2021年千葉県知事選挙レポート
3月4日、千葉県知事選挙が告示された。
3期12年務めた現職の森田健作(本名・鈴木栄治)知事(71)が不出馬を表明。久しぶりに新人同士による争いとなった。
人気の高い森田知事が勇退ということで、これはチャンスと感じたのか、過去最多の8人の候補者が乱立した。
立候補したのは次の通り。
熊谷 俊人 43 無所属・新(立憲民主党、維新の会、国民民主党、社民党支援)
後藤 輝樹 38 ベーシックインカム党・新
加藤健一郎 71 無所属・新
金光 理恵 57 無所属・新(共産党推薦)
皆川真一郎 66 無所属・新
関 政幸 41 無所属・新(自民党推薦)
平塚 正幸 39 国民主権党・新
河合 悠祐 40 千葉県全体を夢と魔法の国にする党・新
本命は前千葉市長の熊谷俊人候補。野党各党の地方組織が支援するほか、自民党と公明党の一部も応援している。
自民党は関政幸・元県議を擁立。森田知事も支援しており、事実上の後継候補となった。自民党は当初、鈴木大地・前スポーツ庁長官の擁立を目指していたが、森喜朗・五輪組織委員会会長(当時)が、「初代スポーツ庁長官になった評価が危うくなる」などを理由に出馬に反対したこともあり、結局固辞している。
また、共産党は党職員の金子理恵候補となった。
皆川真一郎候補は2017年総選挙で千葉12区に社民党から立候補したことがあるが、今回は無所属での立候補となる。
今回の千葉県知事選は上記の4名を軸に展開しそう。
その一方で、お騒がせ人物が多く立候補してきたのも、今回の県知事選の特徴である。
例えば、後藤輝樹候補。この人は過去2回東京都知事選挙に立候補し、衝撃的な政見放送で話題となった。過去には「国民ファーストの会」や「ヒューマントラスト党」で立候補したこともあるが、今回は「ベーシックインカム党」名義のようだ。いったいどのような政見放送を見せてくれるのだろうか…。
都知事選で「コロナは風邪」と主張していた国民主権党の平塚正幸候補も立候補。おそらく同様の主張を今回も繰り広げると思われるが、彼らはマスクをしないで街宣を行なうので、会った時には注意が必要だ。
注目のニューフェースは「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」の河合悠祐候補。
白塗りのピエロメイクで見るからにヤバい感じ。インタビュー記事を読むと昨年の都知事選での立花孝志氏、後藤輝樹氏、スーパークレイジー君らの活動を見て、「こんな自由な表現をしてもいいものかと」「自分も知名度を上げたい思いで」立候補したのだという。Youtuberらが知名度を挙げるために選挙を利用するというのは、絶対に良くない傾向だ。
当初はここに立花孝志「NHK受信料を支払わない方法を教える党(NHK党)」党首も立候補の意向を示していた。
しかも新たに「NHKと高瀬順久裁判長をぶっ壊す!党」を立ち上げるというのである。先日、立花党首はNHK受信料の未払いをめぐる裁判で敗訴。裁判所とNHKの癒着があったと主張していた。
結局、立花党首の立候補はなかった。立花党首には現在公職選挙法違反の疑いが浮上しており、選挙どころではないのかもしれない。
同じく、立候補を表明していた山口節生先生も立候補しなかった。今回もどうせ、「出る出る詐欺」になるのだろうとは思っていたので、今更驚きはしない。
投票日は3月21日となる。
■政見放送
世論調査によると千葉県知事選では野党各党が推す熊谷俊人・元千葉市長が大きくリードしており、自民党推薦の関政幸・元県議、共産党の推す金光理恵候補は厳しい情勢のようであった。
そのため、早くも4位争いが焦点となっているとの話もあった。
私が4位に入ると予想していたのは、皆川真一郎候補。
かつて社民党から総選挙に出たこともある。(今回、社民党は熊谷候補を推薦。)元県立高校校長ということもあり、政見放送では教育問題について熱く語っていた。ただ、教育問題以外についてはまったく言及していなかったのが気になるところ。
ちなみに選挙公報では、独自の地域通貨「房(BOU)」の発行ということも主張している。
私が最もカオス度合いが高いと感じたのは「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」の河合悠祐候補。
彼の政策は「千葉県全体をディズニーランドにする」というもの。他にも千葉にシンボルマークとなるタワーを建てる(名前は「東京ディズニーランド」のように「東京タワー」とする)、「ゴミ」という言い方をやめて「星のかけら」とするなど…。平塚正幸候補の批判も織り混ぜていたが、やはり他候補よりも少しでも上位に就こうという意識があるのだろう。
その平塚正幸・国民主権党代表の主張は、都知事選での「コロナはただの風邪」から「ワクチンは危険」という風にバージョンアップしていた。「(PCR)陽性者の9割以上が無症状なのです。つまりPCR陽性者は健康体なので病人ではありません。」「無症状者から他者にウィルス感染させることはありません。」「マスクは感染症対策にならないどころかあなたを病気にします。」
新型コロナウィルスについて十分な知識があるとは言えない私でさえ、いかに彼の主張がおかしいかがすぐわかる。河合候補が政見放送で「僕らただの風邪をひくのも嫌です」と語っていたが、まさにそれである。
千葉県知事選には本物の医者も立候補している。加藤健一郎候補である。
筑波大駒場、東工大理学部、浜松医大医学部卒業、エール大大学院修了というエリートのようであるが、主張はなかなかのカオス。彼は「千葉のバイデン」を目指し、2人の若い知事候補(熊谷候補、関候補?)を副知事として起用し、任期中の2年間を海外留学や海外視察をしてきてもらうのだそうだ。また、「サイバー、電磁波」がどうのと語り、「集団ストーカー事件防止条例」を制定し特定のカルト教団や労働組合の支配から千葉県を守ると主張している。いわゆる「電波系」の香りがぷんぷん。
そして遂には「私の現在の夢は千葉県知事に当選して小池百合子氏と結婚することです。」と締め括った。首都圏知事会議の際に小池都知事にプロポーズするらしい。
プロポーズといえば、後藤輝樹候補。
経歴放送に「彼女との馴れ初めは昨年の都知事選挙」とあったかと思うと、「ちなつさん大好きです。僕はあなたが大好きです。愛してます。」と語り出す。最後は「ちなつさん俺と結婚してください。これまでもこれからも変わらぬ愛を誓います。俺と一生一緒にいてください。」と彼女にプロポーズした。
後藤候補は内容については何も知らない彼女と政見放送を見たというが、その答えがどうだったのかはまだ明らかにしていない。それにしても、政見放送を思い切りプライベートなことに利用するというのはいかがなものだろうか…。
カオスといえば、昨年の東京都知事選挙の方が上だったのかもしれない。しかし、千葉県知事選は候補者の数が少ないため、カオス度合いが一層深くく思える。有権者の方々にはくれぐれもよく考えて1票を投じてもらいたい。間違っても面白いからという理由で投票などしないで欲しい。
■開票結果
注目の千葉県知事選挙が3月21日投開票された。
開票結果は次のようになった。
当選1,409,496(70.5%)熊谷 俊人 43 無所属・新(立憲民主党、維新の会、国民民主党、社民党支援)
384,723(19.2%)関 政幸 41 無所属・新(自民党推薦)
122,932( 6.1%)金光 理恵 57 無所属・新(共産党推薦)
20,256( 1.0%)皆川真一郎 66 無所属・新
19,372( 1.0%)平塚 正幸 39 国民主権党・新
15,986( 0.8%)加藤健一郎 71 無所属・新
15,166( 0.8%)河合 悠祐 40 千葉県全体を夢と魔法の国にする党・新
12,150( 0.6%)後藤 輝樹 38 ベーシックインカム党・新
野党が実質支援する熊谷俊人候補が2位以下に4倍以上の差をつけて圧勝した。20時の投票締め切りと同時に当確が出るという、いわゆる“ゼロ打ち”の状況であった。
対立候補とみられた自民党推薦の関政幸候補議は惨敗もいいところ。公明党が推薦していないとはいえ、森田健作・知事の支持を受けてもこの結果はかなり痛い。公明党支持者の票の多くや自民党支持者の約6割の票が熊谷候補に流れたとの話である。
共産党推薦の金光理恵候補は、供託金没収となった。参院選千葉選挙区で共産党候補は約35万票を獲得しているが、やはりかなりの票が熊谷候補に流れたようである。
熊谷候補は支援する各党の票だけでなく、他候補を支援する政党の票も幅広く集めたことが圧勝につながったのだろう。
注目の4位には皆川真一郎候補が入った。元県立高校教員ということもあり、教え子に知名度が高いこともあったのかもしれない。
5位は「ワクチンは危険」の平塚正幸候補。間違っているとはいえ、極端な主張にはある程度の支持が集まるということの証左である。もっとも、NHKから国民を守る党公認で出馬した2019年参院選の89,941票を大きく下回っている。
6位に小池百合子都知事と結婚したい加藤健一郎候補、7位にピエロメイクの河合悠祐候補。
後藤輝樹候補は出口調査で4位に入っていたので期待していたが、結果的に最下位に終わった。
今年は総選挙が予定されている。この千葉県知事選の結果をどう受け止めればよいのだろうか。確かに自民党候補は惨敗したが、実際には自民党や公明党支持者の多くが当選した熊谷候補を支持していた。実際は与野党相乗りに近く、単純に野党が勝ったというわけではない。むしろ、与党の足並みの乱れが気がかりだ。自民党の石井準一参院議員が熊谷候補を支援していたこともあり、そのあたりのしこりが残らないか…。
ただ、今回の千葉県知事選、投票率は38.99%となり、前回の31.18%を上回った。その要因の1つは泡沫候補が乱立し、選挙が盛り上がったということであろう。必ずしも良いこととは言いにくい。泡沫候補たちがいずれも2万票に届かない惨敗に終わったのは、千葉県民のせめてもの良識の現れだったのかもしれない。
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