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0808

8月らしい青空、アスファルトの匂い。
空から人が降ってくる。
地面に散らばった肉片をすぐに人間だと認識できない。ただ変な方向に向いた洋服と髪の毛で人なんだと思う。黒く濡れているのが血だ。頭の芯が冷えてくるような感覚。周囲の音が消えて生暖かいような匂いがした気がする。遠くの方から救急車の音がしたから別の通りへ出て駅へ向かう。しばらくして遠くでAEDか何かの音。

時間はお昼ちょっと前、新宿に出て松屋に入った。右足だけ1㎝伸びたらこんな気分がするんじゃないかと思う。なんとなく身体の感覚がちぐはぐで自動ドアの鉄の部分が艶々して見えた。ネギ玉牛丼大盛り。あんまり咀嚼すると途中で味がしなくなることに気づいたので殆ど噛まずに掻きこんだ。食ったという感覚がないまま米が減っていく、それでなんとなく味噌汁を飲んだら急に辻褄があってきた。

隣ではデリバリーされる途中だと思われる中国人女性が同じものを頼んだ。ペラペラのセーラー服とネギ玉牛丼大盛り。顔と首のあたりとで色が少し違っている。脱ぎかけたハイヒールをつま先にひっかけてぶらぶらと揺らしている。それをしばらく眺めて店を出た。

駅で友人と待ち合わせ湘南新宿ラインで鎌倉に着く。駅からすぐに海は見えない。コンクリートから徐々に石畳に舗装が変わる。海に近づくと松が増え足元も砂でジャリジャリしてくる。道に展開があってテクノだと思う。別に聞かなかったから、友人も同じことを思ったかどうかは分からない。海沿いを歩き喫茶店に入り、別の友人とも会い、夕暮れにまた海岸に戻った。

波打ち際で犬がはしゃいでいる。犬が今、どんな気持ちであるのか友人の副音声で見る。レトリバー、ボルゾイ、ハスキー、トイプードル。詳細にアフレコを続けながら友人はタールが21㎎の金ピースをまぁまぁのペースで吸っていた。太陽は海ではなく湾の右手側、江の島の方に沈んでいく。私も金ピースを貰った。海と空の境目が少しずつ遠くなって見えなくなった。

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