体操ザムライ 4話 感想

 体操ザムライの4話、『ザムライ娘。』がとても良い回だったので書きたくなった。書いた。

 一応だけど4話までのネタバレがある(というか全部ネタバレな)ので、まだ見てない人は気を付けてください。


◆◆◆

 そういえば今回のサブタイってモーニング娘。を意識しているよねと思っていつから活動してるか調べたら1997年からだった。なるほどねって感じ。


◆バルカン半島

 4話は食事のシーンから始まるが、当然これを作ったのは玲だ。小4にして家事の大半をこなしていて、一話から一貫して『しっかりしている子』として描かれている。4話はこれが回収されたりもする回。

 レオはバイトに向かう途中、偶然にも玲を見かける。玲は男子4人に囲まれ、サムライコールをされていた。小学生特有のからかいだが、実態としてはいじめに近い。

 このシーンは3話にもあった。サムライコールをされながら、無視をするように歩き続ける玲。それを見たレオは、バイト先に戻ってから褐色ギャル先輩に「あれはなんだったでござる?」と聞いた。応えて曰く、「そーゆーの、マジバルカン半島だから」と。

 バルカン半島。何かしらのギャル語という可能性もあるかもと調べたが、それっぽいものは出てこなかった。答えは4話で示された。

 4話で、この褐色ギャル先輩が玲ちゃんの宿題を見ていたことが分かる。つまりこの人は勉強ができる人であり、教養がある人だ。だからここで言う『バルカン半島』は、単純に火薬庫という意味で捉えてよさそうだ。

 実際、この話題は火薬庫であった。


 4話では、玲がサムライコールされているところにレオが介入する。玲は咄嗟にレオを連れてその場を去る。

「今のなに?」
「トン、でござるか?」(手刀のポーズ)
「なんであんなことしたの」
「レイチェル、楽しくない顔してたでござる」
「ぅ……してないからそんなの」(顔を逸らす)
「あれはいつもでござるk」
「違うから!今見たことお父さんたちに言わないでよ!?トンもダメ。学校の人にも近付かないで!言う事聞かなかったら絶交だからね?」

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▲ 顔を逸らしたカット。かわいい。

 とまあ、玲はレオに口止めをする。介入されてどう思ったのかはともかく、他の誰よりも父さんに心配させたくないのだろうということは伝わる。

 レオはこの後、褐色ギャル先輩に相談し一つの方法を思いつくのだが……


◆墓参り

 レオが小学校に潜入し、こっそり玲を観察しているシーン。どう考えても事案なのはさておき、やはり玲は学校でもサムライの話でいじられ、あまり良い顔はしていなかった。

 学校帰り、玲は墓地に寄った。レオがいることも玲は気が付いていたし、呼び寄せた上で玲は母にレオを紹介した。

 それは、玲の母の墓だった。

「レイチェルの母上は、大女優だったでござるな」
「うん!でもそれだけじゃなくてね、普段も完璧だったんだよ!テキパキなんでもやっちゃって、ご飯も美味しくて、お父さんのこともたくさん応援して。いつも笑ってて……」
「母上、レイチェルみたいでござるな。……ぁ……どうしたの?」
「……、全然だよ!私も頑張らないとね!お母さんみたいに。」

 玲は母の話を、とても嬉しそうに、楽しそうに、話し始めた。それでも最後には、もういないことを噛みしめるように、悲しそうな顔になる。

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 玲は、しっかりした子を演じているのではなく、元々しっかりした子だったのだと思う。そうでもなければ、家庭を支えようだなんて思わない。しっかりした子だった大女優の娘は、亡き母の代わりを演じようとした。

 悲しい顔なんてしていられない。いつだって、強がって、前向いて、明るく振る舞わないといけない。小4の少女に背負わせるには重すぎる話だ。

「レイチェル……。……拙者、レイチェルと出会ってから毎日楽しいのでござる。家に置いてくれて、一緒にいてくれて、まことにありがたき幸せでござる。拙者、今こそご恩に報いるのでござる。」
「急にどうしたの?……もうおばあちゃんのお店行こっ」

 レオは決意する。玲はもう平気だと強がるように、明るく振る舞った。


◆授業参観

 チャラ男がバーのゴミ箱から授業参観のプリントを見つける。

 ところで、レオは端的に言えばバカだ。空気が読めないタイプのバカだ。あまり人を悪く言うべきではないが、レオはバカなのだ。だから、ゴミ箱で見つけたプリントを本人に届けようとする。止めてくれてよかった。

 授業参観の回想。それはきっと玲にも婆ちゃんにも苦い思い出で、だから玲は伝えずにプリントを捨てることにした。

「優しい子だよ。でも気を回し過ぎる」


 やってきた授業参観の日。何故かいるレオ。それを見てちょっとだけ困惑し恥ずかしそうにする玲。授業参観が始まり……

 おいレオ、それはやめろ。頼む、やめてくれ。ああ……うわああ……

 共感性羞恥で悶えそうになる。死にたい。明日からあだ名がレイチェルになってまう、もう学校行かれへん……。そしてレオはこれがいじめそのものだと理解していない。小学生レベルの精神年齢って、あまりに残酷すぎる。

 授業参観終了後、レオは男子数名を連れて玲の下へと現れ……

「この、バカ忍者!!!」

 この一言から始まる50秒弱の長台詞。燻っていた火薬庫は爆発し、ずっと抱えてきた想いも、鬱憤も、ようやく全部吐き出せた。それに対し、レオは土下座をする。男子も合わせて土下座をし、ちゃんと謝った。

 ともあれ、目の前で急に土下座されても反応に困るもので。ひとまず、ここで玲はとりあえずその場から逃げ出した。

 レオのやったことなんて、空気も読めずに暴走し、玲の感情を爆発させただけだったけど。

「あ~あ、私レオのせいでキレキャラになっちゃったなー。言いたいこと全部言っちゃったしなー。困ったなあ~」
「レイチェル、許してくれるのでござるか?」
「あ~あ、明日ど~んな顔して学校行ったらいいのかなー。ど~~しよー」
「ごめんでござるよー」
「ほんとに思ってんの?あ、言っておくけど。レイチェルって呼んでいいのレオだけだから」

 まあ、玲にとって結果自体はそんなに悪いものでもなかったのだろう。そうでもなきゃ、こんな冗談めかした言い方もしないし、それに何よりも。


◆朝の一幕

 玲が登校する。男子たちは気まずく、いつものように声をかけられない。サムライなんてもう軽々しく口にできないし、ただそこに現れた重たい空気に口を噤むことしかできなかった。

 でも、これはきっと、沈黙に耐えられなかったからじゃなくって。すべて吐き出して、これからまた始まる新しい日々の、一日目の始まりに。そこにいる男子の、昨日の土下座に対する、応えとして。

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◆おわり

 結局のところ、レオがやったことが正しかったかどうかなんて分からないけど、ラストのシーンだけですべてが救われていて。玲が学校でもちょっとだけ笑顔になれて、サムライの娘ではなく荒垣玲としての日々が始まって。

 あ~あ、ラストの一言は反則すぎるでしょ。元々、今期のアニメでも群を抜いてかわいいとは思っていたけど、これはもう。やばい。素敵すぎる。この子には幸せになってほしいし、ずっと笑顔でいてほしい。

 以上。体操ザムライ、今のところ全然話題に上がらないけどこれから更に面白くなって話題になってほしいな。ダークホースだと思っているけど知名度低いまま終わっちゃうのは勿体ないし、何か起こってくれ。頼む。

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