東京人虎探偵目録 アクタイオンの寝台を探せ
中秋の夜に6時間ほど番をして、以前なら風邪の一つでも引きそうなモンだが。夏の初めに貰ったコートがいいものだったのか。寒さは、微塵も感じてなかった。
「新宿東宝ビル前の封鎖が完了した。もうすぐ対象がそちらに向かう。待機班。準備を始めろ」
インカムから鋭い声が聞こえる。吹き付ける風に左頬を当てられて、獰猛な牙を持つ大きな黒い影が視界に入った。
「シン・ゴジラって映画あるよな。お前さ。アレって、観たことあるか?」
「待機班? 降下の準備を始めろ」
隙のない声色が鋭さを