JRより高い鉄道株の今後を考える
相次ぐJRの株式分割
先日の第3四半期決算発表のタイミングで、JR東日本が1:3の株式分割を発表するサプライズがありました。現在の株価は約9000円ですから、分割後は1株3000円程度になるものと思われます。
それ以前の2023年10月に、JR西日本も1:2の株式分割を発表。更にその前の2023年8月には、JR東海も1:5の株式分割を発表。
JR東海は10月1日に実施されて、1株約3500円ほどに。
JR西日本は4月1日に実施予定で、1株約3000円ほどになる見込みです。
JR西日本は半年ほどかなり長い予告期間を置いたことになりますが、JR東日本は実施2か月前の発表でJR西日本に合わせた形となっています。
上場JRでは他にJR九州がありますが、現在株価が約3300円ほどなので、4月からはJR4社の株価が約3000円台で横並びになることがわかります。
JRより高い株価の鉄道会社
JRの株価が横並びになると、他の私鉄にとっては参考指標となることでしょう。JRよりも株価が高ければ、感覚的にJRよりも優位性を演出できますし、逆に低ければ割安感を演出できるでしょう。
このままの状況だった場合、JRよりも株価が高くなる会社はどんな私鉄があるでしょうか?2/12時点で株価3000円以上の私鉄8社をピックアップしてみましょう。
分割しそうな会社は?
YouTubeチャンネルもよろしくお願いいたします
×京成…慌てる必要は無い
上から見てみましょう。
現在最も高い株価なのは京成です。JR各社の分割後も同じ水準だった場合、JRの2倍以上の株価と見られることとなります。
京成はもちろん成田空港輸送・特急スカイライナーを大きな収入源としており、インバウンド需要が復活した今となってはいつでも大混雑している印象の会社です。
株価も直近1年で大きく上昇し、コロナ禍以前の倍近い水準まで上昇。
営業利益も10%、純利益率も16%と、鉄道会社としては比較的高い水準を保っています。特に純利益率は、JR東日本・JR西日本・JR九州よりも勝っています。
このような状況を考えると、現在の活況が続くならば、京成は無理に株式分割を急ぐ理由は無いと感じます。
×京福…流動性は必要か?
株価の高さで並べた場合、2番目に名前を連ねるのは京福電鉄です。親会社である京阪HDよりも高い株価となっています。
京福は東証スタンダード上場ということもあり、市場に流通している株式がかなり少ないです。株価の高さの理由はそこにあると言えるでしょう。
では分割して活発な売買を誘うべきかと言えば、そうでも無いでしょう。
京福は京都を中心に路線網を展開していますから、強いブランド力を持っていると言えます。ブランドにとって安売りはご法度であり、わざわざ株価を下げるような行為をする必要は無いでしょう。
したがって、京福についても株式分割を急ぐ理由は無いことになります。
◯近鉄GHD…3分割ぐらいやるかも?
次に来る近鉄は、ちょっと事情が違います。売上こそJR九州・京成よりも大きいのですが、2Q決算時点での営業利益率は5.36%、純利益率は2.97%と、これまで話してきた会社に比べると見劣りしています。
にもかかわらず、株価だけはJRより約1.5倍であることを考えると、相対的に過大評価気味に見えることでしょう。現在株価が約4400円ぐらいですから、2分割で約2200円、3分割で約1400円ぐらいとなります。
近鉄としては、もっと売買してもらって株価を引き上げてほしいところでしょうが、2分割だと何かの拍子にすぐJRを追い越してしまうかもしれません。現状の利益水準から考えると、3分割してJRの半額水準で見られるのが適正な株価水準に感じます。
実際にそれを意識するのはJRの分割後でしょうから、1四半期後の7月1、もしくは2四半期後の10月1日あたりで株式分割を実施してくる可能性はあるかもしれませんね。
▲阪急阪神…基本的には無し
近鉄と比べれば、比較的余裕のある阪急阪神です。売上規模こそ近鉄に劣りますが、利益面では近鉄を上回っており、営業利益率12.29%、純利益率8.53%です。
実体的には、JRと比べると2分割してちょうど良いぐらいです。しかし阪急阪神、特に阪急側はブランド意識の非常に高い会社ですから、現在のJRよりもやや高い位の株価はちょうどいい水準でもあります。
ブランド力を重視するならそのまま、実態感を重視するならば2分割の可能性もあるかと思います。しかし、阪急阪神HDの成り立ちがそもそも村上ファンドからの防衛だった歴史を考えると、わざわざ買収をされやすくなるような株式分割をするとは考えにくいでしょう。
村上ファンドの是非はともかく、特に阪神側経営陣にとってはトラウマになっているはずです。
◯京王…現状維持する理由も無い
関西の企業が続いてましたが、久々に関東の会社です。営業利益率は13.43%、純利益率は8.62%。JR東日本、JR西日本とほぼ同水準ですが、純利益率ではJR東海、JR九州に劣っています。
また、売上・利益面ではゼロが1桁違いますから、そう考えると株価だけ高いのはあまり見栄えの良い物ではありません。京成とは違って空港輸送のような特徴的・独占的な需要があるわけでもないですし、全線にわたって並行ライバル他社が存在しています。
このような状況を考えると、現状維持よりは2~3分割程度する可能性の方が高いような気がします。
全線の大半が東京都ということもあり、安定性は抜群です。
△富士急…私鉄の星
富士急は、営業利益率18.46%、純利益率12.05%と高く、JR東海に次ぐ利益水準です。これは大手私鉄よりも上回っており、前述の京福とほぼ同水準の高さです。
利益水準ではバッチリな会社ですが、売上規模が小さいのは注意です。JRと比べるとゼロが2つ足りないですね。
そう考えると、やはり2~3分割してもおかしくはない気がしますが、今後富士登山鉄道計画に現実性が帯びてくれば、あまり株主が分散することは好ましくないことでしょう。その話の決着がつくまでは、あまり変な動きはやらないかもしれません。
△東武…十分JRなみ
JR九州よりも大きい売上規模で、営業利益も上回っています。純利益率ではやや劣っていますが、十分JRと肩を並べられる企業と言えるでしょう。
そういう意味では、無理に株式分割をする必要は無さそうです。
やってもJRよりも割安感を演出する、2分割程度ではないでしょうか。
◯京阪…京福との差別化で
売上・利益規模は東武の半分ほどですが、利益率ではやや東武を上回っています。売上規模はJR九州よりやや劣る水準なので、2~3分割して割安感を演出するのは1つの手でしょう。
グループ傘下に前述の京福があるので、差別化という意味でもこちらで分割をやるのはありだと思います。
最後に
JRの相次ぐ株式分割を踏まえて、他の鉄道株の方の予測を立ててみましたが、結局のところ本当の意味で株価を左右するのは各社の業績です。
今はどこの鉄道会社もコロナ禍からの復活で前年比では良い数字になっていますが、次年度はリセットされ、その反発からの比較となります。中途半端な上昇では相場から見放されてしまうことでしょう。
継続して利益を上げられるか、今後も上昇していく経営環境にあるのかなど、総合的な見立てが必要です。また、もっと良い状況にある別業種の企業もたくさんあるでしょうから、比較検討していくことが必要です。
株は奥が深いですねえ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?