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奥多摩に行きなさい

第1章 SUP
スタンドアップパドルの頭文字をとってSUP。通称サップの印象は、スクールカーストの上位に君臨しtiktokにダンス動画や口パク動画やいい波乗ってんね〜動画などを躊躇なく顔出しでUPなんなら#有名になりたいなんてハッシュタグを臆面もなくつけてしまうような人種がやるもの、肌が浅黒く髪は金髪に近い茶髪で真っ赤なナイキのサンダルを履いていて野外キャンプで重低音のクラブミュージックを響かせて原始的な踊りをし始める輩がやるもの、といった印象であったが、完全に偏見であった。実に清々しいアクティビティであった。大きな葉っぱ型のボードに乗り、パドルで漕いで進むのだが、途中で立ったり寝たりできる自由度がよかった。寝た時に木の葉が揺れているのが見えて、なんだかバカンス感が湧き上がってきた。ボードの後ろに体重をかけてウイリーみたいにして遊んでいたら水面が真上にあった。次の瞬間にはボードの底を水中から眺めており、遅れてバシャーンという音が響く。水泡が舞い上がる。一度濡れてしまえば、何度でも落ちたくなってしまうが、ボードに這い上がる時に、少しずつ身体に見えない疲労がたまる。くしゃみがでる。空は曇っている。

第2章 UNO
地域によってルールが違うUNO。まずはそこを擦り合わせるためのゲームが3回ほど必要になる。UNOあがり、UNOストップといった新語を覚えるのに苦労する。座る場所によって勝敗の確率が変わる、という主張にオカルトを感じつつも、皆が半分信じる。6と9を重ねて出すというイカサマに気がつくポリス。失う信用。覚醒的に盛り上がる中年達。夜はまだ始まったばかり。

第3章 PRE
きのこ汁、ヤマメ、釜めしなどをいただきながら、ここはまだ東京である、という事実に癒される。森を歩き、何かを回復する。緑の中でしか吸収できない成分があるのだろう。そしてそれはまだ現代科学では名前がつけられていないのだろう。そしてごはんの進捗と仕事の進捗を並行してチェックしながら、次の日の朝イチでプレゼンしなきゃいけない企画書を仕上げていく。現実が1%ずつ目盛りをあげていき、心の欽ちゃんが切ない目でこちらに向かってくる。目が潤んでいる。しかし血走っている。ダーメだよー仕事は選んじゃダメなの。不本意な仕事にしかチャンスはないんだよー。もーちょっと点数あげてよー。といい、現実の目盛りは15%を超える。ファンファーレ。バニーガール。恵比寿の自宅にたどり着く。

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