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新・NHKから国民を守る党をぶっ壊す!6~新型コロナウィルス編~


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 2020年4月20日、立花孝志・NHKから国民を守る党(N国党)代表の新著「立花孝志かく闘えり」(大洋図書)が発売された。立花代表自身がこれまでの歩みを豊富な写真やデータと共に振り返っており、読み応えがあるだけでなく、資料的にも価値がある一冊となっている。私もこれまで「NHKから国民を守る党をぶっ壊す!」という記事を書いてきたのだが、この本を踏まえてもう一度最初から書き改める必要があるのではないかとまで思っている。
 この本の70ページに私が撮影した写真が使われている。noteの記事を見た出版社の方から使わせてもらえないかの連絡があったので、快く了承した。

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 もっとも連絡を頂いた時点では、立花代表自身の著書であることは知らなかった。結果的に立花代表やN国党の宣伝の一翼を担ってしまったのだとすれば、少々心苦しい。事前に立花代表自身の著作と聞いていたら許可を出すのをためらったかもしれない。
 ちなみに写真を掲載していたのは、こちらの記事「NHKから国民を守る党をぶっ壊す!(前編)」である。
 

■立花孝志代表の新型コロナ解説

 新型コロナウィルスの猛威が世界中を襲い。日本でも4月8日から緊急事態宣言が出される事態となっている。N国党はそんな新型コロナウィルスについてどう受け止めているのだろうか。
 立花代表は3月10日に「コロナウィルスなんて怖くない【数字】で見るコロナN国党首立花孝志の見解」なる動画を公開した。


 立花代表はこの動画の中で、日本では1日に3,770人も死んでいるが、新型コロナウイルスで死んだ人は2ヶ月で全世界で4,012人しかない。だから新型コロナウィルスで死亡するというのは「こじつけに等しい」と言い切っている。新型コロナウィルスで死ぬのは高齢者や疾病のある人だけであり、若者は感染しても治るのだから風邪やインフルエンザと同様の対応で良いというのである。
 さらにマスコミが新型コロナウィルスについて放送するのは「儲かるから」だという。極めつけには、「(コロナウイルスは)ある意味神様が作ったもの。それに対して我々人間が抗うと、本来の人間の活動ができなくなる。」「これで異常にコロナを怖がってね、外出を控えたり、経済活動止めたりする人って、僕はもう『頭悪いんじゃね?』としか思わないんですよ。」「インフルエンザのまずワクチンを接種して、日頃、適度な運動や十分な睡眠を取って、栄養をしっかり摂ればね、こんなのコロナウイルス来ても弾き飛ばすんですよ。健康な人は感染しないし、感染してもちょっと寝たらすぐ治る」などと語っている。
 これらの発言が間違っていたかは、現状を見れば明らかであるのだが、この動画を公開した時点でもかなり偏った解釈であった。こんな動画でさえも17万回以上再生されている。

■N国党版「桜を見る会」

 昨年2019年に世間を騒がせた政界の出来事に「桜を見る会」をめぐる問題があった。この桜を見る会について詳細に述べることは避けるが、世間の批判を集めたこともあり、昨年11月に2020年は開催されないことが決定した。


 そのことを受けて立花孝志代表は、2020年4月11日に、N国党として独自に「桜を見る会」を開催すると発表した。

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 ところが、新型コロナウィルスの影響で会場となる新宿御苑が閉園となったため、桜を見る会は中止となってしまった。4月5日投票の広島県福山市議選に際して、N国党は応援で現地入りした立花代表らが花見を行なっており、新宿御苑が開園していれば桜の会は実施されていたであろう。まったくもって危機意識が感じられない。

■ミラクルミネラルソリューション問題

 N国党の大橋昌信・千葉県柏市議がYouTubeに投稿した動画が問題となった。その動画は現在では削除されているため見ることが出来ないが、「コロナウィルスをぶっ壊す!」というタイトルで、体内に入った新型コロナウィルスをぶっ壊せるというドリンクを紹介していた。
 そのドリンクの名は「ミラクルミネラルソリューション」。亜塩素酸ナトリウム水溶液にクエン酸を加えたものである。大橋市議はそれをリンゴジュースで薄めて飲んでいた。Wikipediaによると、このミラクルミネラルソリューションは「二酸化塩素を産生するので、『多量の経口投与』においては脱水症状による吐き気、嘔吐、下痢、命に関わる低血圧を引き起こしかねない有毒化学物質である」とのこと。


 遠藤信一・栃木県宇都宮市議も、YouTubeでミラクルミネラルソリューションを紹介していた。


 ところが、遠藤市議の動画を観たN国党員の前田みかこ氏がミラクルミネラルソリューションを服用したところ腹痛を訴え、病院へ搬送されたのである。このことを受けて宇都宮市議会の桜井啓一議長が遠藤市議を厳重注意されるという事態となった。


 大橋市議、遠藤市議共に現在では動画を削除し、謝罪をしているが、市議としての資質を疑われる事件である。

◼️立花孝志書類送検

 4月7日、立花孝志代表が書類送検されたというニュースが入って来た。
 


 3月14日、N国党は警視庁から家宅捜索を受け、立花孝志代表も不正競争防止法違反と威力業務妨害の容疑で任意の事情聴取を受けていた。当初立花代表は、「反省してますがゴルフします」と余裕の姿勢を見せていたが、結局書類送検となった。


 立花代表は2019年9月、受信料の契約・収納業務の委託先会社の元社員に専用端末を操作させた上で画面を撮影し、19世帯分の受信料の契約者情報を不正に取得した疑いで不正競争防止法違反の疑いが持たれてる。さらに11月、NHK会長に面会させなければ契約者情報をインターネット上に拡散させると脅すことでNHKの業務を妨害したとして、威力業務妨害の疑いも持たれているのだ。
 立花代表が書類送検されるのは2019年10月に、N国党を離党した二瓶文徳・東京都中央区議に対する恐喝の疑いで書類送検されて以来2度目になる。
 立花代表は「立花孝志は犯罪者 これからもNHKの業務を妨害し続けます(^○^)」という動画を挙げ、完全に開き直っている。


 立花代表はいきなり「すべて事実でーす! 僕がやりました、私がやりました、私は犯罪者でーす! 」と言ってのける。そして、「これからもNHKの業務妨害し続けますからね。私は『NHKの業務を妨害する』っていう公約で、選挙で当選させていただいたわけですから、これからもNHKの業務を妨害しまくりますからね」と述べる。参院選でN国党に投票した有権者は、NHK問題例えばスクランブル放送の実現を期待していたかもしれないが、このような迷惑行為を助長するために投票したわけではないだろう。
 立花代表は「とにかくね、まず起訴してください」とも述べているのだから、ぜひこれは起訴してもらいたいところである。

◼️N国党連戦連敗

 このところのN国党の騒動は選挙の結果にも如実に表れている。
 N国党では選挙を「松・竹・梅」の3つに分類している。「松」の選挙は絶対に当選を目指す選挙で、駅前でのチラシ撒きに加え、各家庭へのポスティングを行なう。逆に「梅」は当選を目指さないため、党としては積極的な運動を行なわない選挙である。「竹」はその中間で、チラシ撒きは行なうがポスティングは行なわない。
 1月26日投票の2つの選挙の場合、茨城県取手市議会議員選挙の岡本介伸候補は「松」、埼玉県吉川市議会議員選挙の鬼沢宏孝候補は「梅」に分類されていた。吉川市議選の落選は織り込み済みで、党幹部は人員を取手市議選に注ぎ込み必勝を狙っていた。ところが、開票の結果はどちらも落選に終わった。

 2月9日投票の群馬県前橋市議補選には前田みかこ候補が立候補。定数3に6人が立候補。8,218票を獲得したものの最下位で落選した。最下位当選は22,115票だった。
 2月16日投票の埼玉県新座市議選には小野澤健至候補が立候補。定数26人に30人が立候補。1,249票を獲得し23位で当選した。
 同日の愛知県弥富市議選には宮部英雄候補が立候補。定数16に19人が立候補するなか、199票で18位で落選。最下位当選は647票であった。
 4月5日投票の広島県福山市議選には、立花代表の恋人・加陽麻里布氏の父・加陽輝実候補が立候補。定数38に46人が立候補。1,398票で42位で落選。最下位当選は2,404票であった。
 同日公示の埼玉県志木市議選には古谷孝候補が立候補。定数14のところ立候補者が14人しかなく、無投票で当選が決まった。
 4月12日投票の坂戸市長選には尾崎全紀候補、坂戸市議選には石川新一郎候補がそれぞれ立候補。2019年の神奈川県海老名市長選&市議選の時同様、市長選は市議選での当選を支援するのが目的でもとより勝ちは目指していなかった。実際市長選の尾崎候補は候補者4人の中、わずか942票しか獲得できず最下位で落選し供託金没収。ところが市議選の石川候補も651票を獲得するも定数20のところ21位で次点に終わったのである。緊急事態宣言下で外出自粛のムードが高まり投票率が大きく下がったことが原因であろう。
 4月19日投票の鹿児島市議選は最勝寺辰也候補が立候補した。定数45に60人が立候補。2,044票で51位で落選。最下位当選は2,472票だった。
 同日の富山県魚津市議選には谷口隆司候補が立候補。定数17に20人が立候補。162票で19位で落選。最下位当選は448票。
 4月26日投票の岡山県倉敷市長選には越智寛之候補が立候補。現職との一騎討ちとなるも、5,227票しか取れず得票率5.3%で供託金没収の惨敗となった。もともと市長選での当選は難しいとはいうものの、一騎討ちでこれだけの得票に留まるというのはかなり厳しい結果である。
 同日の兵庫県丹波篠山市議選には大久保祐太候補が立候補。定数18に23人が立候補。最下位当選が457票のところわずか107票で最下位に沈んだがかろうじて法定得票を上回り供託金は返還された。
 同じく京都府京丹後市議選は尾瀬健一郎候補が立候補。定数20に27人が立候補。最下位当選が929票のところわずか123票で最下位に終わる。こちらは供託金没収の惨敗であった。

 2月の新座市議選での当選を最後に、N国党の候補者は無投票となった志木市議選を除いてすべて落選となっている。福山市議選や鹿児島市議選など必勝を期していた「松」選挙での落選や、供託金を没収されるほどの惨敗も増えている。明らかに2019年に比べてN国党の集票力が減退している。N国党では、公費で賄われるポスターやチラシの印刷を関連会社であるネット選挙株式会社(通称:牧原会社)が引き受けることで収益を挙げている。ところが、供託金没収が相次ぐと自費負担になってしまうため、その算段が成り立たなくなってしまう。供託金の負担も大きく、このままでは今後はN国党は選挙を減らしていくことになるのではないだろうか。

◼️衆院静岡4区補選

 望月義夫元環境相の死去に伴う4月14日公示26日投票の衆議院静岡4区の補欠選挙にもN国党は候補者を擁立した。当初、N国党から立候補する予定であったのは立花孝志代表自身であった。
 しかし立花代表は3月27日になって補選への不出馬を表明。代って名前があがったのは、森友学園事件で懲役5年の実刑判決(上告中)を受けている籠池泰典・元森友学園理事長であった。

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 しかし4月1日になって籠池元理事長の不出馬を発表した。理由は籠池元理事長から「野党統一候補になれないのであれば出ない」との連絡があったからだという。籠池元理事長が立候補を表明した時点で野党側は2017年総選挙で次点であった田中健・元都議への一本化を進めていた。どう考えても籠池元理事長に野党各党が乗るような事態は考えられないのだが、敢えてそのように主張をしたN国党の意図はいったいなんだったのだろうか。
 最終的にN国党は参院選茨城選挙区から立候補したこともある田中健・元江戸川区議を擁立した。野党統一の田中健候補と同姓同名の候補者であった。立花代表は「同姓同名が立候補したら票の動きがどうなるかを見てみたい。実験してみたい。」と述べていたが、同様のケースは過去に何度もあった。同姓同名に限らず、名字や名前が同じ候補者がいて、投票された票が誰の票か特定出来ない場合、按分票となる。つまり、特定出来ない票は、特定出来た票の比率で分配される。例えば不明票が1票で、特定出来た票の割合が8:2だった場合、その1票は0.8票と0.2票として計算される。いずれにせよN国党の田中元区議擁立は、田中元都議の票を減らすことにつながり、単なる迷惑行為でしかない。立花代表は、「多くの同姓同名の方がいらっしゃるので、その方に、住民票と戸籍謄本を送ってもらうだけで日本を変えることができる。とアピールしたいと思っている。」とも語り、今後の選挙では積極的に同姓同名の人物を擁立したい意向を表明した。都知事選においても小池百合子都知事と同姓同名の候補者の擁立を仄めかした。N国党は少しでも話題を作ろうと必死であるようだ。

 最終的に立候補したのは次の4人。

山口 賢三 72 無所属・新
田中  健 42 無所属・新(立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党推薦)
深沢 陽一 43 自民党・新(公明党推薦)
田中  健 54 NHKから国民を守る党・新

 N国党の田中健候補は、立候補受付開始時に届け出をせず敢えて遅らせる手法を取った。そのため、第一報では他の3名の名前しか報道されず、あたかも「田中健」候補は1名しか立候補してない印象を与えるもとなった。その後も、選挙ポスターも貼らず選挙運動を一切行なわなかった。「田中健」と書かれただけの票を多く得ようという作戦であった。
 一方の野党統一の田中健候補は「田中健42才」と年齢を盛んにアピールする作戦を取った。

  N国党の田中候補の唯一の選挙運動としては政見放送があった。衆院選ので政見放送を利用できるのは政党単位であるため、今回政見放送を行なえたのは自民党(深沢候補)とN国党だけであった。
 そのN国党の政見放送がYouTubeにアップされていた。
 


 N国党の政見放送はドラマ仕立てのものであった。驚くべきことに中には田中健候補の姿はおろか、名前さえも一度も登場しないのである。

 開票結果は次の通り。

当選66,881深澤 陽一 43 自民党・新(公明党推薦)
  38,566田中  健 42 無所属・新(立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党推薦)
   1,887山口 賢三 73 無所属・新
   1,747田中  健 54 NHKから国民を守る党・新

 投票率は34.10%と、前回の53.72%を大幅に下回ったが、自民党の深澤陽一候補が圧勝で当選を決めた。野党統一の田中健候補は希望の党公認で立候補した2017年総選挙の得票率33.4%をわずかに上回る35.4%の得票率しか上げられず、野党共闘の効果があったかどうかは微妙なところ。一方のN国党の田中健候補は完全無所属の山口賢三候補をも下回る惨敗に終わっている。どちらのものともわからない不明票は3,708票あったが、うち3,550票が野党統一の田中候補、157票がN国党の田中候補に割り当てられた。結局のところ大勢には影響せず、立花孝志・N国党代表による「実験」は失敗に終わったといえる。

■大橋昌信副党首就任


 N国党もこうした退潮傾向を打開しようとしたのか、4月15日持ち回りの役員会で大橋昌信・柏市議の副党首就任を決定した。従来の副党首であった丸山穂高代議士は「国政」、大橋新副党首は「地方」とそれぞれ分担するという。地方選挙の公認権も立花代表から大橋副党首に委譲された。
 なおN国党の公式ホームページによると、役員は次のようになっている。

・党首/選挙対策委員長/次期選挙戦略本部長 立花孝志(前参院議員)
・副党首 丸山穂高(衆院議員)
・副党首 大橋昌信(柏市議)
・政策調査会長 浜田聡(参院議員)
・幹事長/国会対策委員長 上杉隆

 ただ、この大橋新副党首はこれまでこのレポートでも紹介している通り、相当に問題のある人物である。
 2018年6月の松戸市長選の際にN国党の中村典子候補の応援をしていた立花代表は取材するフリージャーナリストに対し退去を要求した。フリージャーナリストがそれに従わなかったため、大橋昌信・朝霞市議(当時)が引き離そうとして転倒し肋骨を骨折するなどの大怪我をしたのである。


 この事について大橋副党首自身は「立花代表はヤクザ私はチンピラ」と言ってのけた。そして「あんなゴミに情けや優しさは不要。」なのだという。

 
 それ以外にも、大橋副党首は一般人への暴言や個人情報の暴露など様々な問題行動を引き起こしている。
 


 大橋副党首は2019年に埼玉県朝霞市議を辞職して千葉県柏市議選に立候補して当選したが、その理由を聞かれてより報酬が高いからだと答えた。

 大橋副党首は上でも述べたように危険物を平気で服用するような人物でもあり、頭が良いとはとうてい思えない。彼が「『5W1H』を使って円滑なコミュニケーションを図ったり、話の信ぴょう性を見極めましょう説明している動画」を見たが、そこでは「what」を「ウォント」、「how」を「フー」と発音していた。


 N国党が大橋副党首を起用したところで、再び支持を集めるようになるとはとうてい思えない。むしろ今後はより厳しい選挙が続くであろう。立花党首はそうした敗戦の責任を大橋副党首に転嫁しようという魂胆なのかもしれない。

■N国党の正念場

 2019年参院選で1議席を獲得し政党要件を取得した時がN国党にとっての頂点であったことは間違いない。TBSの世論調査でも0.8%の支持を集めていた。だがその後、支持率は下落。2020年4月の最新の世論調査では0.4%である。


 その原因は間違いなく立花孝志代表の迷走ぶりである。それはこれまでこのレポートで紹介してきた通りである。近いうちに行なわれると予想される総選挙にもN国党は候補者を擁立する予定であるが、このままでは議席を獲得するのは難しいだろう。
 このままN国党が総選挙で惨敗し、地方議会でも議席を獲得出来ないとなれば、 N国党が存続していくことは難しくなる。N国党は5億円にも上る借金を抱えているがそれを返金することも不可能となる。さらに、立花孝志代表ら党幹部が起訴される可能性も残っている。N国党の未来は明るいとは言い難い。これからが正念場ではないだろうか。

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