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2018年調布市長選挙・調布市議会議員補欠選挙レポート

 東京都の多摩地域の東にある調布市。7月1日、調布市長選挙・市議会議員補欠選挙が告示された。

◼️調布市長選・市議補選立候補者

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 候補者は次の通り。
 調布市長選挙。

鮎川 有祐 45 無所属・新(自民党支援)
長友 貴樹 65 無所属・現
新井  匠 49 無所属・新

 調布市議会議員補欠選挙。

大野 祐司 56 無所属・新(自民党推薦)
坂内  淳 56 共産党・新

 市長選挙には、現職の長友貴樹市長が5選を目指して立候補した。16年前の2002年長友市長は共産党、社民党、生活者ネットワーク、自由党、新社会党推薦、民主党勝手連支持など野党共闘候補として立候補。4期16年市長を務めた吉尾勝征前市長の多選を批判して市長に当選した。2006年に再選すると、2010年には対立候補が出ず、無投票で3選されている。8年ぶりの選挙となった前回2014年は自民党推薦候補を大差で破って4選された。

当45,822 長友 貴樹 無所属・現
 19,896 大須賀浩裕    無所属・新  

 今回、長友市長の対立候補としては自民党所属だった鮎川有祐元市議会議長が市議を辞職して立候補している。また、第3の候補として、都議選に北多摩3区から無所属で立候補し落選した新井匠候補も立候補している。今回は3候補による激戦となった。
 争点としてはやはり長友市長の多選問題。鮎川候補は「誰がやっても1人で5期20年は長すぎませんか」という言葉を用いているのだが、実はこの言葉は16年前に長友市長自身が用いていたものであるらしい。この点に関しては長友市長も「批判されても仕方ない。(自分自身の)不明を恥じなければならない」と語っている。6月に長友市長と同じく5選を狙った田中大輔・中野区長が落選していることから、果たしてどうなるかが注目される。
 新井候補によると、今回の市長選はいろいろな点で2002年の選挙と似ているらしい。2002年選挙には5選を狙った市長の吉尾勝征候補、元市議(元都議)の片山哲候補、そして当時49歳の長友貴樹候補が立候補したが、今回も5選を狙う現職市長(長友候補)、元市議(鮎川候補)、49歳の新人(新井候補)が立候補している。さらに学歴というのも吉尾候補が早稲田出身、長友候補が慶応出身、片山候補が学習院出身だが、今回も新井候補が早稲田出身、鮎川候補が学習院出身と同じである。これは面白い偶然ではあるが、特に市長vs元市議vs49歳の対戦では、49歳の候補が勝っているだけに新井候補はその再現を狙いたいところである。

 また、定数1の市議補選には、自民党推薦の大野祐司候補と、共産党公認の坂内淳候補が立候補。立憲民主党や都民ファーストの会といった野党が候補者擁立を見送ったことから、自共の一騎打ちとなっている。そもそもこの欠員1議席というのは井樋匡利・前市議が都議選立候補のために辞職してのもの。井樋前市議はその後当選したが、昨年11月に長男が強制わいせつの容疑で逮捕されたため、引責辞任している。

◼️調布市長選・市議補選ウォッチ

 調布市長選・市議補選を見るために何度か調布へ足を運んだ。

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 とある日に国領の駅で下車すると、共産党公認の坂内淳候補が街頭演説の真っ最中であった。

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 応援演説には共産党の宮本徹代議士が立つ。
 

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 市議補選は自民党(推薦)と共産党の一騎討ちである。昨年の総選挙比例区の得票率を見ると、自民党29.25%に対し、共産党は10.59%しかない。しかし、共産党は立憲民主党、生活背ネットワークと共に長友市長を支援している。27.22%を獲得した立憲民主党の票が加わると37.81%となり、自民党と公明党(9.50%)を合わせた得票率38.75%とほぼ拮抗する。 しかももともとこの欠員は共産党の井樋前市議の辞職によるものであるから、共産党としてはどうしても落としたくないだろう。

 市長選の方であるが、調布駅前で第3の候補である新井匠候補を見た。

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 街宣車やポスターには「月が綺麗ですね」と書かれているが、これは夏目漱石の言葉。また、選挙公報には他にも「子供より親が大事と思いたい」と太宰治の言葉も引用している。どうやら文芸的なセンスに溢れている候補者のようだ。候補者自身とも少し話したが、気さくな感じの人であった。
 

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 また、街宣車の上には乗らず、地面に立って話すなど、有権者目線を意識しているようだった。
 

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 その一方で、現職の長友貴樹市長の姿はついに見かけなかった。「長友よしきオンライン」なるサイトを立ち上げてはいたものの、ほとんど更新がない。東松山市長選もそうだが、現職というのは有利に戦っているという余裕からか、SNSへの取り組みに熱心でない。もちろん、選挙戦そのものを行っていないというわけではないのだろうが。
 

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 先月の中野区長選挙で現職の田中大輔区長が負けたというショックはまだ記憶に新しい。田中区長と長友市長は与党系と野党系という違いこそあるが、5期目を目指しているという点で共通点がある。田中区長は東中野の桜並木を伐採し中野サンプラザの再開発を主張して破れたが、長友市長も調布駅前広場の再開発で樹木が伐採されたことへの批判がある。
 果たして、調布でも中野に続く波乱があるのだろうか。

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◼️開票結果

 調布市長選と調布市議会議員補欠選挙は7月8日に投票があり、即日開票された。投票率は36.65%。前回の37.12%をわずかに下回った。

 開票結果は…
 市議補選。

当45,177 大野 祐司 無所属・新(自民党推薦)
 21,862 坂内  淳 共産党・新

 市議補選は自民党推薦の大野候補が共産党の坂内候補に大差をつけ当選した。共産党は都議の議席に続いて市議の議席も失ったことになる。
 

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 市長選。

当38,554 長友 貴樹 無所属・現
  24,049 鮎川 有祐 無所属・新
    6,145 新井  匠 無所属・新

 市長選は、多選批判をものともせず、長友貴樹市長が5選を決めた。前回の市長選で長友市長は得票率69.7%、自民党推薦の対立候補にダブルスコア以上の大差をつけて圧勝していた。ところが今回は、得票率で56.1%。次点の鮎川候補には1万5千票差にまで迫られている。鮎川候補は元々自民党で市議会議長も務めていたが、今回は無党派であることを強調していた。自民党の伊藤達也代議士や市議が個人的に支援するに留まっており、もっと自民党が前面に出ていれば結果は違っていたのかもしれない。あるいは立憲民主党や共産党が多選批判を訴えて独自候補を出していたとすれば、長友市長は落選しただろう。実は長友市長の当選は薄氷を踏むようなものだったのである。5期目を目指した中野区の田中大輔区長が落選したように、多選というのは何だかんだで現職首長にとっての問題点となり得るということのようである。
 また、第3の候補である新井候補は惨敗とはいうものの、都議選の調布市内での得票が2,725票だったことを考えるとだいぶ票を伸ばしている。これらの支持を無駄にしないためにも、新井候補には来年の市議会議員選挙に出馬してもらいたいと思う。
 いずれにせよ、当選した長友市長には、よりよい調布を作っていってもらいたい。

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