フィクション

映画を見終わった後、卒業式の日の帰り道、旅行先で目覚めた時。そんな喪失感に苛まれる。
単純に失恋した訳なのだが、フラれた訳でもない。しかし今僕の心はそんな調子だ。こんな特別な感情を今回は書き残そうと思う。
1年半程前に好きだったが告白をする1週間前に相手に彼氏が出来て、告白まで至らなかった。そんな恋が1年半越しに戻ってきたのだ。
別れの報告を聞いてから何度か遊び、自分の気持ちにブレーキを掛けること無く忘れかけてた恋心をじっくりと巻き戻ししていたが、彼女はどこか違う所を見つめていて、立ち止まっていて、一緒にいても遠くにいるようなそんな関係だった。
まるで映画のワンシーンみたいに過去の恋愛の続編を見ているような気がしてたまらなく、いっそのことフィルムを指で止めてやりたくもなった。
その映画の続きには彼女がいて..なんてそんな事を思い描いていた。主人公のはずだった。
でも現実は映画みたく上手に出来てなくて、トム・クルーズがスタントにミスする。ジャックとローズがタイタニック号に乗って無かったみたいなふざけたシナリオが続いていた。
そんな中昨晩、夜中に彼女から電話があり、電話越しに「元彼と寄り戻したよ。」こんなセリフが吐き捨てられた。
これがフィルム式の映画なのであればその部分を切り取ってもう一度再生したし、これがフィクションなら初めから制作しなおせと作家にクレームを入れたいくらいだった。
でもこれは紛れも無く現実で、たった今自分の好きな人がクランクアップしてしまった悲しさとそれを応援するべきなのだと思ってしまう自分に腹立たしくなりながらも「おめでとう、良かった!応援してる!」なんて台本に沿ったような思っても無い感情を送り付けた。
本当はこんなはずじゃ無かったし、応援する気なんてさらさらないし、俺と結ばれるはずだったし俺のが幸せに出来るに決まってるとも思っている。
初めっから決まってた言葉のように飛び出したその言葉は完全なるフィクションで僕自身が自分を美化するための言葉だ。要は綺麗事。
こんな状況になっても尚まだ好きな人の目に美しく写るように美化する自分に嫌気がさした。
実のところこんな事を書いている自分も大嫌いだ。特別な感情、今しか味わえない貴重な気持ちそれを残すためなんて綺麗事吐いて、自分の中で肥大化していく腫瘍を切り取って貼っている。つまり現実逃避。そんな気がしてならない。
でも諦められないし、これが本当に映画なのであればまだエンドロールは流せない。
紛れもなくこの話は現実なのだが自分なりのフィクションを描いて次のページに進みたいと思う。

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