海外SF短編小説 入門編 最初の5冊、次の10冊、古典の5冊
●まとめ
・SF短編小説のいろんなランキングをまとめたよ。
・どのランキングにも出る作品を一冊本ベースでおすすめします。
・僕もこれから読んでくので内容は詳しく知らん。そこんとこよろしく。
●はじめに
●きっかけ
ゲンロン・カフェの「SF創作講座」ってのに注目して応援webラジオとかやってます。講座では短編小説を書くことがメインなんだけど、SFの短編をそんなに知らないのでちょっと色々読みたくなりリストを作ってみた。
●方法
4つのランキング=①SFマガジンオールタイムベスト 2014 ②星雲賞 ③ローカスオンライン ④Sci-Fi Lists の4つを引っ張ってきて、2つ以上に登場するのをリストアップ。上位は個別のリストも。それに日本語版での収録単行本を探して作ったのが以下のリスト。グーグルドライブで別サイトに飛びます。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1PsK0-fijmLZ7iTe5LmRplgYZ4m_e37xsgDKQuAOh7oA/edit#gid=190252425
●おすすめ基準
ランキングに多く出てくるもの+それらを横断的に収録してるアンソロジー。なるべく少ない冊数でなるべく多くの名作に触れられるように、がコンセプトだけどぶっちゃけ僕の独断と偏見に満ちてるので、自分で探したい人はリストを活用してね。
●最初の5冊
1 『あなたの人生の物語』テッド・チャン
リストを見ると分かるんだけど、4つのランキングで全てに取り上げられてるのは3作。全部テッド・チャン。無敵か。短編集はこの1冊しかないんだけど、中に入ってる作品はほぼどれかしらのランキングに登場。というわけで問答無用のマストです。映画も出来たのよね。僕はバビロンの塔が好きだなぁ。
2 『20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女』
70年代はSFの拡張期でバリエーション豊かな作品が続々。どれも横断ランクインの、ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「接続された女」、フリッツ・ライバー「あの飛行船をつかまえろ」 が入ってる作品集。他にもル=グウィン、ベイリー、ヴァーリイと大御所の作品がどっさり。
3 『祈りの海』グレッグ・イーガン
ハードSFの大御所、イーガンの短編集。楽しい。分からない。楽しい。一緒に目を回そう。「祈りの海」「貸金庫」「ぼくになることを」が人気。らしい。気に入りましたら別短編集の『しあわせの理由』も人気作が多い。
4 『ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選』
タイトル好きだなあ。F・M・バズビイ「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」 、ボブ・ショウ「去りにし日々の光」が名作ランキング。テッド・チャン「商人と錬金術師の門」も入ってるので、これでテッド・チャンについて大きな顔も出来るぞ。「SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー」シリーズとしてほかに2冊出ており、そっちも名作が入ってる様子。
5 『ドリフトグラス』サミュエル・R・ディレイニー
これはロバが好きなやつなので恣意的です。中編サイズだけど「エンパイア・スター」はSFオールタイム・ベストに入ってますね。「スター・ピット」「然り、そしてゴモラ」「時は準宝石の螺旋のように」の横断ランクイン作品が収録。本の装丁が白い。格好いい。学校や職場で見せびらかそう。あら不思議、真っ黒い装丁のダールグレンも欲しくなる。あら不思議、ダールグレンラジオも聴きたくなる。
●次の10冊
最初に言ったようにロバ自身全然読んでないので、おすすめできるのかどうなのかぁゃしぃところですが、引き続き有名どころ、ランキング横断的な作品をバシバシ挙げてきます。
6 『アルファ・ラルファ大通り 人類補完機構全短篇』コードウェイナー・スミス
ランキングにむちゃくちゃ良く登場するんだけど、これまで全然知らなかった。なんかエヴァっぽいタイトルが見えますね、くらいのイメージしかない。『スキャナーには生きがいはない』という作品も大人気なので気に入ればそっちも良いのでは。
7 『80年代SF傑作選〈上〉』
傑作ってついてるんだから傑作に違いない。ランキングのやつでは、エフィンジャー「シュレーディンガーの子猫」ゼラズニイ「北斎の富嶽二十四景」 ウォルドロップ「みっともないニワトリ」の三作が入ってる。読んでないから何とも言えないんだけど良さそうな予感。
8 『80年代SF傑作選<下>』
傑作ってついてるんだから(略)無茶苦茶に評価が高い(らしい)グレッグ・ベア「鏖戦」入り。超絶難解らしいので、イーガンと合わせて眩暈を味わいましょう。バトラー「血をわけた子供」もランキングより。
9 『たったひとつの冴えたやりかた』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
名前聞いたことくらいあるでしょ! 超有名…と思いきや、海外ではそこまでではないらしい。同じ作者の『愛はさだめ、さだめは死』や『故郷から10000光年』に入ってる作品群の方が人気らしいぞ。しかしこの作者の作品タイトルの日本語訳、むちゃくちゃ良いのばかりなんですよね、「ビームしておくれ、ふるさとへ」「あまたの星、宝冠のごとく」「輝くもの天より堕ち」はぁ、シビれる。
10 『死の鳥』ハーラン・エリスン
エリスンっていったら、みんななんとなく知ってるけど読んだことない本ナンバーワンであるところの『世界の中心で愛を叫んだけもの』の作者ですね。こっちの作品集の方がランキング横断作品である「死の鳥」「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」「ジェフティは5つ」「『悔い改めよ、ハーレクィン!』とチクタクマンはいった」と4つも入っててお得感ありますね。装丁むっちゃ格好いい。
11 『ブルー・シャンペン』ジョン・ヴァーリイ
PRESS ENTER■ って作品が非常に有名だそう。「なぜか全裸で暮らし始める男女が脅威に襲われる」というあらすじらしいが……表題作「ブルー・シャンペン」も人気作。『残像』って短編集に入ってる「空襲」も人気らしいので、そちらもどうぞ。
12 『クローム襲撃』ウィリアム・ギブスン
内容良く知らないけど、あの『ニューロマンサー』のギブスンの短編集なんだから面白くないわけないでしょ。やっぱりネットの海にダイブ系の作品らしいのと、あと北野武とキアヌリーブスが共演した映画『JM』の原作「記憶屋ジョニィ」も入ってるのでこれを読んで映画も見よう。
13 『ディック傑作集〈1〉パーキー・パットの日々』
フィリップ・K・ディックの短編です。他に何か言う必要ありますか。読みましょう。「にせもの」「変種第二号」って作品がランキング作品だけど、他にも『マイノリティ・リポート』とかグッド短編がいくらでもあるので好きなやつを読むと良い。
14 『影が行く―ホラーSF傑作選』
キャンベル「影が行く」ベスター「ごきげん目盛り」が名作だそうです。ホラーとSF、という面白い切り口があるのも良さそう。
15『SFマガジン700【海外篇】』
マーティン「夜明けとともに霧は沈み」収録。そしてテッド・チャン「息吹」があるのでこれであなたもチャンマスター。他の書き手もティプトリージュニア、スターリング、ル=グウィン、イーガン、ウィリスと大御所ぞろいだ。きっとお気に入りが見つかるでしょう
●古典の5冊
最後に古典というか、古典作家たちの有名短編集をご紹介。大御所。
16 『90億の神の御名』アーサー・C・クラーク
「90億の神の御名」「星」「前哨」がランキング作品。ぶっちゃけあとは良く知らない。
17 『われはロボット』アイザック・アシモフ
かの有名な「ロボット三原則」が登場する、ロボット作品の短編集。ロボットについての話をここで一度書き切ってるので、後の作品を考えるのにもとっても重要な作品かと。連作長編っぽくも読めて楽しい一冊。
18 『火星年代記』レイ・ブラッドベリ
作者も言ってるように、これはSFっていうよりは火星を舞台に、人びとを描く現代アメリカ文学、って方が当たってるかも。でも素晴らしい。ずーーっとオールタイムベストの上位に君臨しつづける傑作。連作短編って側面も強いですね。ブラッドベリは『黒いカーニバル』の作品群も有名らしい。
19 『風の十二方位』アーシュラ・K・ル=グウィン
「オメラスから歩み去る人々」「革命前夜」「帝国よりも大きくゆるやかに」がランキングに良く登場する。特に「オメラス~」は海外での評価がむちゃくちゃに高い。ル=グウィンは同一の宇宙を描いた『ハイニッシュ・ユニバース』シリーズってのがあって、世界観をつかむのにほかの長編を読んでおくのもいいかも。長編『所有せざる人々』はロバ一押し、マストリードの作品ですよ。
20 『輪廻の蛇』ハインライン
猫(『真夏の扉』)だけでなく蛇も行ける! 「歪んだ家」「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」「輪廻の蛇」がランキング作品。ハインラインってなんか硬いイメージあるけど、いろんな顔を持ってるんだよね、というのが見える名作品集とのこと。
●おわりに
泣く泣く切り落とした有名作品もありましたので、納得行かないってかたはぜひリスト(再掲)をどうぞ。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1PsK0-fijmLZ7iTe5LmRplgYZ4m_e37xsgDKQuAOh7oA/edit#gid=190252425
最初に言った通り、僕もここに挙げたほとんどの作品を読んでません。これからずんずん読みながらアップデートしていければいいかな、と思っています。みんなで読もう!
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