2019年多摩市議会議員選挙レポート
統一地方選後半戦、東京都多摩市では市議会議員選挙が行われた。 都心部の議会議員選挙であれば、例えば杉並区議選では定数48に70人が立候補する激戦となっているのだが、この多摩市は候補者は少なく、定数26に32人が立候補。少数激戦となっていた。
◼️立候補者一覧
立候補者は次の通り。
このうちわずか6名しか落選しないという厳しい戦いだ。
多摩市は昨年の市長選で当選した阿部裕行市長がもともと野党系ということもあり、野党勢力が強い。最大会派は旧民主党や維新の会からなる「改革みらい」と共産党の各6議席。自民党会派「自民党・新生会」は公明党と並んで5議席である。その自民党は公認4名推薦3名の候補者を擁立している。
公明党は現職5名が立候補。
共産党は現職の菅原重美市議が引退して5名の現職が立候補。現有議席より1名減となるが、うち1議席は昨年の補選で得た議席なので、前回当選と同じ人数の擁立になる。
多摩・生活者ネットワーク2名、社民党、日本維新の会といずれも現有議席と同じ人数が立候補。
旧民主党は前回は2議席を獲得している。うち国民民主党の遠藤明子市議が引退。立憲民主党が現職の大野正樹市議に加え白田満元市議を擁立した。
野党系が強いとはいえ、多摩市では旧民主党はあまり勢力が強くないようだ。昨年の区議補選でも立憲民主党は共産党にすら及ばず議席を獲得出来ずに終わった。これは、立憲民主党が都内で議席を獲得出来なかった初の選挙だったらしい。
なお、この時立候補した3人のうち、桐木優市議(写真下/昨年の市議補選時のもの、右は片山さつき地方創生担当相)は今回も立候補しているが、菅原重美市議は引退。春日亀小判候補は立候補しなかった。
多摩市は都議会では稲城市と共に南多摩選挙区となっている。2017年都議選では都民ファーストの会が2議席を独占(斎藤礼伊奈都議は現在は離党)したのだが、今回の市議選には候補を立てていない。また、多摩市の一部を地盤とする長島昭久代議士率いる地域政党「未来日本」も候補者を立てていない。話題の「あたらしい党」も「NHKから国民を守る党」も候補者を立てておらず、各党ともあまり多摩市には力を入れていないようである。
返り咲きを狙う元市議は3人いるが、そのうちの篠塚元候補は元都議でもある。篠塚候補は2009年に多摩市議から都議に転身(民主党公認)。2013年都議選で落選し、今回10年ぶりの市議会復帰を狙っている。
また、 人工知能が日本を変える党(AI党)から伊澤浩美候補が立候補した。AI党は、昨年の市長選に立候補して落選した松田道人氏が設立した政党である。松田氏は昨年の立川市議選でも無所属の乙幡直樹候補(落選)を応援するなどしていたが、今回新党の立ち上げとなった。伊澤浩美候補は猫カフェの経営者だが、猫耳をつけたイラストの女性が、アンドロイドと手を繋ぐポスターである。
◼️多摩市議選ウォッチ
その多摩市議会議員選挙をウォッチした。
聖蹟桜ヶ丘駅前には無所属の遠藤千尋市議の姿があった。
また、別の出口には、自民党推薦の三井健候補の姿も。阿部裕行市長が応援演説に来るとのことであったが、残念ながらその時間まではいられなかった。
多摩センター駅に移動すると、候補者のオンパレード。
公明党の渡辺真二市議。応援には公明党の高木陽介代議士が来ていた。
無所属の菊池克行候補。恥ずかしがり屋なのか、カメラを向けると顔を反らした。
日本維新の会の藤條堯之市議。
そして無所属の篠塚元・元都議。
こちらにも阿部裕行市長が応援演説に来ていた。無党派の市長であるため、「オール与党もオール野党もあり得る」と語っていたが、周辺にいるすべての候補者に声をかけるなどの気配りを見せていた。
◼️開票結果
4月21日の投票日を迎えた。投票率は46.56%で、前回の48.46%は下回った。
開票結果は次の通り。
自民党は公認候補4名が当選したものの、3人の推薦候補は現職の飯島文彦市議1人の当選に留まった。それでも選挙前の5議席を確保している。
公明党と共産党は全員当選で共に5議席。共産党は結果的に1議席減ということになる。
立憲民主党は2候補が共に上位で当選。もう1人立てていても良かったかもしれない。
多摩・生活者ネットワーク、社民党、日本維新の会はいずれも公認候補全員が当選し、選挙前勢力を維持した。
AI党の伊澤浩美候補は勝負にならない惨敗。最下位は井上雄喜候補であった。
加藤松男元市議が返り咲きに失敗し、自民党推薦候補が2名落選したものの、今回の多摩市議選では現職と既成政党の公認候補全員が当選している。そういう意味では波乱の要素が少なかった選挙だったように思われる。
◼️最大会派への駆け引き
むしろ多摩市議会では選挙後の次の争いが激しくなってくるのではないか。今回、自民党(会派「自民党・新生会」)、共産党、公明党がいずれも5議席で並んでいる。また、会派「改革みらい」が6議席を確保しているのだが、どの会派が第1会派になるかの駆け引きが今後盛んになってくるのではないだろうか? 多摩市議会では慣習的に第1会派から議長、第2会派から副議長を出しており、現在の議長は改革みらいの岩永久佳市議、副議長は公明党の三階道雄市議である。今回、篠塚元元市議と齋藤聖哉候補が無所属で当選したが、どの会派に所属するかで多数派が変わってくる。各党・会派の駆け引きが見ものである。
追伸:
自民党・新生会改め「新生会」と改革みらいの間で会派をめぐる激しい駆け引きがあったようである。改革みらいから遠藤千尋市議と藤條尭之市議が新たに新生会に加わり7名で最大会派となる模様である。他の会派は公明党5、共産党5、改革みらい改め「フェアな市政」4(岩永、大野、白田、折戸)、生活者ネット・社民3。篠塚元市議と齋藤・新市議は一人会派となるようだ。
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