アドレナリンと麻酔 #4

#3 では受容体とは何かという説明をした。アミノ酸というレゴブロック1ピースをたくさん積み上げた構造物がタンパク質であり、特定のモノ(これを専門用語でリガンドと呼ぶ)をキャッチすることでスイッチが切り替わるタンパク質が受容体であるという説明であったと思う。
理系科目が苦手な方にも読んでいただけるよう書いているつもりなので、色々とまた補足説明という名の脱線をするかもしれないが、今回はいよいよ「アドレナリン受容体」について説明していく。

アドレナリン受容体とは、文字通りアドレナリンやノルアドレナリンをリガンドとする受容体のことで、アドレナリンの類をキャッチすると細胞内での化学反応を促進させる。
サイズ的には、アミノ酸400~500個前後で出来ており、大体は細胞の表面にプカプカと浮いているカタチで存在する。
一口にアドレナリン受容体と言っても、αとβの2タイプあり、さらに、αにはα1,α2の2タイプ、βにはβ1,β2,β3の3タイプのさらに細かい分類が存在する。
薬の添付文書を読むにはこの段階くらいを覚えていればなんとかなるが、α受容体にはさらに下位の分類が存在し、α1A,α1B,α1Dの3タイプ、α2A,α2B,α2cの3タイプも薬学の教科書レベルでは知っておく必要がある。
合計9種類のアドレナリン受容体はそれぞれ体の中で異なった分布をしており、当然、アドレナリンの類がくっついた際に起こす体への影響も異なってくる。
9種類のアドレナリン受容体は、どれもアドレナリンやノルアドレナリンをキャッチするが、キャッチする部分の構造が微妙に異なるので、人類は9種類のうち1種類だけがキャッチできるような(特異性が高い)アドレナリンっぽい物質を化学的に合成することで、狙った体の反応を引き起こす(あるいは阻害する)薬とする手段を取ってきたわけである。
もちろん、狙った受容体だけに作用させる完璧な化合物をつくるのはとても難しいので、狙っていないタイプの受容体を刺激してしまい、狙っていない体の反応を引き起こしてしまうこともある。これが、副作用というわけである。
一般論っぽい話が続いたので具体的かつ麻酔が絡んだ例を挙げると、
アドレナリン受容体のα1は血管に分布していて、この受容体がアドレナリンやノルアドレナリンをキャッチすると、血管が収縮して細くなる。リドカインという麻酔を使う際には、血管を収縮させ、麻酔が充分な濃度を保ち、血流で薄まるまでの時間を稼ぐという狙いで、麻酔と一緒にアドレナリンも注射する。ただこの麻酔のケースでは、血流にのってアドレナリンが心臓に届くと、心臓にあるβ1受容体が心臓の鼓動を強くするので、副作用として血圧が上がってしまったりする。

アドレナリン受容体の種類に関する話を済ませたので、
次回は、アドレナリンα2受容体に作用するデクスメデトミジンの話を中心に書いていこうと思う。

参考:


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?