで何かを成し遂げる人には、第一部は様々なナレッジを提供してくれるだろう。

たとえば「他のチームとのDIFFをとる」などには唸らされた。これは様々な現場を様々な角度から関わってきた筆者だからこそ言語化できたものだろう。私は基本的に自社開発で、ずっと一つの現場にいる。チームの成長戦略を描くときには、将来像や過去の自分たちといった情報を用いている。しかしそこには「他のチームはどうか」という視点が欠けていたことに、本書を通して気づいたのだ。

こういった自分の現場だけではわからない、考えつかない行動を知ることができる読書という行為は、やはり大切にしていきたい。

第二部についても、近日中に読了し、感想などまとめていきたい。


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