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TRPG配信「暗闇の中、傍に立つ」 #傍に立つ01 シナリオ製作者による解説、または余計な補足

これは何の記事?

 2021年1月11日、まだら牛さんのYoutubeチャンネルにおいて、新クトゥルフ神話TRPG「暗闇の中、傍に立つ -Stand by me, in the Dark.」(#傍に立つ01)が配信されました。プレイヤーは藍月なくるさん、ディズムさん、栗山やんみさんという超豪華メンバーでした。

 この配信が超面白かった!のは、言うまでもないことです。その面白さの99%はKPのまだら牛さんおよび、プレイヤーの御三方の功績です。残り1%くらいは、まあ、シナリオの功績でいいかもしれません。
 当記事は、そんなシナリオの製作者である筆者視点での、シナリオ解説・補足です。当然ですがネタバレ全開です。未視聴の方は先にご覧になっていただければ幸いです。
 現在、本シナリオは筆者のBOOTHにて頒布中です。

 なお、頒布中のシナリオの内容と、配信でプレイされた内容とは、必ずしも一致しません(配信で使用するにあたってあちこち変更されています) だからといって、ここで「配信ではこうだったけど実際のシナリオでは~」みたいなことを書く気はありません。あとプレイヤーさんがいかにすごいかは、見てりゃよ~くわかるので、これも補足するまでもないことです。じゃあ何を書くかって? くだらないことを書きます。
 さて、前置きはこの辺にして。以降はアーカイブを見ながら、タイムスタンプごとに解説を入れていくことにしましょう。

0:08:35「Stand by me, in the Dark」

 この英文サブタイトルは、言わずと知れた青春映画の傑作「スタンド・バイ・ミー」と、3Dゲーム黎明期のクトゥルフ神話ものアドベンチャーゲーム「アローン・イン・ザ・ダーク」の合成です。けっこう気に入ってます。ただ、タイトルは「ちょっとダサい日本語にしたい」と思い、そのまま直訳したものを採用。こちらは英文サブタイトルとして残しました。

0:08:40「あの夜、ぼくらの冒険は、一匹の怪物と一緒だった」

 よく「グッとくる!」と言っていただけるコピーです。ありがてぇ!
 ですがこれパクリです。パクリ元は筆者のベストアニメ「機動戦士Vガンダム」です。2015年に発売された同作のBD BOXのCMのキャッチコピー「宇宙世紀153年、ぼくらの旅は、白いモビルスーツと一緒だった」が大層気に入っていたため、臆面もなくパクリました。

0:09:55「うちは農家だからね。こんな鍵ちょちょいのちょいだよ!」

 この雑なキャラ立ては、人気ホラーコミック「彼岸島」を大いに参考にしました。彼岸島には「家が文房具屋だから」という雑な理由づけで、困難な状況を雑に突破するキャラクターがいるのです。筆者はそういう「雑さ」がたいへん好きなので、それに倣ったというわけです。
 「芦屋まとい」のネーミングも、当初「芦手まとい(あしで・-)」だったりしました。いくら何でも「あからさますぎる」と反省し、ちょっとだけ捻りました。

0:30:25「ロード・オブ・ザ・リングの……?」

 察しの通り、彼の元ネタというかイメージソースは映画「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」、その原作「指輪物語」「ホビットの冒険」に登場するゴラム(瀬田貞二訳の原作ではゴクリ)です。よくシルエットだけで察したものです。
 スミオこと「小栗佳生(おぐり・すみお)」のネーミングも、この元ネタを踏襲しています。姓の「小栗」は、「ゴクリ」をもじったもの。名前の「スミオ」は、「ゴラム/ゴクリ」のかつての名前「スメアゴル」をもじったものです。

0:31:20「あなたたちは気を失いました」

 探索者に「気を失わせる」のは、非常に使い勝手のよい場面転換法です。一度シーンを断絶させたい時は、ガンガン気を失わせましょう。

0:36:30「ししし」「ししし」「ししし」

 言いにくいなこの笑い声。

0:38:45「首に下げてるのは何?」

 スミオの立ち絵イラストの発注は「食屍鬼」「ロード・オブ・ザ・リングのゴラムっぽいやつ」という基本情報に、「宝物を入れる袋を下げている」という注文を加えました。なので、バッチリ反応してもらえて嬉しいです。
 しかしトレーディングカードゲームのデッキ2つぶんが入ってるってことは、けっこう頑丈ですねこの袋。

0:40:25「ギョーカイ? 石のことか?」

 凝灰岩(火山灰が堆積してできた石)のことと思われます。このスミオは地質にくわしいようです。

0:46:00「幅3mほどの深い亀裂」

 ルールブックP.68によれば、〈跳躍〉ロールのレギュラー成功で「助走ありで自分の身長の2倍に等しい距離を水平方向に飛ぶ」ことが可能です(筆者としては、助走つきを想定していました) なのでルール的には不自然じゃないんですが、リアルに考えるとやっぱドン引きしますね。自分も今さら気付きました。
 「踏み切りをミスったら死ぬプレッシャー」「グラウンドのように足場が整備されていないだろう」などの状況を考慮すると、距離まわりは再考してもよいかもです。

0:54:16「パンツ覗かないでよパンツ!」

 筆者はこの「パンツ見えちゃうかも問題」について、執筆時はまったく考慮しておりませんでした。配信で見ながら「あっ、ヤッベ」となった箇所ナンバー1です。
 ちょっとだけマジメな話をすると、たとえゲーム内の事象であっても、セクハラになることはあります。過剰反応するのもアレですが、注意するに越したことはありません。みなさんもお気をつけください。
 「登る順番」を決めると、こういう細かいところに意識が行ってしまうので、ボカした方がよかったかもしれません。実はシナリオ的に重要なのは「誰が最後に登るのか」だけです。なのでこれからこのシナリオを遊ぶKPさんは、「最後だけ決める」とするとよいでしょう。

0:58:40「手を掴む!」

 大正製薬の栄養ドリング「リポビタンD」のCMの「ファイトー!」「イッパーツ!」を想像しながら書いたシーンです。本気でどうでもいいですね。
 余談ですが筆者はこのケイン・コスギによるリメイク版CMが好きです。「Generation gap」(無駄にイイ発音で)

1:03:15「10年ほど前に流行した古いトレーディングカードゲーム」

 このシーンの趣旨は「昔の遊びをきっかけに、変わってしまったお互いのことに気付く(確信する)」というものです。そのきっかけとなる遊びが、なぜトレーディングカードゲーム(TCG)になったのかについて。
 色々と理由はあります。大きなところでは、
・現代日本の探索者(およびそのプレイヤー)が、子どもの頃に遊んでいておかしくない
・持ち運びできる
・電源に依存しない
・遊び方に個性が出る
・異世界でTCGをやる、というシチュエーションが奇妙で面白い
 あたりです。別の遊びで表現できないか?とも考えたのですが、意外になかったんですよね。
 なお、どんなTCGをモチーフにするか、シナリオで特に指定はしていません。遊戯王になるか、マジック:ザ・ギャザリングになるか、あるはもっと他のタイトルになるかは、プレイグループ次第でしょう。

1:17:15「スミオのロールプレイむずい」

 スミオのロールプレイは、実際難しいと思います。もしこのシナリオを遊ぼうと考えている方は、スミオのセリフを無理に喋らなくてもよいかと思います。内容をかいつまんで説明し「このようにスミオは言った」で済ませてしまうのが楽です。

1:21:50「ギスギス草」

 ギスギス草に、データ的な意味はほとんどありません。主にロールプレイ面での変化を促進させる効果を期待して、気楽にランダムイベントに入れました。うまく使えばたぶんめっちゃ面白くなるし、そうでなくても一瞬卓が盛り上がれば十分。あんまりウケずスルーされても別に損にはならないし、時間がなければ削ってもいい、くらいの気楽さです。
 そうしたら想像以上のものが出て来ましたね……いやほんとすごい。

1:25:00「カラゲンキ茸」

 こちらは「データ的に有利だから」食べると、面白いシーンが発生するというやつです。
 このように「データ的に有利なものに、描写・演出上のデメリット(吐く)をつける」ことは、探索者の「キャラクター性を大事にしたい」プレイヤーにとってストレスとなる可能性があります。なので、無理強いはしない方がよいでしょう。プレイヤーが本気で嫌そうにしていたら、いじらずにサクッと流してあげてください。

1:31:50「体にぬらぬらした粘液がついて、不快な思いをします」

 えー……ちょっとだけマジメな話をすると、たとえゲーム内の事象であっても、セクハラになることはあります(2度目) 注意するに越したことはありませんので、みなさんもお気をつけください。
 筆者も執筆時にもうちょっと留意するべきでした。プレイヤーが本気で嫌そうにしていたら、いじらずにサクッと流してあげてください。

1:38:20「あなたたちは暗闇の中へ吸い込まれて行きます」

 探索者に「気を失わせる」のは、非常に使い勝手のよい場面転換法です。一度シーンを断絶させたい時は、ガンガン気を失わせましょう(2度目)

1:42:50「淡い光を放つ苔が自生している不思議な空間」

 コメントで「光が苦手なのにガストここに住んでるの?」とツッコまれていました。(こういうのはなるべく書くつもりはなかったのですが)シナリオ本文では「この光は例外」と補足を入れています。恐らく光の波長が、ガストが苦手とするものとは違うのでしょう。
 なぜそんな設定にしなければならなかったか? それはこのシーンが「ちょっと離れたところからスミオの様子を伺う」そして「隠れてスミオに近づく」というシチュエーションだからです。この場所が真っ暗だと、照明を使わなければ離れた場所の状況がわかりません。ですが照明を使うと、それだけでガストに気付かれてしまうでしょう。そうなると、シチュエーションの性質が変わってしまうのです。そういうところから逆算して、このような環境になりました。
 なお、H.P.ラヴクラフト「未知なるカダスに夢を求めて」において記述されるガストの巣「ズィンの窖(あなぐら)」と、このホール(燐光堂)は別のものであると筆者は考えています。そもそも「ブホールの大穴」や「ガグの地下都市」自体、「未知なる~」の記述とこのシナリオのイメージは乖離しています(筆者が制作上、都合がよいようにアレンジしています)

1:44:50「あいつら知能があるんだかないんだか」

 ガストの知能ですが、ルールブックP.280のデータによれば〈INT〉は15しかありません。この値は同P.35によれば「物覚えが悪い。最も初歩的な計算しかできず、初心者向けの本しか読めない」程度ということです。ともあれ、鍵つきの鉄枷を扱うことくらいはできそうです。ですが、自分たちで作れるほどではないでしょう。ではこの鍵つきの鉄枷は誰が用意したのか? 筆者の想像ですが、かつてガストを創造した者たちが残したものを、見よう見まねで使っているだけなのでしょう。

1:46:20「ブホールのぬらぬらがついているので」

 「ロールに失敗した方がボーナスがある」というのは、実は大変よろしくないです。「技能を伸ばしていてちゃんと成功したのに、逆に失敗した方がよかった」というのは、そりゃションボリでしょう。もし〈幸運〉を消費してたりすると、目も当てられません。なので、基本的には避けるべきです。
 ですが「新クトゥルフ神話TRPG」には、〈アイデア〉ロールのように「成功するとデメリットを受ける」ロールが存在します。また、成功したロールには成長するためのチェックを付けられるため、成功自体が完全に無駄にはなりません。この2点があるため、「たまにはそういうのもアリか」と受け入れられる可能性は高いと判断し、このようにしました。

1:58:50「スミオは囮になってあなたたちを助けようとしています」

 コメントにて指摘されていますが、「ガグは食屍鬼が苦手」という設定があります。ですがH.P.ラヴクラフト「未知なるカダスに夢を求めて」には、「ガグは食屍鬼怖いけど、自分の住処にいりゃそんなもんアテになんねーよ」という記述があります。個人的なイメージでは「ガグにとっての食屍鬼」は「人間にとってのゴキブリ」ぐらいの感覚です。このガグは「家でゴキブリを見たら殺しにかかるタイプ」ということですね。

2:08:50「ガグは苦しそうに悶え、断末魔とともに動かなくなりました」

 ガグに「地上に出ると死ぬ」という設定は、実はありません。H.P.ラヴクラフト「未知なるカダスに夢を求めて」の記述には、単に「地上に出ることを禁じられている」とあるだけです。ここはその記述を膨らませ、クライマックスの最後のカタストロフに利用しています。
 ところでさっきから「HPLはこう書いてるよ」みたいなことを言いつつ、一方で「HPL作品の記述は無視します」みたいなことも言っていますね。なんかこう、都合が良すぎると思われるかもしれません。ですが自分のやりたいことのために、原典からイメージを拝借して膨らませたり、あるいは無視したりするツラの皮の厚さは、TRPG――特に「クトゥルフ神話TRPG」のような「原典」の存在するタイトル――を遊ぶ上で、必要な資質ではないかと思うのです。はい、開き直りです。

2:10:55「あっちは大変だけど、何とかなるよ」

 これは筆者の勝手なイメージですが、スミオはなんだかんだで孤独をけっこうエンジョイできるタイプだと思っています。ひとりで残っても、主観的にはそれほど不幸ではなさそうというか。それでも、久しぶりに友達に会ってしまえば、心揺さぶられてしまうこともあるでしょう。大穴で突然情緒不安定になったように。
 もちろん、それぞれの卓にそれぞれのスミオがいます。筆者のイメージはあくまで筆者個人のものです。ただまあ、このくらいに考えて気楽に別れられる方が、プレイヤーの精神衛生上も楽だと思います。

2:18:30「これにて終了です。お疲れ様でした!」

 総プレイ時間、休憩込みで2時間と20分ほど。
 シナリオ本文には、プレイ時間は3~5時間ほどと書きました。これはテストプレイ時はだいたい3時間くらいかかったこと。また筆者のプレイスタイルが「割とサクサクと進行し、あまりロールプレイなどを盛らず淡泊に遊ぶ」タイプであること(筆者以外の方が筆者のシナリオを回すとき、筆者より短くなるケースはそうそうない) これらを考慮すると、このタイムは驚異的に早いと言えるでしょう。
 これはKP、プレイヤーのみなさんが「配信」慣れしており、「停滞して何も進まない時間」を作らずにサクサク進行できたことが大きいのでは、と愚考します。実際の卓では、もうちょっと「間」が多くなり、より時間がかかるのではと予想しています。

 ともあれ本当に、すばらしい卓でした!
 「暗闇の中、傍に立つ」のプレイ配信は、1/16の #傍に立つ02 もあり、こちらも大変盛り上がりました。

 こちらについても、解説記事を書くかもしれません。ただ、今回大きなところは書いてしまったため、ボリューム的にそんなに読み応えがなくなりそうで、ちょっと考えています。
 それではここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。よろしければ #傍に立つ02 およびシナリオの方も視聴いただければ幸いです。ではでは。

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