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2019年北区長選挙・北区議会議員選挙レポート

 統一地方選後半戦は4月14日告示、21日投票で行われた。東京都でも18の市区町村長選挙、46の市区町村議会議員選挙が実施されている。

◼️注目の北区長選

 その中でも私が最も注目していたのが、東京都北区長選挙である。5期目を目指す花川與惣太区長は御年83歳。投開票日の4月21日が誕生日で84歳になるので、当選して任期を満了すれば88歳という高齢である。区政与党の自民党からも高齢に対する退陣論が出ており、4年前2015年は自民党、公明党、旧民主党が推薦を出さなかった。
 対立候補として名乗りを挙げたのは前回も出馬した共産党推薦の川和田博氏と、「あたらしい党」を結成した音喜多駿都議。とりわけ35歳と若く知名度も高い音喜多都議の立候補により、注目度が一気に高まった。
 音喜多都議はブロガー都議としても知られる。2013年にみんなの党公認で都議会議員選挙に北区選挙区から初当選。当選直後、都議会みんなの党が幹事長人事を巡って分裂すると、会派「みんなの党」に所属し政調会長に就任。みんなの党解党後は会派「かがやけTOKYO」に所属する一方、松田公太参院議員が結成した「日本を元気にする会」に所属したかと思うと、2016年参院選ではおおさか維新の会の渡辺喜美・元代議士を支援するなどしていたが、同年7月に小池百合子代議士が東京都知事選への立候補を表明するといち早く支持を表明。都民ファーストの会幹事長に就任すると、2017年に都議に再選した。しかしその後、小池都知事の国政関与や都民ファーストの会の不透明さを批判して都民ファーストの会を離党すると、上田令子都議と共に会派「かがやけTOKYO」を結成するも、2018年に上田都議と対立して会派を離脱。地域政党「あたらしい党」を結成して、統一地方選挙での候補者擁立を目指していた。
 音喜多都議は、対立を繰り返して数々の政党を渡り歩く姿勢が無節操であると批判されたりもするが、「ブラックボックス」と称された都議会の様子を積極的にブログで発信するなどしてきた。実際私もこの「栄光なきドン・キホーテ」を執筆するにあたって何度も彼のブログを参照してきている。

 花川区長との年齢差は実に48歳。ほぼ半世紀もの違いがある。花川区長の高齢・多選批判が高まれば、これは面白い結果になるかもしれない。
 

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 前回の北区長選の結果。

当選84,303花川与惣太 80 無所属・現(社民党推薦)
  32,891川和田 博 64 無所属・新(共産党推薦)
   9,540三宅 二郎 62 無所属・新

 また、2017年都議選北区選挙区の結果。

当選56,376音喜多 駿 33 都民ファーストの会・現
当選34,501大松  成 56 公明党・現
当選30,374曽根  肇 65 共産党・現
  29,135高木  啓 52 自民党・現(こころ推薦)
   8,316和田 宗春 73 民進党・元(自由党推薦)

 共産党の候補は一貫して約3万票を取っている。背景に小池ブームがあったとはいえ、音喜多都議が都議選の際の得票を花川区長から奪うことが出来れば、十分に当選をうかがうことができる。
 ただ、音喜多前都議の場合、当選しても困難が待ち受けている。というのも、今回も推薦を見送ったとはいえ、主要政党はいずれも花川区長の与党である。音喜多前都議は自身の「あたらしい党」から北区議選に駒崎美紀候補を立てているが、彼女が当選しても1人切りでは会派すら組めず、区政運営に困難が伴うことが予想される。音喜多前都議に取っては例え当選しても茨の道が待ち受けている。
 

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 また、北区議選挙も告示され、定数40に対して52人が立候補した。

◼️北区長選・区議選ウォッチ

 その北区長選挙・区議選挙をウォッチするため赤羽駅で下車した。
 すると駅前では公明党の近藤光則区議が街宣中。
 

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 無所属の吉岡慶太市議もいた。
 

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 ポスター掲示板を眺めると他にもいろいろと興味深い候補者がいる。
 プロレスラーの服部健太候補。
 

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 かつて大阪市長選や総選挙(東京12区)にも出馬した「議員報酬ゼロを実現する会」の中村勝候補。
 

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 今いちばん勢いのある政党かもしれないNHKから国民を守る党の光木慎太郎候補もいる。
 

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 区長候補の音喜多駿前都議は、選挙期間中GPSで自身の居場所を常に発信している。それで調べると、彼もこの近くにいるらしい。ようやく町を練り歩いている彼と会うことが出来た。
 

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 オール与党の現職に立ち向かう彼こそは、まさにドン・キホーテとも言える。
 音喜多前都議は駆け足で路地裏に消えて行った。
 

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◼️開票結果

 4月21日(日)投票日を迎えた。
 NHKの出口調査の結果が発表されたが、区長選は僅差で音喜多候補が花川区長をリードしている。これは最後までもつれるだろう。その予感の通り、即日開票された区長選挙では一番最後に当確が出た。

当選65,807花川与惣太 84 無所属・現
  54,072音喜多 駿 35 あたらしい党・新
  22,213川和田 博 68 無所属・新(共産党推薦)

 やはり現職の厚い壁は崩せなかった。
 音喜多候補は敗れたが、彼の率いる「あたらしい党」は統一地方選で公認8名推薦2名が当選。北区議候補の駒崎美紀候補も堂々のトップ当選であった。
 


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当選7,335こまざき美紀 40 あたらしい党・新 
当選6,238やまだ加奈子 47 自民党・現 
当選5,932戸枝 大幸 41 自民党・現 
当選5,541うすい愛子 28 立憲民主党・新  
当選5,528松沢よしはる 46 自民党・新 
当選5.023赤江 なつ 48 立憲民主党・現  
当選4,070青木ひろこ 61 公明党・現  
当選3,660花見たかし 51 立憲民主党・現  
当選3,588山中りえ子 48 都民ファーストの会・新
当選3.585吉田けいすけ 28 日本維新の会・新
当選3,342石川さえだ 34 自民党・現  
当選3,246さがらとしこ 68 共産党・現  
当選3,168いながき浩 57 公明党・現  
当選3,028宇都宮 章 69 共産党・現  
当選2,996古田しのぶ 57 公明党・現  
当選2,990山崎たい子 55 共産党・現  
当選2.900小田切かずのぶ 55 公明党・現 
当選2,749せいの恵子 45 共産党・新  
当選2,736大島みのる 64 公明党・現  
当選2,713宮島おさむ 54 公明党・現  
当選2,688大畑おさむ 65 立憲民主党・現  
当選2,630のの山けん 55 共産党・現  
当選2,617永沼かつゆき 50 自民党・現  
当選2,602坂口かつや 55 公明党・現  
当選2,598ながいともこ 52 共産党・現  
当選2,535福島 宏紀 71 共産党・現  
当選2,531本田 正則 65 共産党・現  
当選2,526大沢たかし 58 自民党・現  
当選2,477すどうあきお 44 公明党・新
当選2,441近藤みつのり 61 公明党・現  
当選2,436福田 光一 39 新社会党・現 
当選2,360みつき慎太郎 26 NHKから国民を守る党・新
当選2,311渡辺かつひろ 54 自民党・現  
当選2,293くまき貞一 44 公明党・新  
当選2,171竹田ひろし 60 自民党・元  
当選2,131榎本はじめ 50 自民党・現  
当選2,121坂場まさたけ 45 自民党・新 
当選2,118佐藤ありつね 69 社民党・現  
当選2,101名取ひであき 71 自民党・現  
当選2,036野口まさと 51 共産党・現  
  1,936前田ゆきお 60 自民党・現  
  1,690片平 浩二 56 自民党・新
  1,380佐竹たかひろ 39 自民党・新  
  1,372宮川よしかず 48 自民党・新
  1,284土屋 和樹 45 自民党・新 
  1,207吉岡けいた 52 無所属・現  
     905中村  勝 68 議員報酬ゼロを実現する会・新
   872服部 健太 30 無所属・新 
   737よしだ 武 48 無所属・新  
   652宮下じろう 56 無所属・新 
   402牛田ひさのぶ 33 幸福実現党・新  
   201ミヤナガアラタ 62 無所属・新

◼️音喜多駿候補の今後

 今後の身の振り方が注目される音喜多駿前都議であるが、かねてから国政進出の噂がある。あくまで噂だが日本維新の会が参院選に音喜多前都議を担ぎ出すとのことである。確かに音喜多前都議は都議時代、維新の会の柳ケ瀬裕文都議と会派「維新・あたらしい・無所属の会」を結成していたことがあり、まったくあり得ない話ではない。維新の会としてもこのところ関西以外では支持が伸び悩んでいることを考えれば、知名度の高い音喜多前都議の擁立は願ったりではないだろうか。
 ただ、音喜多前都議は地域政党「あたらしい党」の代表である。出来たばかりの党の代表が他党から立候補するというのはあまりにもおかしな事である。すると日本維新の会公認で比例区から出るのではなく、あたらしい党公認・日本維新の会推薦で東京選挙区という線が強いのではないだろうか。東京選挙区は定数6議席。前回まで定数5から1つ増えている。自民党の丸川珠代・元オリンピック担当相、公明党の山口那津男代表、共産党の吉良よし子参院議員、そして山本太郎・前自由党共同代表と強敵揃い。ここに立憲民主党が食い込んでくるだろうが、ここにはかつて音喜多前都議と「かがやけTokyo」を組んでいた塩村文夏元都議が予想されている。音喜多前都議は残り1議席を自民党の武見敬三参院議員他と争う形になると見られるが、さすがに当選は厳しいか。
 私は音喜多前都議の狙いは参院選ではなく衆院選ではないかと読んでいる。北区は東京12区に含まれているが、ここは公明党の太田昭宏元代表の地元。対立候補が共産党の池内沙織元代議士であるため、2017年の総選挙では泡沫候補の中村勝候補(議員報酬ゼロを実現する会)が2万票以上獲得して供託金が返還されるという事態が起きた。音喜多前都議が立てば、公明vs共産で行き場の無くなった保守票や無党派層の票を取り込むことが出来るだろう。
 衆参同日選挙の噂も根強い。間もなく、彼の動向も明らかになるだろう。

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