キンカン塗って居眠り防止?

約10年前、高校生だった私は日中、毎日睡魔と戦っていた。
授業が分からなかったわけではない、夜間の睡眠も7~8時間は取っていて、運動部に所属していたわけでもなかった。くせに、ずっと眠かった。
そのことがとても恥ずかしくて、少しでも眠気が出てきたら授業中に発言して無駄に注目を集めることで、緊張により眠気を覚ましていた。頭はよくないので、発言の数が多いだけで結構間違ったことを言ったりして、毎回授業終わりには変な汗をかいて疲弊した。進学校だったので、内心「あんな低レベルな授業でも一生懸命発言して間違えて、発言している割に俺より成績悪くて哀れだな」と周りに思われていたかもしれないが、
授業中に発言する以外に眠気を覚ます方法を思いつけなかった私には、
周りに頭の悪さを曝す以上に授業中眠ってしまう方が恥ずかしかった私には、そうするしかなかった。

そんな馬鹿なくせに面倒なこだわりをもつ私に化学的な方法で眠気を覚ます方法を提案してくれた友達がいた。全国規模の模試でも1桁の順位をとることもあったその友達Yは、私にキンカンを差し出し「眠い時にはこれを嗅ぐと眠気が飛ぶ」と教えてくれた。
薬を渡されて、”嗅げば飛ぶ”と言われたので一瞬身構えたが、渡されたのが見慣れたキンカンのパッケージであったことと、進学校での成績上位者に服従せざるを得ない空気に流されて、私はYがくれたそのキンカンをあっさり受け取った。
キンカンとは、アンモニア水を主成分として、スースーするメントールやカンフル、消炎鎮痛剤のサリチル酸やトウガラシチンキが含まれている塗り薬で、嗅ぐという使い方は聞いたことが無かったが、ものは試しと軽く匂ってみた。
ツンとした刺激臭が鼻腔を抜け、確かに眠気は飛ぶ感じはあった。
ただ、臭いが嫌すぎるのと、眠くなった瞬間授業中にキンカンをさっと出して吸引する自分を想像するだけで眠気がなくなったのが理由で、この眠気覚まし方法は採用しなかった。
採用はしなかったが、臭いで目が覚めるのは面白いなと思って軽く調べてみた。ネット検索の結果、どうやらウェイトリフティングの気付けとしてsmelling saltsという手法があり、アンモニアを吸引することで肺や鼻腔を刺激されて意識がハッキリするらしいことが何となくわかった。

アンモニアを嗅げば意識がはっきりするということを知って、手に入りやすいアンモニアとしてキンカンを渡してくる友達Yは、やっぱり全国レベルの応用力があるんだなと当時はすごく感心した。
後に大学でどうしても眠くなってしまうという友達にこの話を紹介した際に、あぁそれ知ってる有名だよねと言われ、単に自身が情弱だったことが発覚してショックを受けるのだが、いまでも気付け薬としてキンカンを渡してくれたYの目の覚めるような提案は忘れられない。

参考:


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