5.アトツギ

朝から晴天
洗濯ものもすっきり乾きました!


物心ついたころから
「お前はあとつぎだからな」
と言われて育ちました
「あとつぎ」とはなんなのか?
わからないまま素直に受け取り
周りの大人に

おおきくなったらあとつぎになるの

と言ってました

ある時いつものように
ワタシあとつぎになるんだ

と誰かに言うと

そうなの!えらいね!!

すごく褒められてびっくりしました

そうか
アトツギとは偉い仕事なんだと思ったものです

親は農家の跡継ぎの男子をあからさまに望んでました

4人立て続けに生まれたのは女子
最後の妹C子が生まれたときに

まあいいや
長女に婿でもとらせて跡継ぎにさせようと
安易に父は考えたそうです

ですがお話した通り
10歳前後から
いやもうそのすでに前から
父のことが大嫌い
そのうえ勝手に婿を取らせて農家をつがすと決められたことに
酷く失望しますます大嫌い
と思うだけでした

父は頭が固く
自分の意見がすべて
短気で人の話を聞く前に怒鳴る
そういう人でしたから
小学校高学年になるころには口もきかなくなってました

親とは
こどもの幸せをただただ願うものではないのか?
長いことこう考えていたのですが
どうやらそうではないらしい
父は娘の人生は自分の人生の駒としか思っていなかった
その思想は戦国時代の武将か?
このころから父のことは
心の中で
【妖怪センゴク】
と呼んで
【おとうさん】などと口にすることをやめた
こんな妖怪が父だなんて認めたくなかった

中学生になると学校の帰りが遅くなったことで
食事の時間がずれたり
妖怪センゴクと接触することが少なくなってきて少し楽でした


ある時
2階の部屋にいて
「母からごはんだよ」と呼ばれたちょうどそのタイミングで
鼻血が出てしまい
あたふたしていて
止まってから食卓へ行くと父は

おそい!
なんですぐこないんだ!
もう食べるな!

頭ごなしに怒鳴られ
恐怖と悔しさと悲しさと
何故うちはこんな軍隊みたいなんだ、と
情けなくて
母も妹も祖父母も父の癇癪がおさまるのをただ黙って待っているだけ
誰も助けてくれないんだな
失望しかなかった

学校にも家にも
居場所がなく
苦しくて仕方なかった


ああ
学校休みたいな
熱でもでないかな
とは思ってみても
家にいたところで
妖怪センゴクはいるし
前門の虎後門の狼
前も後ろも行き詰まりな人生は
この後何十年も続くことになる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?