見出し画像

剣にかけて!:ブレイド・オブ・アルカナ シナリオ

 この記事はTRPG『ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション』用のシナリオです。テーマは「決闘裁判」 小人数でサクッと遊ぶのに適しています。
 ダダーッと書いてあるのでメチャクチャ長いです。ですが基本的には、一度ザっと目を通したら、あとは遊びながら順番にシーンを処理するだけで進行できるでしょう。プレイヤーはプレリュードまで読むことができます。

プレリュード

■シナリオデータ
プレイヤー人数:2~3人
プレイ時間:2時間程度
必要ルールブック:『BAR』のみでプレイできる

■トレーラー
 時は西方暦1166年。
 この時代、正義は剣によって証明される。
 ハイデルランド辺境、ブッフホルツの街。
 家の乗っ取りをたくらむ叔父と、家を守ろうとする姪。
 両者の確執は、ついに決闘裁判へともつれ込んだ。
 叔父は凄腕の決闘代理人を雇い、裁判に備える。
 だが、姪の代理人になる者はいない。
 たったひとりを除いては――

 ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション
 「剣にかけて!」

 アルカナの刃よ、闇の鎖を打ち砕け!

■キャラクター作成
●消費経験点
 0~30点程度の消費経験点のPCを想定している。
●PC間因縁
 左隣のPCの因縁を取得すること。オンラインの場合、何をもって「左」とするかはGMが判断する。
●プレイヤーが少ない場合
 プレイヤーが少ない場合、PC番号の若いハンドアウトを優先する。

■シナリオハンドアウト
【PC①用ハンドアウト】
因縁:☆契約/レジーナ
推奨サンプルキャラクター:双剣士 推奨アルカナ:グラディウス
 キミは旅の剣士だ。立ち寄ったブッフホルツの街では、近く決闘裁判が開かれるという。成り行きから、キミは裁判の当事者である少女レジーナの危機を救う。そして、彼女の決闘代理人となるのであった。
【PC②用ハンドアウト】
因縁:☆奇縁/ニコラ
推奨サンプルキャラクター:放浪の賢者 推奨アルカナ:なし
 キミはPC①とともに旅をする聖痕者だ。立ち寄ったブッフホルツの街では、近く決闘裁判が開かれるという。そして相棒の気まぐれから、裁判の当事者の身内である少年・ニコラと関わることになってしまった。
【PC③用ハンドアウト】
因縁:☆断罪/決闘裁判の当事者
推奨サンプルキャラクター:巡回士 推奨アルカナ:レクス
 キミは巡回士だ。ブッフホルツの街の領主から、決闘裁判の立会人になるよう求められた。この時代、正義は剣によって証明される。キミの役目は、決闘裁判が不正なく執り行われるようにすることだ。

GM情報

GM用情報

■ストーリー
 ブッフホルツの街一番の商家コンラート家では、当主である乙女レジーナと、その叔父イヴァンの間でお家騒動が起きていた。殺戮者であるイヴァンは前当主であるレジーナの父(つまり自分の兄)を密かに毒殺。跡を継いだレジーナを傀儡とし、家を乗っ取ろうとしていた。レジーナは父の死の真相を知り、叔父を告発。領主に法の裁きを求めた。イヴァンは無罪を訴え、決闘裁判にて身の潔白を証明すると主張。イヴァンの主張は認められ、叔父と姪による決闘裁判が行なわれることになる。イヴァンは凄腕の決闘代理人を雇っていた。これは決闘によって合法的にレジーナを殺し、コンラート家を完全に手に入れるための陰謀なのだ。
 このアクトは、PCがレジーナの代理人として決闘裁判に挑み、勝利することで終了となる。

■重要NPC
レジーナ
エキストラ(ステラ)
 19歳、凛とした印象の少女。コンラート商会の当主。毒殺された前当主ハインツの長女。母親はすでになく、病弱な弟ニコラを育てながら、商会をひとりで切り盛りしている。独力で父親の毒殺疑惑を調べあげ、イヴァンを告発した。
ニコラ
エキストラ(アングルス)
 8歳、歳の離れたレジーナの弟。両親を失い、姉を親代わりに養育されている。生来病弱で、ほとんど家を出ることがない。そのため、旅人から旅の話を聞くことを楽しみとする。聡明で心優しい少年。
イヴァン
エキストラ(ファンタスマ=コロナ=ステラ)
 42歳、肥満した中年男性。コンラート商会先代当主の弟。放蕩が過ぎて勘当、独立して店を持った。悪どい手口で瞬く間に業績を拡大。その過程で闇に堕ち殺戮者となった。現在は実家であるコンラート商会を乗っ取ろうとしている。そのために先代を毒殺、さらに決闘裁判で姪レジーナを亡きものとするつもりだ。
 殺戮者だが戦闘能力はなく、陰謀をはりめぐらせることに長けている。聖痕の力で強引に計画を進めることはしない。バレない限り、表向きは合法的な手段を取る。
クラデニエッツ
ゲスト(グラディウス=ディアボルス=フィニス)
 凶相の剣士。イヴァンに雇われた、辺境最強の決闘代理人。すでに20以上の決闘で対戦者を殺害している。その正体は、邪悪な魔剣に魅入られた名もなき剣士。一見殺戮者っぽいが、性根が邪悪なだけの一般人。

導入ステージ

●シーン1:決闘裁判
シーンプレイヤー:マスターシーン
◆解説
 レジーナとイヴァンの決闘裁判が決まるシーン。レジーナはイヴァンを殺人で訴える。確実かと思われた告発は、領主(※)を抱き込んでいたイヴァンによって決闘裁判に持ち込まれる。イヴァンは決闘代理人として、剣士クラデニエッツを指名する。
◆描写①
 ハイデルランド辺境、ブッフホルツの街。その領主の館。凛とした少女が、領主に訴えていた。その傍らでは、肥満した中年の男がにやにや笑いを浮かべている。
▼セリフ:凛とした少女(レジーナ)
「私はコンラート家の当主レジーナ。叔父のイヴァン・コンラートを告発します。罪状は、私の父である先代当主ハインツ殺害の罪です」
「叔父は我が家の財産欲しさに父を、つまり自分の兄を、病に見せかけて毒殺しました。叔父が毒を持ったことは明らかです。証拠もあります。毒を調合したデクストラの証言もあります」
「領主さま、どうか正当なるお裁きを」
▼セリフ:肥満した中年男(イヴァン)
「コンラート家のイヴァンでございます。領主さま、我が姪レジーナの言葉はすべて偽り、私は潔白です。それを証明する用意もあります」
「ですが領主さまの手を煩わせることなく、真実を明らかにする方法を提案しましょう」
「私は、我が姪との決闘裁判を要求します!」
「そして私は、決闘代理人として彼を指名します」
◆描写②
 館の扉が開かれ、殺気をみなぎらせた凶相の剣士が現れる。
▼セリフ:凶相の剣士(クラデニエッツ)
「我が名はクラデニエッツ。イヴァン・コンラートの決闘代理人だ」
▼セリフ:レジーナ
「そ、そんな主張が認められるわけが……」
「領主さま、決闘裁判など不要です。証拠があるのですから……!」
▼セリフ:領主
「イヴァン・コンラートの主張を認める。一週間後、決闘裁判にて真実を明らかにせよ」
「レジーナ・コンラートも代理人を立てることを許可する。早急に決闘代理人を指定すること」
◆結末
 領主が決闘裁判を認めると、イヴァンが嫌らしい笑みを浮かべる。描写を終えたらシーン終了。

※領主
 ブッフホルツの領主である城伯。イヴァンから賄賂を得ており、彼の思うままに操られている傀儡だ。特に重要なNPCではない。

●シーン2:通りすがりの英雄
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC②自動登場。PCたちが酒場で休んでいると、レジーナが代理人を募りに現れる。彼女の代理人になろうとする者は現れず、レジーナは荒くれ者たちに襲われる。荒くれ者たちはエキストラだ。PCは宣言のみで彼らを倒し、レジーナを救うことができる。
◆描写①
 ブッフホルツ近くの街、うらぶれた酒場。荒くれ者たちに交じって『PC①』と『PC②』が休んでいる。そこに身なりのよい少女が現れる。明らかに場違いな少女は、店内の者たちに呼びかける。
▼セリフ:レジーナ
「私はレジーナ・コンラート。3日後の決闘裁判での代理人を探しています。報酬は5クラウン、我こそはという剣士はいますか?」
「何をするのです、おやめなさい! だ、誰か、助けて――!」
▼セリフ:荒くれ者たち
「嬢ちゃん、ここにあんたの代理人になるバカはいないぜ」
「みんな知ってるぜ。決闘裁判の相手は、あのクラデニエッツだ。決闘では負けなし、辺境最強の剣士だ」
「対戦した剣士は、みんなヤツに殺されてる。絶対に死ぬ仕事なんて受けるかよ」
「そうだ、どうせあんたは決闘で死ぬんだから、その金はいらないよなぁ。俺たちが飲み代にもらっといてやるよ」
「ついでに、その体で楽しませてもらおうか、ひひひ」
「助けを呼んだって無駄さ。ここにあんたを助けるようなお人よしなんて、いやしないぜー!」
◆描写②
 荒くれ者たちによって、少女レジーナは慰み者にされようとしていた。酒場にいる人々は、その様子を見て見ぬふりをする。誰もこの乱行狼藉を止める者はいない――と思われていた。
▼セリフ:荒くれ者たち
(止めた)「お楽しみの邪魔をしようってのか? なら、お前からぶっ殺してやるぜー!」
(倒した)「ぐわぁぁぁぁ!」
▼セリフ:レジーナ
(助けた)「あの、ありがとうございます。私はレジーナ。ぜひ、我が家でお礼をさせてください」
◆結末
 PCたちが少女の求めに応えたら、シーン終了。

●シーン3:決闘の立会人
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 PC③が決闘裁判の立会人として呼ばれるシーン。
◆描写
 PC③はブッフホルツの街の領主の館を訪れていた。来たる決闘裁判の立会人として、法の番人たる“禿鷲の巣”から派遣されたのだ。領主に着任の挨拶を済ませると、そこには裁判の当事者であるイヴァンがいた。
▼セリフ:領主
「巡回士PC③、決闘裁判の立会人か。ご苦労、せいぜい励むがよい」
▼セリフ:イヴァン
「領主さま、立会人どのは、ぜひ我が館にて饗応させていただきたく」
「裁判の立会人と被告人という立場ですが、運よく生き残れましたならば、“禿鷲の巣”とはよい関係を築きたいものでして」
(断った)「おやおや、お堅いお方で」
(乗った)「ほっほっほ、巡回士さまは話の分かる方ですなぁ」
◆結末
 会話を終えたら、シーン終了。

展開ステージ

 展開ステージは、基本的に記述順にシーンを進めていけばよい。

●シーン4:コンラート家の姉弟
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC②自動登場。PC③登場不可。レジーナと彼女の弟・ニコラの歓待を受けるシーン。レジーナはPC①に、決闘代理人となるよう依頼する。PC①はこれを受けても、断っても、保留してもよい(※) 断ったか保留した場合でも、後々改めて引き受けるシーンを用意できると伝えること。この場で受けた場合、「運命を切り拓いた」としてPC全員正位置の鎖を1枚得る。
◆描写①
 PCたちはレジーナに招かれ、街一番の商家である彼女の館を訪れた。暖かい食事と酒が用意される。レジーナは幼い弟、ニコラとともに歓待する。
▼セリフ:レジーナ
(少年を連れてくる)「弟のニコラです。ニコラ、私の命の恩人にご挨拶なさい」
▼セリフ:ニコラ
「ニコラです。姉を助けていただき、ありがとうございました」
「PC②さんは旅をしているとか。よろしければ、旅のお話などを聞かせてください」
◆描写②
 食事も終え、歓談もひと段落した。眠くなったニコラを寝かしつけてきたレジーナが、言いづらそうに話を切り出した。
▼セリフ:レジーナ
「お招きしたのは、下心があってのことなのです」
「叔父のイヴァンは、私の父を殺しました。我が家の財産を奪うために。私は叔父を告発しましたが、領主さまは判決を、私と叔父の決闘裁判に委ねました」
「決闘は3日後なのに、決闘代理人のなり手が見つからないのです。みな、叔父の雇った凄腕の代理人を恐れているから。このままでは代理人ではなく、私が決闘裁判に出るよりありません。そうなれば、私は間違いなく死ぬでしょう」
「さきほど、PC①さんの強さを見ました。お願いします、私の決闘代理人になってください。報酬はお支払いします」
「助けてもらった上に、命をかけて戦えなどと、身勝手な話でしょう。ですが、私は死にたくない。死ねば父を殺した罪を問えず、叔父に家を乗っ取られ、ニコラを路頭に迷わせることになります」
(引き受けた)「ありがとうございます。では、当日までこの館に泊まっていってください」
(断った、保留したい)「……そうですよね。ああ、この話とは別に、どうかこの家に泊まっていってください。命の恩人には違いありません」
◆結末
 PC①が依頼を受けるか答えたら、シーンを終了する。

※断っても、保留してもよい
 「一度断った方がかっこいい」「自分で状況を確認してから返答したい」と考えるプレイヤーもいるだろう。無理強いはしないように。
 『BAR』というゲームでは、PCは最終的に必ず殺戮者と戦うことになっている。そしてこのシナリオの殺戮者イヴァンとPCは、決闘裁判のシーンまで直接会うことはない。ここで断ったとしても、PCは決闘に赴くことを宿命づけられているのだ。

●シーン5:殺しのルーティーン
シーンプレイヤー:PC③、いなければマスターシーン
◆解説
 イヴァンと、彼の雇った代理人クラデニエッツたちの凶行のシーン。クラデニエッツは訓練として、荒くれ者たちを殺害する。これは[悪徳](※)だ。
◆描写①
 イヴァンの館。その裏手に、3人の武装した荒くれ者が集められた。彼らと向かい合うのは、凶相の剣士クラデニエッツ。その剣が一閃すると、3人の肉体がバラバラの肉片となって崩れ落ちる。
 一連の凶行を見ていたイヴァンは、拍手で自分の決闘代理人を称える。(PC③がいれば)そこにPC③が通りがかる。
▼セリフ:イヴァン
「お見事です、クラデニエッツどの!」
「やはり一流は違いますな~。武器をもった3人を相手に訓練とは。おい(使用人を呼ぶ)、このクズどもの死体を捨ててこい」
(PC③に)「おお巡回士どの。なに、ちょっとしたゴミ掃除ですよ」
▼セリフ:クラデニエッツ
「……10日に1人斬らねば、感覚が鈍る。最後に斬ったのは、ひと月前。3人斬らねばならなかった」
「これで決闘には本調子で臨めるだろう」
(PC③に)「合意の上での真剣勝負だ。何か文句があるか?」
◆描写②
 顔に傷のある使用人(※)がイヴァンに近づき、耳打ちする。
▼セリフ:イヴァン(小声で)
「……なに、レジーナに決闘代理人(※)がついた? PC①? 誰だそいつは。めっぽう強い? ふーむ」
「クラデニエッツどのならば勝利は疑いないが、念のため、処理しておけ」
(PC③に)「ほっほっほ、何でもありませんよ」
◆結末
 描写と鎖の処理を終えたら、シーンを終了する。

※[悪徳]
 クラデニエッツの凶行は[悪徳]に見えるが、実際はこのシナリオの殺戮者はイヴァンだ。イヴァンが「クラデニエッツにこの凶行を行なわせたこと」が悪徳なのだ。
※顔に傷のある使用人
 イヴァンの信任の篤いごろつきだ。このシナリオ内でちょくちょく登場し、暗躍する。
※レジーナの決闘代理人
 シーン3で断っていても、イヴァン側は勝手にこのように認識する。

●シーン6:ブッフホルツの街角で
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 PC全員登場。街の状況を詳しく把握するために、情報を集めるシーンだ。PCは各項目について、〔交渉〕か〔事情通〕で判定を行なう。判定の成否に関係なく、項目にある情報をすべて入手する。すべての項目の判定に成功すると、「運命を切り拓いた」としてPC全員、正位置の鎖を1枚得る。
・コンラート家について
 コンラート商会は、ブッフホルツの街で一番の商家だ。急死した先代の跡を継いで、レジーナが幼い弟ニコラを養育しながら切り盛りしている。先代同様のまっとうな商売をしており、評判はよい。街の人々からも慕われている。
・イヴァンについて
 コンラート商会の先代の弟。放蕩が過ぎて勘当、独立して店を持った。領主への賄賂、ごろつきを雇っての暴力など、悪どい手口で瞬く間に業績を拡大。その勢いで、実家であるコンラート商会を乗っ取ろうとしている。そのために先代を毒殺、さらに決闘裁判で姪レジーナを亡きものとするつもりだ。彼の犯罪を立証するには、決闘裁判に勝つ以外にない。
・決闘代理人について
 イヴァンの決闘代理人クラデニエッツは、辺境最強と噂される凄腕の剣士だ。20戦以上の決闘で代理人となり、そのすべてで対戦相手を殺害して勝利してきた。無数のシンボルが刻まれた銘無しの魔剣(※)を持つ。
◆描写
 ブッフホルツの街は、迫る決闘裁判の話題で持ち切りだ。
▼セリフ:街の人々
「イヴァンはクズ野郎だ。だが、やつはごろつきを何人も抱えてる。領主さまもヤツに抱き込まれてる」
「先代には世話になったし、レジーナ嬢ちゃんには生き残って欲しいよ。でも無理だろうな……若い身空で可哀想に……」
◆結末
 情報を集めたら、シーンを終了する。

※銘無しの魔剣
 シンボルは聖痕ではなく、ただの装飾(キルマーク)だ。「クラデニエッツは殺戮者である」というミスリードだ。

●シーン7:路地裏の襲撃
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC②自動登場。決闘の前にレジーナの代理人を潰そうと、イヴァンの雇った荒くれ者たちが襲ってくる。これは[悪徳]だ。戦闘となる。敵は剣客集団(『BAR』P.260)2グループ。
◆描写
 ブッフホルツの人気のない裏路地。PCたちは荒くれ者の集団に取り囲まれた。
▼セリフ:顔に傷のあるごろつき
「旦那、レジーナお嬢さんの決闘代理人になられたそうで。そういうの、困るんですよ。辞退しちゃもらえませんかね」
(まだ代理人じゃない)「でも、これからそうなるかもしれないでしょう? なら同じことですよ」
「決闘では、うちの旦那の代理人が勝ちますよ。ただ、あんた――代理人を殺しても、お嬢さんが死ぬわけじゃない。虚偽告発で追放がせいぜいだ。そうなると、改めて殺す段取りをしなきゃならん。そんなの面倒でしょう」
「辞退するってんなら、半殺しで止めときましょう。辞退しないなら、決闘の前にここで死んでいただきますぜ」
「お前ら、やっちまえ!」(荒くれ者たちをけしかける)
(PC③が登場)「立会人さん、これは決闘じゃありません。あんたに止める権利はない。邪魔するんならケガしてもらいますよ」
(倒した)「つ、強い……こいつは搦め手の方がよさそうだ」(逃走する)
▼セリフ:荒くれ者
「酒場ではよくもやってくれたな。今度は同じようには行かねえぜ。ぶっ殺してやらー!」
(倒した)「や、やっぱりー!」
◆結末
 戦闘に勝利したら、シーンを終了する。

●シーン8:決闘代理人
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①がレジーナの決闘代理人となるシーン。シーン4で保留したか、断っていた場合のシーンだ。このシーンはPCが希望したタイミングで発生させること。PC①が代理人となることを宣言すると、「運命を切り拓いた」としてPC全員、正位置の鎖を1枚得る。
◆描写
 レジーナは祈るように、PC①の言葉を待っていた。
▼セリフ:レジーナ
(決闘代理人になる)「……ありがとうございます」
「私の命と、私の家の運命を、あなたに託します」
◆結末
 PC①が決闘代理人となる旨を宣言したら、シーンを終了する。

●シーン9:卑劣なる罠
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC②自動登場、PC③登場不可。決闘の直前、ニコラがさらわれたことを知るシーン。レジーナは、PC①を決闘代理人から外さなければ弟が死ぬと脅迫される。これは[悪徳]だ。レジーナは脅迫に屈し、PC①を決闘代理人から解任しようとする。
 PCたちは選択を迫られる。
・決闘代理人を降りる。
 アクトはここで終了となる。レジーナは自分自身で決闘に赴き、クラデニエッツに無惨にも殺害される。
・決闘代理人を降りない。ニコラを助けに行かない。
 決闘のシーンを行なう。その裏ではレジーナが密かにニコラを助けに行く。そして2人とも殺害される。仮に決闘に勝利したとしても、苦い結末となるだろう。
・決闘代理人を降りない。ニコラを助けに行く。
 決闘のシーンと、ニコラ救出のシーンを行なう。PCはどちらかのシーンにしか登場できない。
 基本的な流れは3番目「決闘代理人を降りない。ニコラを助けに行く」を想定している。以降のシーンは、それを前提に記述している。
◆描写
 いよいよ決闘の直前。PCたちとレジーナが街の大通りで決闘の時刻(正午の鐘が鳴るときだ)を待っている。そこにちんぴらがやって来て、レジーナに手紙を渡す。その内容を読んだレジーナの顔が青ざめる。
▼セリフ:レジーナ
「……PC①さん、あなたを決闘代理人から解任しなければなりません」
「ニコラが誘拐されました。弟の命を救いたければ、あなたを解任しろというのです」
「PC①さんが、決闘の時刻に街外れの風車小屋にひとりで来れば、そこで弟を解放するそうです」
「罠だとはわかっています。でも、弟を救えなければ……たとえ決闘で生き残っても、私は生涯後悔に苛まれることになります。それはきっと、死ぬよりもつらい……」
(降りる)「……あなたのことは忘れません。もし、よろしければ……このお金で、弟だけでも助けてあげてください。この街を離れて、どこか遠くで生かしてあげてください」
(降りない、ニコラも助ける)「わかりました。あなたたちを信じます」
(降りない、ニコラを助けない)「……わかりました、弟のことは諦めます。これが運命だということでしょう」
◆結末
 PCたちが行動を選択したら、シーンを終了する。

●シーン10:街外れの風車小屋
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 風車小屋に向かったシーン。PC①、PC③登場不可。ニコラを助けるための方法は以下の通り。ニコラの救出に失敗し、彼が殺害された場合、[悪徳]として逆位置の鎖を1枚得る。
・密かに近付き、奪い取る。
 物陰から密かに近付いてニコラを奪回できる。この場合、〔隠密〕判定となる。失敗した場合、ニコラは殺害される。
・言葉巧みに説得する。
 「レジーナが決闘自体を降りて、イヴァンと和解した」などと嘘をついて、ニコラを解放させることもできる。この場合、〔交渉〕判定となる。失敗した場合、ニコラは殺害される。
・正面から突破する。
 正面から力づくで突破してもよい。その場合、相手に反応させる間もなく倒さなければならない。何らかの攻撃を1回行ない、20以上のダメージ(属性は問わない)を出す必要がある。ダメージが届かなかった場合、ニコラは殺害される。
・奇跡を使用する。
 何らかの奇跡のドラマ効果を使うことで、成功としてもよい。
◆描写
 決闘と同時刻。風車小屋の周囲は、イヴァンの雇った荒くれ者たちで固められている。見覚えのある、顔に傷のあるごろつきが指揮している。その傍らではニコラが、猿轡をかまされ、縛られている。
▼セリフ:顔に傷のあるごろつき
「そろそろ時間ですが、本当に来ますかねぇ」
「まぁ、来ないなら来ないで知ったことじゃありませんがね。どうせこの子も、いずれは始末する予定になってたんだ、遅いか早いかの違いだけさ」
(救出に成功)「……畜生!」
▼セリフ:ニコラ
(助けた)「あ、ありがとうございます。PC②さん!」
「決闘が心配です。急いで戻りましょう!」
◆結末
 ニコラを助けたら、シーンを終了する。

●シーン11:決闘裁判!
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 決闘裁判のシーン。PC③自動登場。風車小屋に向かったPCは登場できない。
 決闘は、PC①が〔格闘〕〔軽武器〕〔重武器〕の判定を行なう。これにクリティカルで成功することで勝利する。もしくは《死神の手》などの奇跡(※)のドラマ効果を使用した場合も勝利となる。PCは勝利するまで、何度でも判定やり直してよい。ただし、そのたびにHPを[プレイヤー人数]D10点失う。これによってHP0以下になった場合、PC①は死亡し、決闘に敗北する。アクトは終了となる。
◆描写①
 中天に太陽が昇り、正午の鐘が鳴り響く。決闘の時間だ。周囲には物見湯残な野次馬が集まり、勝手に賭けが始まっている。PC①とクラデニエッツが、通りの真ん中で向かい合う。
▼セリフ:立会人(PC③がいるなら、このセリフはPC③が宣言する)
「これよりレジーナ・コンラートとイヴァン・コンラートの決闘裁判を行なう。両名の代理人は前へ!」
▼セリフ:レジーナ
「PC①、あなたの勝利を信じます」
▼セリフ:イヴァン
「ほっほっほ、弟の命はいらぬということか。まあよい、どうせいつかは殺すのだ」
「クラデニエッツ、期待しているぞ!」
▼セリフ:クラデニエッツ
「お前がPC①――我が魔剣の53人目の犠牲者か」
(決闘開始)「カカカカ――! なまっちょろい剣筋だ。もっと俺を楽しませろ!」
(決闘終了)「バカな……この俺が、負けただと……?」
◆描写②(決闘に勝利した)
 PC1の一撃がクラデニエッツを打ち倒す。勝負あった。クラデニエッツは、自分の敗北を信じられない様子で呆然としている。
 判決は下された。イヴァンの殺人罪が認められたということだ。だがイヴァンは、不敵な態度を変えない。彼の身体に無数の聖痕が浮かび上がる。殺戮者だ!
▼セリフ:立会人(PC③がいるなら、このセリフはPC③が宣言する)
「勝負あり! レジーナ・コンラートの代理人の勝利!」
▼セリフ:レジーナ
「勝った、PC①が勝った――!」
「叔父さま、裁判は私の勝ちです。我が父を殺した罪を贖いなさい!」
▼セリフ:イヴァン
「クラデニエッツめ、しくじっただと。ええい、高い金を払ったのに」
「このままでは私は兄殺しの大罪人。もはや取り繕う必要もあるまい。レジーナも、PC①も、立会人も、全員殺してやる! その後、全てをもみ消してやる!」
◆結末
 周囲からイヴァン配下のごろつきたちが集まり、一斉にPC①たちに襲いかかる。対決ステージへ。

※奇跡
 クラデニエッツは殺戮者ではないため、《死神の手》のドラマ効果で倒すことができる。対決ステージで戦う敵のHPがそれほど高くないため、《死神の手》の価値は相対的に低い。プレイヤーが「どの奇跡を使うか」迷うようなら、GMは《死神の手》を薦めるとよいだろう。
 またPC同様、殺戮者であるイヴァンは、奇跡でクラデニエッツを援護できる。だが彼はクラデニエッツの腕を信頼しきっていること、PCたちが聖痕者だと知らないこともあって、そのようにすることはない。

対決ステージ

●シーン12:剣風の辻
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC全員登場。戦闘となる。敵は以下の通り。 勝利条件は「クラデニエッツを含む(プレイヤー人数×2-1)体以上を倒す」(プレイヤー2人なら3体、3人なら5体以上)だ。
・クラデニエッツ(※データは後述)
・剣客集団(『BAR』P.260)(プレイヤー人数)グループ
・錬金銃兵(『BAR』P.260)(プレイヤー人数)グループ
 クラデニエッツと剣客集団はPCたちから5m、錬金銃兵は10mの距離に位置している。
 レジーナとニコラは、戦闘に巻き込まれることはない(ダメージを与える行為や効果の対象にならない) 同様にイヴァンも戦闘には参加しないが、聖痕と特技で配下を援護する。勝利条件を満たすと逃走する。
・イヴァンの特技
〈帝王学〉3〈鼓舞〉3
 セットアップに宣言。シーン(選択)の対象のAP+6、ダメージ+6。
・イヴァンの聖痕
《ファンタスマ》《コロナ》《ステラ》《オービス》《マーテル》(プレイヤー3人の場合、加えて)《アクシス》《デクストラ》
◆描写
 決闘会場の大通りは、修羅の巷と化した。イヴァンの身体から邪悪なオーラが立ち上り、それが配下のごろつきたちに伝播してゆく。彼らは目を血走らせ、PCたちに襲いかかる!
▼セリフ:イヴァン
「まさか聖痕者だったとはな。まずは忌まわしい決闘代理人とその仲間から、血祭りにあげてやる」
「お前たちさえ来なければ、すべてうまくいったのだ。レジーナとニコラはその後、ゆっくり始末すればよい」
「捧げよ聖痕、この辻は殺戮の巷なり!」
(勝利条件を満たした)「くそっ、ここでくたばるわけには」(逃走する)
▼セリフ:クラデニエッツ
「PC①――ッ! 貴様だけは許さん!」
「もはや決闘など関係ない。この屈辱、死をもって償え! 我が魔剣の露となるがいい!」
(倒した)「1日に2度敗れるなど……無念」(魔剣が折れる)
▼セリフ:イヴァンの配下たち
「旦那が特別ボーナスを出してくれるとよ。ひひひ、死ねぇ!」
(勝利条件を満たした)「と、とてもかなわねぇ~!」(逃げ出す)
▼セリフ:レジーナ
「叔父さま、これ以上罪を重ねないでください!」
◆結末
 戦闘に勝利したら、シーンを終了する。

※クラデニエッツの戦闘データ
▼アルカナ
グラディウス=ディアボルス=フィニス
▼能力値&技能
体格:11 反射:14 共感:9
知性:12 希望:12
HP:65 AP:13
〔軽武器〕3 〔回避〕1 〔自我〕1
▼装備
武器:銘無しの魔剣(ロングソード/魔器)〔軽武器〕
攻:S+11 受:5 射:至近
スタディットレザー S5/P4/C4
▼特技データ
・マイナーアクション
〈瞬発〉
効果:自身の物理攻撃のダメージ+5
・メジャーアクション
〈魔技:軽武器〉〈弱点看破〉
技能:〔軽武器〕4 代償:-
判定値:10 クリティカル値:2
対象:単体 射程:至近
効果:ダメージ+1D10。
・常時
〈不老不変〉〈主我〉〈魔剣強化〉2〈苦痛耐性〉5

●シーン13:悪党の末路
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 殺戮者イヴァンを追い詰めるシーン。イヴァンは命乞いをして隙を作ろうとするが、エキストラであり成功することはない。PCは宣言のみでイヴァンを成敗することができる。成敗すると、[聖痕の解放]が発生する。
◆描写
 決闘会場から逃げ出そうとするイヴァン。PCたちはその前に立ちはだかる。イヴァンは命乞いを始める。
▼セリフ:イヴァン
「頼む、金は出す。命だけは助けてくれ」
「お、お前は聖痕者だろう。なら私と同じだ、組もうじゃないか。この力をただ振るうのではなく、ともに大儲けするために使うのだ!」
(乗った)「ぐへへ、バァ~カめ!」(ナイフを取り出し、不意を討とうとする)
(断る、不意討ちを防ぐ)「ちくしょう、だめかー!」
◆結末
 [聖痕の解放]の処理を終えたら、シーンを終了する。終局ステージへ。

終局ステージ

●シーン14:法の裁き
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 決闘裁判の後始末のシーン。イヴァンの犯罪(兄殺し)は立証され、それに付随して数々の余罪が明るみになる。PC③はその後始末を執行する。
◆描写
 PC③はイヴァン・コンラートの余罪を捜査していた。本人は死んでも、その悪の芽はブッフホルツの街のあちこちに残っている。暴行、恐喝、収賄など、枚挙に尽きない。
▼セリフ:顔に傷のあるごろつき
「あれもこれも全部、イヴァンの旦那の命令でやったことですよ。あたしは悪くないんです」
「お目こぼし願えませんかね? だ、駄目ですかい……」
▼セリフ:領主
「わ、わしはイヴァンのやつに乗せられて協力していただけだ」
「ど、どうか“禿鷲の巣”には、よろしく伝えて欲しい」
◆結末
 会話を終えたら、シーンを終了する。

●シーン15:別れの時
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC②自動登場。レジーナとニコラのコンラート姉弟との別れのシーン。
◆描写
 決闘裁判とその後の処理がひと段落し、PC①とPC②がふたたび旅立つ日がやってきた。ブッフホルツの街の出口まで、レジーナとニコラが見送りに来た。
▼セリフ:レジーナ
「叔父の犯罪が証明され、この街に正義がもたらされました。あたたのおかげです、PC①」
「あなたさえ良ければ、この街に残って、私と――いえ、何でもありません」
「あなたの旅路の無事を祈ります」
▼セリフ:ニコラ
「PC②さん、お世話になりました。また、旅のお話を聞かせてください」
◆結末
 会話を終えたら、シーンを終了する。

●エピローグ
 最後に、以下を読み上げる。

 時は西方暦1166年。ブッフホルツの決闘裁判は、こうして落着した。
 この事件は、辺境の街の小さな裁判記録として、歴史の中に埋もれていくことになる。真実は、この時代を生きた当事者たちの記憶にのみ残される。
 これは、正義が剣によって証明された時代の物語。

 これにてアクトは終了だ。お疲れ様でした。

※長すぎるため、スキ!をしたい方はこちらまで

 「ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション」は鈴吹太郎/有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。この記事は同社の2次創作規約のもとで作成されています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?