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バッドフラワーガール:トーキョーN◎VAシナリオ

 この記事は「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」用のシナリオです。スラムでヤク売って大儲け! プレイヤーの倫理観にチャレンジしていくアクトです。
 ダダーッと書いてあるのでメチャクチャ長いです。ですが基本的には、一度ザっと目を通したら、あとは遊びながら順番にシーンを処理するだけで進行できるでしょう。プレイヤーはプレアクト部分まで読むことができます。
(2021/09/26 UPDATE)
 ざやく様から、シナリオNPCの立ち絵イラストをご提供いただきました。ありがとうございます!

◣◥◣プレアクト◥◣◥

■シナリオデータ
プレイヤー人数:2~4人
プレイ時間:2時間程度
使用サプリメント:『TNX』のみでプレイできる。RLはさらに『TOS』『CTL』があると望ましい(一部のデータを参照している)

■アクトトレーラー

貧困にあえぐレッドエリアで、花屋を営む少女がいた。
だが、この街では花を買うような物好きは少ない。
少女は悩みぬいた末、商品を変えた。
この街で売れる植物は、美しい花などではない。
ケシやアサといった草――を加工した薬品、すなわちドラッグだ。
家族を守るため、貧困から抜け出すため。
少女は今日もヤクを売る。
トーキョーN◎VA The Axleration
「バッドフラワーガール」
かくて運命の草が生やされた。

■キャスト作成

●アクトハンドアウト

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【キャスト共通ハンドアウト】
コネ:ケーヤ 推奨スート:クラブ 推奨スタイル:なし
 スラムで花屋を営むケーヤは、キミたちの共通の友人だ。彼女は植物を操るバサラで、その能力で育てた花を売って生活している。さほど儲からないが、彼女は懸命に働いて、家族を養っていた。そんなケーヤから、重大な相談を持ち込まれた。ドラッグを作って売る手伝いをしてくれという。市民ランクを得て、スラムを脱出する資金にするために。
PS:ケーヤを助ける、ついでに金儲けをする。

●キャストの設定・所属について
 ケーヤの友人で、レッドエリアにいておかしくない立場であれば、特に所属や思想を問うことはない。

●クイックスタート
 「任侠剣士」「災厄のカゼ」「ニューロエイジの魔術師」「現代の騎士」を使用する。プレイヤー人数が少ない場合、記述順に使用する。

●必要な神業
 1~2個の防御系神業が必要だ。

■キャスト間コネクション
 左隣のキャストのコネを取得する。オンラインセッションの場合、まあ何かいい感じに決めろ。

■倫理上の問題
 このシナリオは、キャストたちがドラッグの売買に加担するという内容だ。さらに、キャストがうまく行動すれば、それによって大儲けをしてハッピーエンドを迎える。これはプレイヤーの倫理観によっては、不快感を覚える可能性がある。「悪事を働いたものが、報いを受けなければ落ち着かない」という人は意外なほど多い。たとえゲーム内の事象であっても、そのプレイヤーの不快感は現実のものだ。プレイヤーを不快にさせてまで遊ぶ必要はない。熟慮の上で遊んでほしい。

RL情報

◣◥◣ルーラー情報◥◣◥

■ストーリー
 スラムで花屋を営む少女・ケーヤは、植物を操るバサラだ。彼女はその力で花を育て、貧しいながらも家族を養っていた。だが母親が病に倒れたことで、生活は限界に達した。そこで彼女は、自分の能力でケシやアサを育て、それを原料にドラッグを作って売ることを考えた。そうやって稼いだ金で、家族全員の市民ランクを買い、スラムを出て母親をちゃんとした病院に入れることが目的だ。だが彼女には販路がない。そこで協力者として、友人であるキャストたちを頼った。かくしてキャストたちはケーヤと組み、彼女の作るドラッグでビジネスを始めることとなった。
 だが問題は多い。キャストたちが販路を拡大するにつれ、商売敵のギャング“シャークス”と衝突する。“シャークス”はケーヤの異能に目を付け、彼女を自分たちのものにしようとする。このシナリオはギャングを倒し、ケーヤに必要な金額を稼がせることで終了となる。

■シーンプレイヤーと登場判定
 このアクトでは、シーンプレイヤーと登場判定について記述しない。キャストが順番にシーンプレイヤーを担当する。またキャストは全員、常にチームを組んで行動し、別行動などはしないものを前提としている。もしプレイヤーが「別行動したい」旨を求めた場合は、RLが適宜対応すること。

■重要NPC

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ケーヤ
◆スタイル
エキストラ(バサラ)
◆解説
「本当はドラッグなんか……でも、もうなりふり構っていられないんだ」
 スラムで花屋を営む、Xランクの少女。19歳。スラムの安アパートに暮らし、屋上に温室を構えている。家族構成は病気の母親と、弟、妹。父親は死別。今は彼女が一家の大黒柱だ。
 〈元力:生物〉を持ち、植物を操る“植物使い”(プラントコーラー)と呼ばれるバサラ。ケーヤの店の花は、すべて彼女の能力で育てられたものだ。実際のところ、スラムで花はあまり売れない。ケーヤの場合、元手がほとんどかからないため、ギリギリのところで商売が成立している。
 ケーヤのバサラの能力は、亡き父親譲りのもの。父親はその能力でケシやアサを育て、ドラッグを作っていた。だが自身もドラッグの中毒者となり、身を持ち崩して死んだ。そのためケーヤはドラッグを忌み嫌っている。だが実入りがよいため、医療用や呪術用に少量だけ生産して、生計の足しにしていた(“ビッグ・マム”マリー(『TNX』75p)はよいお得意様だ) 母親の病気が悪化したため、主義を曲げてドラッグビジネスの拡大に踏み切る。
“シャークのジョー”
◆スタイル
カタナ、チャクラ、レッガー◎●
◆解説
「自慢のアゴ(ジョー)さ。喰らいついたら離さねぇ」
 スラムを縄張りとするストリートギャング“シャークス”のリーダー。ドラッグビジネスを展開し、利益を上げている。狂暴な性格で、自分たちの商売の邪魔をする者は徹底的に潰す。ケーヤのドラッグビジネス上、最大の商売敵となる。
 かつてギャング間の抗争で、顔の下半分を吹き飛ばされた。失った顎を戦闘用のサイバージョー(凶悪なデザインの金属製の顎)に置換している。戦闘ではこの顎で相手に喰らいつき、相手の肉を噛みちぎる。自らを「スラムという海の頂点捕食者(エイペックス・プレデター)」とうそぶく、まさにサメのような男。
“ハンマーヘッド”
◆スタイル
カブト、カゼ◎●、カゲ
◆解説
「……ブォォン!(※排気音。ブッ殺してやる!と言っている)」
 “シャークス”のナンバー2。巨大なハーレータイプのバイクに跨った大柄なバイカー。寡黙だと思われているが、生来シャイな上に声が小さいので、バイクの排気音にかき消されているだけだ。リーダー同様、本性は狂暴極まりない危険人物。

◣◥◣オープニングフェイズ◥◣◥

●シーン1:ストリートの花売り
◆解説
 キャスト全員のオープニング。ケーヤからドラッグビジネスへの協力を依頼される。報酬の前金として、キャストはそれぞれ3報酬点を得る。
▼描写①
 キャストたちは友人である花売りの少女、ケーヤに呼ばれ、彼女の温室を訪れていた。ケーヤの温室は、スラムの自宅のある安アパート(不法居住)の屋上にあった。彼女はそこで育てた花を売って、家族を養っていた。美しい花々が咲き乱れる温室で、ケーヤが作業をしていた。彼女が念じると、プランターに植えられた種が瞬く間に芽吹き、花を咲かせた。ケーヤは植物を操るバサラ(超能力者)だった。
▼セリフ:ケーヤ
「来てくれてありがとう。きみたちに折り入って相談があるんだ」
「こっちの温室で話すね」
▼描写②
 ケーヤは、キャストたちを別の温室に案内する。そこでは美しい花々とはうってかわって、地味な草が育てられていた。だが見ればわかる。それはケシやアサ。つまりドラッグの原料となる植物だ。
▼セリフ:ケーヤ
「花だけじゃ食べていけないから、こういうものも育てて、少しだけ売ってたんだ。闇医者さんとかに、医療用でね」
「……ママの病気が悪くなったんだ。近所に入院してるけど、ちゃんとした病院じゃないと長くないって。でも、Xランクのママが入れる“ちゃんとした病院”なんて、ないんだよ。だからお金を稼いで、まず市民ランク(※)を買わなきゃいけない。もちろん、ママだけ市民ランクがあっても意味がない。面会したり世話をする、私や弟たちのぶんも必要」
「それで、手早く稼ぎたいんだ。それには、こっちの商売を大きくするしかない。相談ってのはつまり、ビジネスに協力してってこと」
「栽培は私、精製は弟や妹がやる。きみたちには、高く売れる販路を開拓してほしい」
「悪いことだし、危ないことだともはわかってる。だから目標金額まで稼いだら、すっぱりやめる。必要なのは、家族全員の市民ランクをヤミで買う費用と、ママの治療費。ここを引き払って、イエローエリアに移る費用」
「きみたちの取り分は、収益の半分。どうかな?」
(乗った)「ありがとう!」
◆結末
 キャストたちがケーヤの話に乗ったら、シーン終了。

※市民ランク
 これについて「偽造ID(『TNX』p.257)ではダメなのか?」と疑問に感じるプレイヤーがいるだろう。ケーヤがやろうとしていることは、実質的には「偽造IDを買う」のと同じだ。ただ、キャストと違ってケーヤ一家はエキストラだ。エキストラには「常備化」の概念がないため、恒常的に手に入らないのだ。ケーヤたちが偽造IDを手に入れるには、今回のアクトぐらいの試練が必要だということだ。
 「《買収》などの神業で市民ランクを用意できないか」については、「■アクトルール:販売判定」の項目にある「◆神業」を参考に処理する。

◣◥◣リサーチフェイズ◥◣◥

■クライマックスの条件
 廃工場のアドレスへ向かうことで、クライマックスへ移行する。

■アクトルール:販売判定
 キャストがケーヤのドラッグを売りさばくには、リサーチフェイズ中に「販売判定」に成功しなければならない。
◆概要
 特にイベントのないシーンでは、登場したキャストは全員、1回の「販売判定」を行なえる。「販売判定」は〈社会:ストリート〉〈信用〉の判定となる。「販売判定」の達成値はキャスト全員で累積される。累積達成値が目標値に届くまで、シーンを改めて繰り返し判定できる。目標値は、プレイヤー2人の場合は100、3人以上の場合は150だ。
◆リスク
 「販売判定」を行なったキャストは、山札1枚+「累積達成値÷10(最大10)」ぶんの社会ダメージを受ける。これはストリートで動くことで眼をつけられるためだ。
◆神業
 ふさわしい神業を1回使用することで、累積達成値を即座に+30することができる。《不可触》で警察にバレないよう販路を広げる、などの演出が可能だろう。
◆トリガーイベント
 「販売判定」の累積達成値によって、イベントが発生する。イベントの発生条件に「累積達成値60/90」などとあった場合、累積達成値がその値以上になった次のシーンは、そのイベントを行なう。スラッシュの左の値がプレイヤー2人の場合、右の値がプレイヤー3人以上の場合を指す。

●シーン2:草の魔法
条件:リサーチフェイズ最初のシーン
◆解説
 ケーヤのドラッグをドラッグディーラーに売り込むシーン。ディーラーはケーヤのドラッグを買い叩こうとする。キャストは〈交渉〉〈圧力〉判定を1回行なう。目標値は15だ。ひとりでも成功することで、適切な額での取引を呑ませることができる。失敗した場合、ディーラーに利益を吸い上げられ、目標金額に届くことはなくなる。アクトは終了だ。何らかの神業が必要になるだろう。
▼描写①
 ストリートに広い顧客を持つドラッグディーラー。彼にケーヤのドラッグを売り込む。ディーラーは、手近にいたジャンキーを実験台に、ケーヤのドラッグを試してみろという。
▼セリフ:ドラッグディーラーとジャンキー
「悪いな。出所の知れないヤクなんか扱えるかよ。それに品質だって怪しいもんさ。そうだな、こいつ(ジャンキー)で試してみよう」
「ダンナ~、ヤクくれよ~。えっ、タダでいいの? やった~(ケーヤのドラッグを摂取)あへぇぇぇ~~! こ、このヤクしゅごいぃ~~!」
「マジかよ! どんな魔法を使ったんだ!? えっ、本物の魔法? そういうのはいいから」
▼描写②
 ディーラーは取引に乗り気になった。だがキャストたちの足許を見て、中間マージンをふっかけてくる。この取り分を認めたら、まったく儲けにならない。
▼セリフ:ドラッグディーラー
「品質はいいようだな。いいだろう、取引しよう。こちらのマージンとして5割いただく。うちの顧客を利用するんだ、文句は言わせねえ」
(それはないよ)「こっちにも信用ってものがある。他の取引先との兼ね合いもある。ポッと出のあんたたちを厚遇はできねぇよ」
(判定に成功)「ううむ、仕方ない。こちらの取り分は2割だ。これが限界だ。くそっ、よそに取られるよりはマシか……」
◆結末
 判定を終えたらシーンを終了する。

●シーン3:シャーク!シャーク!シャーク!
条件:累積達成値20/30
◆解説
 ストリートでギャング・シャークスが、キャストたちに目を付ける。因縁をつけてので、これを跳ねのける必要がある。キャストは〈白兵〉〈射撃〉〈心理〉判定を1回行なう。目標値は15だ。「プレイヤー人数-1」人が成功することで、シャークスを撃退できる。失敗すれば、以後ストリートでの販売は難しくなる。アクトは終了だ。何らかの神業が必要になるだろう。
▼描写
 キャストたちのドラッグビジネスは順調な滑り出しとなった。だが、どこから嗅ぎ付けたか、レッガーたちに周囲を取り囲まれる。彼らはみな、肌にサメのタトゥーを入れている。この地域のストリートギャングのようだ。
▼セリフ:ギャング(シャークス)
「お前らだな。俺たちの縄張りで、ヤクを売りはじめた連中は」
「こっちの商売を潰すつもりか。あんな安値で売りさばきやがって」
「ダンシングだろ!」「ダンピング(※)な」「そう、それ」
「ともかく、ここいらで商売するなら、俺たち“シャークス”を通してもらおうか。それがルールってもんだ」
「教育してやるぜー!」
(判定に成功)「ち、ちくしょう。覚えてろよー!」
◆結末
 判定を終えたら、シーンを終了する。

※ダンピング
 不当廉売。不当に安い価格で製品やサービスを提供すること。ケーヤのドラッグは元手がほとんどかからない。原材料の栽培コストも、人件費も非常に低い。そのため、価格を相場よりかなり低く抑えられる。他の業者(シャークス)からすると、自分たちの商売を潰して顧客を奪おうとしている(ダンピング)ようにしか見えない。もちろんスラムのドラッグビジネスには、独占禁止法も反トラスト法も適用されない。

●シーン4:シャークのジョー
条件:シーン3の直後
ルーラーシーン
◆解説
 このシーンはルーラーシーンとなる。アクトの敵となる“シャークのジョー”の顔見せのシーンだ。
▼描写
 ギャングのたまり場。先ほどキャストを襲ったギャングたちが、血にまみれて倒れている。彼らに殴る蹴るの暴行を加えるのは、リーダーらしき凶悪なギャング。その顔の下半分は、凶悪なデザインの金属製サイバージョー(人工顎)に置換されている。
▼セリフ:リーダー(シャークのジョー)
「シャーックックック(笑い声)……この“シャークのジョー”様の縄張りで、ヤクを売ろうだなんてな。とんだ命知らずもいたもんだぜ」
「面白い、やってやろうじゃねえか。ヤツらのビジネスは、俺たちシャークスがまるごといただく。まずは、ヤツらの情報を徹底的に洗え」
「それはそうとお前ら、使いっ走りのひとつも満足にできねぇのか。やっぱりお仕置きだな」(金属製の顎でギャングの手を噛みちぎる)
▼セリフ:かわいそうなギャング(シャークス)
「ジョーさん、やめて……ギャアー!」
◆結末
 手を嚙みちぎられたギャングの悲鳴が響き渡る。描写を終えたら、シーンを終了する。舞台裏の処理を行なうこと。

●シーン5:長谷部万力襲来
条件:累積達成値40/60
◆解説
 SSSアサクサ分署の長谷部万力(『TNX』P.69)が現れ、キャストたちを強請る。万力の調べたキャストたちの情報をネタに、収益を分捕ろうとするのだ。〈社会:警察〉〈圧力〉〈コネ:長谷部万力〉(※)目標値15の判定を行なう。ひとりでも成功すれば、介入を防ぐことができる。失敗すれば、万力の介入で収益が落ち、目標金額に到達できなくなる。何らかの神業が必要となるだろう。
▼描写
 ケーヤの花屋は、表向きは継続中だ。ドラッグビジネスに比重を移したため、店内のプランターの半分が撤去されている。空いたスペースは、キャストたちのたまり場になっていた。そこにでっぷり太った警官がやってくる。SSSアサクサ署の名物汚職警官・長谷部万力だ。万力はニヤニヤ笑いを浮かべながら、キャストたちに近づく。
▼セリフ:長谷部万力
「わぁ~、キレイなお花ちゃんねぇ。お嬢ちゃん、コレ(カッパー)でいくつか包んでくれる?」
(なんでここに)「フヒッ、お花ちゃんを買いに来ただけよ。アサクサ署の警官が、スラムにお花を買いに来ちゃ悪いの?」
「蛇の道は蛇ってね。アンタたちの商売は、だいたい掴んでるわ」
「上がりの半分をアタシによこしなさい。そうすれば、悪いようにはしないわ。断るなら……どうなっても知らないわよ。あんたたちの情報を欲しがってるヤツらって、案外多いのよ~」
(やっちまうか)「暴力には屈しないわ! フヒヒ、アタシが死んだら、アンタたちの情報がネットオークションに出品されるようになってんのよ」
(判定に成功)「ちっ、運がよかったわね。今回だけは見逃してあげるわ。フヒッ!」(花束を買って去る)
◆結末
 判定を終えたら、シーンを終了する。

※〈社会:警察〉〈圧力〉〈コネ:長谷部万力〉
 長谷部万力の不祥事をネタに、逆に強請り返して、介入を防ぐという表現になるだろう。

●シーン6:ケーヤ倒れる
条件:累積達成値60/90
◆解説
 ケーヤが倒れる。〈元力:生物〉の使い過ぎによる過労で、体調を崩したのだ。〈医療〉〈社会:アストラル〉目標値15の判定を行なう。成功すれば彼女は一命を取り留める。失敗すれば、ケーヤは死亡する。何らかの神業が必要となるだろう。助かった場合、ケーヤは自分の身の上について語る。
▼描写①
 血相を変えたケーヤの弟・妹たちがキャストたちを呼ぶ。温室では、ケーヤが倒れて気を失っていた。危篤状態だ。Xランク市民は、シルバーレスキューの救急車も呼べない。自力で応急処置をしなければ。
▼セリフ:ケーヤの弟・妹たち
「(キャスト)さん、温室へ来て! お姉ちゃんが大変なんだ!」
(判定に成功)「お姉ちゃん、助かったの……? ありがとう!」
▼描写②
 容体の安定したケーヤは、少し休むと意識を取り戻した。
▼セリフ:ケーヤ
「力を使いすぎたみたい。少し休めば、よくなると思う」
「……私の力は、父さんゆずりなんだ。父さんはこの力で、ドラッグを作って、売って、自分で使って、そうやってボロボロになって死んだ」
「だから私は、本当はドラッグに関わりたくなかった。でも結局、同じことをしている。私も父さんみたいに、ダメになっちゃうのかな……」
(励ました)「……うん。もう無理はしない。まだやめるわけには、いかないものね」
◆結末
 判定と会話を終えたら、シーンを終了する。

●シーン7:ブレイキング・バッド
条件:シーン6の直後
◆解説
 ケーヤの体調維持のために、原料の生産量が落ちる。これを補うために、ドラッグの精製の効率を上げる必要に迫られる。〈製作:ドラッグ〉〈社会:テクノロジー〉目標値15の判定を行なう。成功すると、精製効率が向上し、以前と変わらない利益を得られる。失敗すると収益が戻らず、さらにケーヤが無理を重ねてしまい、目標金額に到達できなくなる。何らかの神業が必要になるだろう。
▼描写
 ケーヤは復帰したが、彼女の力に依存していた原材料の生産量が落ちた。このままでは収益がガタ落ちだ。ディーラーからの注文も止まらず、機会損失も大きい。別の方法で生産を補う必要がある。
▼セリフ:ケーヤの弟・妹たち
「お姉ちゃんに無理させないよう、ぼくたちもできることをやらなくちゃ」
「もっといい精製の方法があるかもしれない。調べてみようよ!」
(判定に成功)「そんな方法があるんだ。試してみよう!」
◆結末
 判定を終えたら、シーンを終了する。

●シーン8:発覚
条件:シーン6の直後
ルーラーシーン
◆解説
 “シャークのジョー”が長谷部万力を拷問し、キャストたちの情報を引き出すルーラーシーン。
▼描写
 ストリートの廃工場。手下を従える”シャークのジョー”の前に、バイカーが大型バイクが急停止する。バイクの荷台から、縛られボロ雑巾のようになった長谷部万力が転げ落ちる。
▼セリフ:バイカー(ハンマーヘッド)
「……ドゥルン!(※排気音。連れて来たぜ!と言っている)」
▼セリフ:長谷部万力
「あいててて……お前たち! このアタシを誰だと思って……え?」
▼セリフ:“シャークのジョー”
(金属の顎を鳴らして笑う)「シャーックックック……長谷部万力さん、だろう? アンタにちょいと聞きたいことがあってね」
「最近ストリートでヤクを売りさばいてる新興グループの情報だ」
「教えてくれれば、五体満足で返してやる。そうでなきゃ……アンタの手足がサメの餌になるだけさ」(金属の顎をガチガチと鳴らす)
◆結末
 長谷部万力のズボンに、小便の染みが広がっていく。描写を終えたら、シーンを終了する。

●シーン9:ドラッグチェイス
条件:累積達成値80/120
◆解説
 ドラッグを輸送中、ハンマーヘッドの強襲を受けるシーン。これはシャークスの脅しだ。キャストは〈操縦:地上車両〉〈運動〉判定を1回行なう。目標値は15だ。「プレイヤー人数-1」人が成功することで、妨害を振り切ることができる。失敗すれば、ドラッグを奪われ、収益を失う。アクトは終了だ。何らかの神業が必要になるだろう。
▼描写
 ドラッグを輸送中、大型バイクに跨ったバイカーが接近してくる。バイカーは輸送を妨害してくる。ドラッグを奪うつもりだ!
▼セリフ:バイカー(ハンマーヘッド)
「……ドゥルルン!(※排気音。ドラッグはいただくぜ!と言っている)」
(判定に成功)「……ドッドッドッ(※排気音。停車し、無言で見送る)」
◆結末
 判定を終えたら、シーンを終了する。

●シーン10:忍び寄る牙
条件:累積達成値100/150
◆解説
 目標金額に到達したキャストたち。だがケーヤの病身の母親が、シャークスにさらわれてしまう。シャークスは母親と引き換えに、ケーヤの身柄を要求する。ケーヤはその要求に応じ、キャストたちの元を去る。追おうとした場合、ケーヤは《天変地異》でそれを阻む。
▼描写①
 ついに目標金額に到達した夜。キャストたちはケーヤとともに、ささやかな祝杯を挙げる。
▼セリフ:ケーヤ
「やっと終わった! これでもう、ドラッグを作らなくていいんだ……」
「でもまだ、やることいっぱいあるなあ。裏ルートでIDを手に入れて、ママを転院させて、ここを引き払って、イエローエリアで店を始める許可を取って……まあいいや、明日からやればいいし」
(ポケットロンにコールが入る)「……ママからだ。おかしいな、もう病院は消灯時間なのに」
「……わかったよ(通話終了) ちょっとヤボ用ができちゃった。ちょっと出てくるね。弟たちをお願い」(退室しようとする)
▼描写②(ケーヤを問い詰める)
 ケーヤの様子がおかしい。問い詰めると、彼女は脅迫を受けたことを明かす。
▼セリフ:ケーヤ
「シャークスが、病院からママをさらった。私がひとりで来れば手出ししないって」
「私の作ったドラッグで、この街で中毒者がたくさん出たんだろう。パパみたいな人たちが。きっと、その報いを受ける時が来たんだ。でも、それはママが受けるべきじゃない」
「ママと弟たちをお願い。それじゃあね、みんな。楽しかったよ」
「来ないで!」(《天変地異》を使用、茨の壁でキャストたちを阻む)
◆結末
 会話を終えたら、シーンを終了する。キーワード【ケーヤの行方】を得る。『CTL』を導入しているなら、「SPS:シャークスを倒す(5点)」を得る。

●シーン11:要求
条件:シーン10の直後
ルーラーシーン
◆解説
 “シャークのジョー”がケーヤを自分の部下にしようとするシーン。ケーヤは自分の命を取引材料に、母親の解放を迫る。これはハンマーヘッドによって防がれる(プレイヤー人数が2人の場合、ここで《不可知》を使用する)
▼描写①
 ストリートの廃工場。シャークスを従えた“シャークのジョー”が、単身やってきたケーヤを値踏みする。
▼セリフ:“シャークのジョー”①
「レアな能力を持っているようだな、ケーヤさんよ」
「カーライルにも、河渡にも、三合会にも交渉した。みんなお前を欲しがってるぜ。一番高値をつけたところに、俺たちシャークスは身売りする。そしてその組織で、より高みを目指す。こんなスラムで、シケた気分の日々とはおさらばだ。シャーックックック!」
「ママの命が惜しければ、逆らおうなんて思うんじゃねえぞ」
▼セリフ:ケーヤ
「命令するのは私だ。あなたじゃない」
(自分のこめかみに小型拳銃の銃口を当てる)「まずママを解放しろ。そうしないと、あなたの大事な金ヅルが死ぬことになる」
▼描写②
 静かに忍び寄っていたバイカーが、ケーヤの拳銃を叩き落とす。さらに殴りつけて地に組み伏せる。
▼セリフ:バイカー(ハンマーヘッド)
「……(うなづく)」
▼セリフ:“シャークのジョー”
「そういうの嫌いじゃないぜ。これからじっくり教育してやる。このスラムという海で、誰が食物連鎖の頂点にいるのかをな」
◆結末
 描写を終えたら、シーンを終了する。

◣◥◣リサーチフェイズ:情報項目◥◣◥

 このシナリオにおいて、情報収集の重要性は低い。情報を調べても、クライマックスフェイズへたどり着けるわけではないからだ。「販売判定」より情報収集を優先しようとするプレイヤーには、その旨を説明しよう。情報収集はあくまで「片手間」で十分だ。
 初期から調べられる情報項目は以下の通り。
「◆ケーヤ」「◆スラムのドラッグ市場」「◆シャークス」

◆ケーヤ
〈コネ:ケーヤ〉〈社会:ストリート、アストラル〉10
 スラムで花屋を営む、Xランクの少女。〈元力:生物〉を持ち、植物を操る“植物使い”(プラントコーラー)と呼ばれるバサラ。ケーヤのバサラの能力は、亡き父親譲りのものだという。大のドラッグ嫌いで知られる。
◆スラムのドラッグ市場
〈社会:ストリート、警察〉〈製作:ドラッグ〉10
 スラムはドラッグの一大市場だ。河渡・カーライル・三合会といった三大組織の末端のギャング組織が、シェアを奪い合っている。あまり目立ち過ぎると、三大組織にも目を付けられることになる。ケーヤのビジネスで、恒常的に利益を上げ続けることはリスクが高い。早々に目的を達成して、撤退することが賢明だ。そうしなければ、三大組織から追われる身となるだろう。
◆シャークス
〈社会:ストリート、警察〉〈製作:ドラッグ〉13
 スラムを縄張りとするギャング。構成員はサメのタトゥーを入れている。主にドラッグビジネスで収益を上げている。弱い相手に不利な取引を強いるやり方で知られる。リーダーは【シャークのジョー】。ナンバー2は【ハンマーヘッド】だ。
◆シャークのジョー
〈社会:ストリート、警察〉〈製作:ドラッグ〉13
 シャークスのリーダー。狂暴な性格の典型的なギャング(レッガー◎●)  かつて抗争で顔の下半分を吹き飛ばされ、失った顎を戦闘用のサイバージョー(凶悪なデザインの金属製の顎)に置換している。戦闘ではこの顎で相手に喰らいつき、相手の肉を噛みちぎる(カタナ) 内面も外見も、まさにサメのような男。
◆ハンマーヘッド
〈社会:ストリート、警察〉13
 シャークスのナンバー2。巨大なハーレータイプのバイクに跨った、寡黙なバイカー(カゼ◎●) リーダー同様、狂暴極まりない危険人物。シャイな性格(カゲ)で、小声で喋るためいつもバイクの排気音にかき消される。
◆ケーヤの行方
〈コネ:ケーヤ〉〈社会:ストリート〉18
 シャークスの拠点のひとつである廃工場へ向かった。アドレスを得る。このアドレスに向かうと、クライマックスフェイズとなる。

◣◥◣クライマックスフェイズ◥◣◥

●シーン12:シャークネード
◆解説
 シャークスとの決着をつけるシーン。カット進行となる。
 敵は“シャークのジョー”、“ハンマーヘッド”、シャークストループ(プレイヤー人数-2)グループ。全員キャストたちから近距離、1つのエンゲージに位置している。
▼描写
 キャストたちが廃工場に駆けつけると、シャークスたちは気絶したケーヤを車で連れ去ろうとしていた。キャストたちが近寄ると、激しい銃撃が加えられる。
▼セリフ:“シャークのジョー”
「お前たちは招いちゃいないが……まあいい。お前たちが死んだって言えば、ケーヤも大人しくなるだろうさ」
「俺は飽きたんだ。スラムなんて狭い海の頂点捕食者(エイペックス・プレデター)でいることに。ずっと燻ぶっていた、このまま腐っていくのだと思っていた。何かを変えるきっかけが必要だった。それがケーヤだ! 俺はケーヤの力で、もっと広い海に出る。そして頂点に立つ!」
(攻撃する)「自慢のアゴ(ジョー)さ。喰らいついたら離さねぇ!」
(倒した)「俺は……頂点捕食者だ……」
▼セリフ:“ハンマーヘッド”
「……ブォォン!(※排気音。ブッ殺してやる!と言っている)」
(倒した)「……プスンプスン(※排気音。もうダメ、と言っている)」
◆結末
 カット進行に勝利したら、エンディングフェイズへ。

◣◥◣エンディングフェイズ◥◣◥

●シーン13:バッド・フラワー・ガール
◆解説
 共通のエンディング。ケーヤは目的を達したが、自分の能力を利用しようとする者が現れることを懸念し、家族と別れこの街を去ることを決意する。《不可触》などの神業を使用することで、ケーヤの存在を隠蔽し、彼女が家族と暮らせるようにできる。その場合は「描写②」へ。
▼描写①
 目標金額にも到達、諸々の手続きを終えたケーヤ。家族を乗せたヴィークルが、イエローエリアへと去っていく。彼女はアパートの部屋と、屋上の温室を引き払う後始末のために、それを見送った。シャークスも壊滅し、もはや彼女は自由だ。だが彼女の顔色は暗い。
▼セリフ:ケーヤ
「今度はちゃんと話しておくよ。私、ひとりで街を出ようと思うんだ。私のこと、三大組織が探してるっていうし。きっと見つかって、シャークスのときの繰り返しになると思う」
「その前に、N◎VAを離れるよ。私の取り分は残して来たし、弟たちも成人するまでは自活できると思う」
「……きっとこれが、私への報いだったんだ」
「世界のどこかで、また花を育てるよ。それじゃあ、バイバイ」(去る)
▼描写②(神業を使用した)
 もう三大組織が彼女を追うことはない。それを知ると、ケーヤの眼から涙がこぼれる。
▼セリフ:ケーヤ
「私、ママや弟たちと、これからも暮らせるんだ……」
「ひどいよね。人でなしだよね……なんでこんなに、嬉しいんだろう……」
◆結末
 会話と神業の処理を終えたら、キャストそれぞれの「その後」を聞くこと。それを描写したら、アクトは終了だ。お疲れ様でした。

◣◥◣ゲスト・トループデータ◥◣◥

“シャークのジョー”
◆戦闘データ
スタイル:カタナ、チャクラ、レッガー◎●
▼神業
《死の舞踏》《黄泉還り》《不可触》(※《不可触》は使用しない)
▼能力値
理性:6/13 感情:4/13
生命:8/14 外界:4/8
CS:9 AR:1
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
自我 2・PL・
白兵 3R・LM
▼スタイル技能
イカサマ 3・・・・
ハヤブサ 2・P・M
縮地 2・P・M
急所攻撃 3RPL・
鉄砲玉 3RPL・
▼装備
・サイバージョー(レックス(『TOS』p.110)相当)
攻:S+4 受:2 射:至近
・アーマージャケット+スキンメイル
防(S/P/I):2/2/4
▼戦闘プラン
 セットアップに〈ハヤブサ〉〈縮地〉を使用、CSを「カードの数字+17」に変更。シーン1回。
 メインプロセスでは至近距離に移動。〈白兵〉〈急所攻撃〉〈鉄砲玉〉で攻撃。達成値+3、攻撃力S+10。1点でもダメージを与えたら、【生命】の制御判定を強要。失敗すると【AR】-1。
“ハンマーヘッド”
◆戦闘データ
スタイル:カブト、カゼ◎●、カゲ
▼神業
《難攻不落》《脱出》《不可知》
(※プレイヤー人数が2人の場合、《不可知》は使用済)
▼能力値
理性:8/13 感情:2/12
生命:7/13 外界:5/10
CS:8(10) AR:1
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
操縦:地上車両 2・・LM
自我 2・PL・
射撃 3R・LM
▼スタイル技能
バーンナウト 2・・・・
カバーリング 2R・・M
金剛 2・P・M
不動 2・P・M
死点撃ち 3R・LM
▼装備
・S13イーグル+ガンサイト+爆裂弾
攻:I+9 受:- 射:近
・ブラックライダー+ブルホーン+マニューバV
SF:2 防(S/P/I):2/3/4
・タイプX
・スリーアクション
・デッドポインター
・アサルトナーブズ
▼戦闘プラン
 セットアップにタイプXを使用、CSをカッコ内の数字に。
 メインプロセスでは近距離を維持。マイナーでスリーアクション、デッドポインター、アサルトナーブズを使用。メジャーで〈射撃〉〈死点撃ち〉による攻撃。達成値+2、攻撃力X+11。
 リアクションは〈操縦:地上車両〉でドッジ。達成値+2。
 〈カバーリング〉でジョーのダメージを引き受ける。肉体ダメージは〈金剛〉、精神ダメージは〈不動〉で「カードの数字」点軽減。
トループ:シャークス
◆戦闘データ
スタイル:レッガー(5レベル)
▼能力値
理性:7/9 感情:7/9
生命:7/9 外界:6/9
CS:5 AR:1
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
白兵 3RPL・
イカサマ 3・・・
鉄砲玉 3RPL・
◆アウトフィット
・犬牙
攻:S+4 受:1 射:至近 投擲可能(射:近)
・アーマージャケット
防(S/P/I):1/1/2
◆戦闘プラン
 至近距離に移動し、〈白兵〉〈鉄砲玉〉で攻撃。達成値+3、攻撃力S+10。

◣◥◣セッション用素材◥◣◥

ユドナリウム用アクトルーム

ユドナリウム用のセッションツールを用意しました。RLは自由にお使いください。使用方法は、zipをユドナリウムの画面内にドラッグ&ドロップするだけです。使用イメージはこんな感じです(ベースは漆妖さんのルームを使用しました。圧倒的感謝……!)

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トレーラー&ハンドアウト画像
Twitterなどでのプレイヤー募集の際にお使いください。

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NPC画像(立ち絵)
 ざやく様からご提供いただきました、ケーヤの立ち絵画像です。本シナリオプレイ時のみご使用いただけます。

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◣◥◣注意書き◥◣◥

 「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。この記事は同社の2次創作規約のもとで作成されています。

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