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猿の王国:トーキョー・ナイトメア シナリオ

 この記事はTRPG「トーキョー・ナイトメア」用のシナリオです。

 トーキョーの秘境・奥多摩を舞台に、ヒトと猿による“万物の霊長”の座を賭けたバトルの幕が開きます。アーバンアクション!
 ダダーッと書いてあるのでメチャクチャ長いです。ですが基本的には、一度ザっと目を通したら、あとは遊びながら順番にシーンを処理するだけで進行できるでしょう。プレイヤーはプレアクト部分まで読むことができます。
 あと一部ショッキングなシーンが存在します。遊ぶときは注意してね。

プレアクト

■シナリオデータ
▼プレイ時間
 2時間程度
▼プレイヤー人数
 2~3人
▼必要サプリメント
 プレイヤーは『TNM1』の範囲でプレイできる。RLは加えて『TNM2』『TNM3』が必要だ。

■アクトトレーラー

トーキョー奥多摩、檜山(ひのやま)村。
この山深い村を、ひとつの脅威が襲っていた。
俊敏にして狡猾。
強欲にして残虐。
知性化された恐るべき猿たちが人里を襲う。
獣を超え、ヒトを超え。
今、新たなる霊長が誕生する!

トーキョー・ナイトメア
「猿の王国」

山から悪夢(ナイトメア)がやってくる。

■レギュレーション
▼経験点の使用
 0~40
▼必要な神業
 防御系1~3

■シナリオハンドアウト

キャスト共通ハンドアウト
〈コネ:エヴァ〉 スート:ダイヤ
QS:「掃除屋」(※)「電子世界の騎士」「荒事屋」(記述順)
推奨スタイル:なし
 キミ(たち)はトーキョー奥多摩にある檜山(ひのやま)村に依頼され、村を苦しめる猿害対策のために呼ばれた。だが村についたキミたちは、そこで異常な光景に遭遇する。村は武装化した猿の群れに占拠され、彼らの「王国」となっていた。猿たちに狩られかけるキミたちを救ったのは、エヴァと名乗る謎の人物だった。
【PS:猿と戦う!】

※「掃除屋」
 必要サプリメントに含まない『TNM4』掲載のサンプルキャラクターだが、『TNM1』掲載データで構築されている。公式サイトからDLできる。

■キャスト間コネクション
 左隣のキャストのコネを取得すること。オンラインの場合、何をもって「左」とするかはRLが判断せよ。

RL情報

RL用情報

■注意事項
 このシナリオの内容は、動物虐待表現であると取られる可能性がある。チンパンジーは非常に知能の高い動物であり、本シナリオ中の表現に強い嫌悪感を覚えるプレイヤーもいるだろう。RLは十分留意した上で、このシナリオを遊ぶか決めてほしい。

■ストーリー
 トーキョー・奥多摩の檜山(ひのやま)村。村の近くにある千早霊長類研究所では、猿を知性化する技術が確立。その成果である、ヒトと同等の知性を獲得した猿たちが誕生した。だが知性化猿たちは人類に反旗を翻し、施設を脱走。その際、警備のPMC兵士たちの武器を奪い、武装化まで果たす。武装化した猿たちは村を制圧。村人たちを奴隷化し、村を自分たちの王国とした。
 キャストたちはこの村に、猿害対策のために呼ばれてやってきたところを、事件に巻き込まれることになる。かくして村を舞台に、キャストたちと猿たちの対決が始まる。
 このアクトは、知性化猿たちを倒し、村を解放することで終了となる。

■重要人物

セガールとアンソニー
 千早霊長類研究所で生み出された知性化チンパンジー。そのボス格となる2頭がセガールとアンソニーだ。狂暴な猛獣(※)としてチンパンジーの性格を色濃く残しており、人類に反旗を翻す。
 セガール(カブキ、カブトワリ、ヒルコ◎●)は銃器の扱いに長けたボス。アンソニー(カゲ、カタナ、ヒルコ◎●)はナイフによる奇襲・接近戦を得意とする副ボスだ。2頭はボスの座をめぐって激しく争っている。

※狂暴な猛獣
 チンパンジーの狂暴さはよく知られている。有名どころでは、2006年に人間を襲って殺害した「ブルーノ」という個体の例がある。ショッキングな内容だが、興味があれば調べてみてもよいだろう。チンパンジーは「猛獣」なのだ。現実の日本の法律でも「特定動物」(人間の生命や財産を脅かす危険性の高い動物)に指定されている。
 ぶっちゃけ武器を使わなくても十分ヤバい。あとヒルコのデータ的にも「通常の武器より、生身とか生体武器を使う方が強い」のだが、「知性化され危険度を増した」表現として、武器を用いることした。

エヴァ
 知性化チンパンジー。スマートフォンを使いこなし、音声合成アプリを介して会話する。ハッカーとして非常に高い才能を持つ(ニューロ=ニューロ◎、ヒルコ●)
 ウェブを介して人類社会に触れていた結果、猿よりヒトに近いアイデンティティを持っている(メンタリティはヒトとほぼ同じ) “ヒトに近づきすぎた”失敗作として、他の猿たちとは隔離されていた。セガールたちの暴走を止めようとしている。
 キャストたちとは協力関係を築きたいと考えている。

オープニングフェイズ

■登場について
 キャストたちは常にチームを組んで行動するものとする。シーンプレイヤーは任意のキャストとなる。そのため個々のシーンにおいて、登場判定とシーンプレイヤーを規定していない。

●シーン1:猿害の村へ
◆解説
 檜山村から猿害対策の依頼を受け、村へ向かうシーン。キャストたちは、同じく檜山村に向かう隣町の農家・タケさんの車(※)に便乗している。
 依頼の詳細は以下の通り。プレイヤーに説明すること。
・檜山村は人口200人ほどの小村。未舗装の林道でしか行き来ができないトーキョーの秘境。
・猿(ニホンザル)たちが農作物を食い荒らし、経済的被害が出ている。住人への直接被害(投石など)も出始めている。
・行政による通常の駆除では限界(※)があり、超法規的措置として、キャストたちのような「裏社会のプロ」の力を借りることにした。
・依頼内容は猿の撃退。鳥獣保護法違反に関しては黙認される。
・報酬はひとり3報酬点、前金としてすでに得ている。
▼描写
 トーキョー、奥多摩地域にある檜山村を目指すキャストたち。村へはバスが通っておらず、道もわかりにくい。そのため隣町で、村によく行く農家のタケさんの車に便乗して向かうことになった。タケさんの車は、舗装されていない林道を進んでいく。
▼セリフ:農家のタケさん
「檜山村へは、この林道でしか行けねえ。あんたら、街の人だろう? 何だってあんなへんぴな村に」
「ふうん、猿退治のためにわざわざねぇ。まあ、おれも村に用事があったし、ちょうどよかったよ」
「実は村とは、何日か前から電話が通じなくなってんだ。この間の地震で、どっかで電話線が切れちまったんだろうが。直してもらうにも何日もかかるんだ」
「見えてきた。あれが檜山村だ」
◆結末
 林道の先に、山あいの小さな村が見えてくる。シーン2へ。

※タケさんの車
 タケさん(62歳男性)は檜山村と取引があり、週1のペースで村に行く。もしキャストが自前のヴィークルで行きたいと希望したなら、逆にこのタケさんが「道案内として同乗する」ことになる。その場合は、タケさんの車が故障したものとする。
※行政による駆除では限界
 猿は狩猟鳥獣ではないため、行政が陳情を受け、地元の猟友会などに駆除(捕獲)を依頼するのが一般的だ。檜山村がキャストたちを雇ったのは、それだけでは被害の抑制に不十分で、やむを得ないと判断してのことだ。“黄昏の時代”ではそう珍しいことではないのだろう。なお、キャストたちが呼ばれるきっかけとなった猿害は、原因のニホンザルの群れが知性化猿たちによって追い払われており、すでに解決している。
※この間の地震
 これにより檜山村と外部を結ぶ電話線が切れて不通になっている。携帯電話は山で電波が遮断されるため通じない。キャストたちのへの依頼は、地震の前に行なわれた。また後述するが、知性化猿たちが脱走するきっかけとなったのもこの地震だ。

●シーン2:スーパーモンキーズ
◆解説
 檜山村で知性化猿と遭遇し、襲われる。その際、ドローンを操るエヴァに助けられる。
 キャストたちは全員、知性化猿の攻撃を1回受ける。攻撃の達成値は13。リアクションを行なうこと。攻撃力はP+8。もしキャストが死亡した場合、エヴァが《電脳神》を使用して防ぐ。
▼描写①
 村の様子がおかしい。住人の姿が見えない。村の中心部にやってくると、奇妙な光景を目撃する。猿の群れが無人の村を、我が物顔でのし歩いているのだ。それもただの猿ではない。話に聞いていたニホンザルではなくチンパンジー。しかも人間の服を着て、銃火器で武装している! 猿たちはキャストたちを発見すると、襲いかかってくる!
▼セリフ:農家のタケさん
「おかしいなぁ、人っこひとりいねぇ。もともと過疎の村だったけど」
(襲われた)「ひ、ひええ~!?」(逃げ出す(※))
▼セリフ:知性化猿軍団
「ウキキーッ、キーッ!(訳:人間だ、やっちまえ!)」
▼描写②
 猿たちはその身体能力と武装で、キャストたちを翻弄する。そこに1機のドローンが飛来し、スピーカーから合成音声で呼びかけてくる。どうやら敵ではなさそうだ。ドローンから投射されたスタングレネードにより、猿たちは無力化される。
▼セリフ:謎の合成音声(エヴァ)
「スタングレネードを投射します。防御姿勢(※)を取ってください」
「投射完了。急いでここを離れましょう。彼らはまだまだいます」
「私はエヴァ、敵ではありません。このドローンについてきてください。安全なところまで誘導します」
◆結末
 キャストたちがドローンを追ったら、シーン終了。

※逃げ出す
 タケさんはこの後、別の猿たちに捕獲され、村の集会所に連行される。アクトには登場しない。
※防御姿勢
 背を向けて目と耳を塞ぎ、口を開ける。閃光音響手榴弾(スタングレネード)に対する防御姿勢だ。

リサーチフェイズ

■クライマックスの条件
 千早霊長研究所にたどりつくことで、クライマックスに移行する。

●シーン3:猿の王国
タイミング:リサーチフェイズ最初のシーン
◆解説
 エヴァから檜山村の状況を伝えられるシーン。エヴァは以下の内容をキャストたちに教える。
・数日前、突然武装化したチンパンジーが山から現れ、村を制圧した。
・電話線を切断され、外部との連絡もつかない(携帯電話も通じない)
・武装した猿たちの正体は不明。わかっていることは、銃火器を使いこなす高い知能を持ち、非常に攻撃的だということ。
・住人たちは村の集会所に集められ、閉じ込められている(集会所のアドレスを得る) 今のところ犠牲者は出ていないようだが、高齢者が多く、長くは保たないだろう。
・外部との唯一の接点である林道は猿が見張っており、逃げようとすれば襲ってくる。林道は猿の最も得意とする環境であり、戦えば確実に敗北する。村からは出られない。
 エヴァ自身に関しては、以下のように説明する。
・エヴァ自身が何者であるかは明かさない。ただ、猿と戦うためにキャストたちに協力を求める。
・エヴァは猿への対抗手段を持っているが、それが何かは明かさない。
・エヴァの潜伏場所へ来ればすべてを教える。
▼描写
 ドローンに導かれ、無人の民家に逃げ込むことができた。猿たちは近くにいないようだ。ドローンを操るエヴァが、状況を説明する。
▼セリフ:謎の合成音声(エヴァ)
「この村は、あの武装化した猿たちの制圧下にあります。外部への連絡も、脱出も不可能です」
「私はエヴァ。隠れて猿たちと戦うチャンスを狙っていました。みなさんが来たことは幸運でした。私だけでは、どうにもならないからです」
(救助を待てば?)「待っている間に、被害がさらに拡大するでしょう」
「私は猿たちへの対抗手段を持っています。お願いです。私のところへ来てください。私は……」(ドローンが機能停止する)
◆結末
 被弾していたドローンは、肝心なことを伝える前に機能を停止する。
 キャストたちが猿と戦うことを決めたら、シーン終了。以降のシーンは「■村の探索」を参照せよ。

■村の探索
 リサーチフェイズでは、猿に制圧された村の探索を行ない、情報を集める。初期は以下のアドレスに行くことができる。
(アドレス:該当シーン)
・無人の民家:なし(シーン3の民家)
・集会所:シーン4
 リサーチフェイズ中にアドレスを得られる場所は以下の通り。
・診療所:シーン5
・ヘリポート:シーン6
・千早の私道:シーン7
・千早霊長類研究所:シーン8

●シーン4:集会所
タイミング:集会所へ向かった
◆解説
 村の集会所へ向かったシーン。集会所は知性化猿の群の大半(※)が集まっており、内部に村人を閉じ込めて楽しんでいる。
 〈知覚〉目標値18の判定に成功すると、観察によってボス格の猿を判別できる。2頭の猿(セガールとアンソニー(※))が、ボスの座をかけて争っている様子を観察する。アンソニーが《不可知》で奇襲をかけるが、セガールが《チャイ》でそれを防ぎ、逆に組み伏せる。
▼描写①
 キャストたちは集会所を遠くから観察している。村人が武装した猿に引っ立てられて、集会所の中に押し込められる。猿たちはその様子を見て嬌声を上げている。檻に閉じ込められていた自分たちの意趣返しでもしているようだ。猿たちは大勢で、まともに戦って相手できる数ではない。
▼描写②(〈知覚〉判定に成功)
 猿の群れを観察していると、ボス格の猿を判別できる。アサルトライフルを持ち、ギャングスタ風の服装を身に着けた猿だ。どこからか見つけてきたオーディオで音楽をガンガンに鳴らし、おにぎり(※)を頬張っている。そのギャングスタ風の猿に忍び寄る、特殊部隊風の装備の猿。2頭はボスの座をかけて争っているようだ。
▼セリフ:特殊部隊風の猿(アンソニー)
「ウキキーッ!(訳:ボスの座はもらったー!)」(《不可知》を使用)
▼セリフ:ギャンクスタ風の猿(セガール)
「キキッ、キーッ!(訳:バカめ、見え見えだぜ!)」(《チャイ》で防ぎ、逆に組み伏せる)
◆結末
 これ以上観察していては、逆に発見される可能性が高い。キャストたちが移動したら、シーンを終了する。

※群の大半
 ゲスト&トループデータの知性化チンパンジー(ヒルコ6レベル)トループが大量にいるものとする。まともにやりあえば勝ち目ない。
※セガールとアンソニー
 このシナリオでは、基本的に彼らの名前が呼ばれることはない。しかし、それではRLもプレイヤーもやりにくいだろう。いちいち「ギャングスタ風の猿」などと呼ぶのは大変だ。そのため、この名前は「キャストが便宜上、勝手に名付けたもの」として扱うとよいだろう。プレイヤーがよりふさわしい名称を考えた場合、それを採用して構わない。
※おにぎり
 捕らえた村人のおばあちゃんに握らせたものだ。村を制圧した際、農作業中だったおばあちゃんのお弁当を略奪。気に入ったので無理やり作らせている。具は梅干し。

●シーン5:診療所
タイミング:診療所へ向かった
◆解説
 村の集会所へ向かったシーン。診療所にはケガを負った村人が隠れている。猿に発見され、残虐な仕打ちを受けようとしている。
 村人を助けるなら、猿(知性化チンパンジー、ゲスト&トループデータ参照)1体との戦闘となる。勝利すると、村人から話を聞くことができる。
 この村人は、ヘリポート(※)で別の猿(エヴァ)に助けられ、この診療所で手当てを受けていた。キャストたちは村人の話から、エヴァの居場所であるヘリポートのアドレスを得る。
▼描写①
 診療所に近づくと、中から隠れていた村人と、猿が飛び出してくる。猿は村人をなぶって楽しむつもりのようだ。
▼セリフ:知性化猿
「キキキウキー!(訳:弱いものいじめ、たーのしー!)」
▼セリフ:村人
「だ、だれか助けてー!」
▼描写②
 猿から助けた村人は、キャストたちに礼を述べる。よく見ると、村人はケガをしているようだ。診療所にあった包帯で手当をしたようだ。
▼セリフ:村人
「助けてくれてありがとう」
「最初に猿が村を襲ったとき、撃たれたんだ。それでパニックになって、近くのヘリポートの方に逃げたんだ」
「ヘリポートで気を失う前に、ヘンな猿が近づいてきて、もうダメだって思ったのを覚えてる。気が付いたらここに寝かされていて、手当されていた。あの猿が助けてくれたんだと思う」
「そのまま隠れていたら、さっきの猿に見つかってさ。危ない処だったよ。人間が色々いるみたいに、猿にも色々いるんだろうな」
「もうしばらくここに隠れているよ」
◆結末
 会話を終えたら、シーンを終了する。ヘリポートのアドレスを得る。

※ヘリポート
 航空管制などの設備を備えた公共ヘリポートではない、最低限の設備だけの「飛行場外離着陸場」だ。救急医療時の対応のために設置されたが、その後、整備の費用を捻出できず荒れ果てている。正確には「ヘリポート跡」と言うべきだろう。

●シーン6:ヘリポート
タイミング:ヘリポートへ向かった
◆解説
 ヘリポートへ向かったシーン。ここにはエヴァが隠れている。エヴァはキャストたちに、ことの次第を説明する。
 説明を終えたら、エヴァはヘリでキャストたちを千早霊長類研究所へと連れて行く。ヘリに乗り込んだキャストは全員【感情】か【生命】の制御判定を行なう。失敗すると乗り物酔いにより吐き気をもよおす。
▼描写①
 キャストたちはヘリポートにやってきた。ブルーシートに覆われたヘリ(※)が駐機している。1頭のチンパンジーがそばに立つ木からするすると降りてくる。チンパンジーはスマートフォンを持ち、アプリを器用に操って合成音声を発する。その合成音声は、エヴァと名乗った人物のものだ。エヴァは、知性化されたチンパンジーだった。
▼セリフ:合成音声(エヴァ)
「無事だったようですね、みなさん。よく私のところまで来てくれました」
「すべてをお話しします。私たちがなぜ生まれ、そしてこの村を占拠したのかを」
「最初は、アルツハイマー病の治療薬開発研究の副産物でした。試薬を投与されたチンパンジーに、知能の著しい向上が認められたのです」
「私たちは千早霊長類研究所で、この知性化研究のために飼育されていました。ですが先日の地震で施設の電源が落ち、セキュリティが停止しました」
「知性化チンパンジーたちは脱走し、残忍な本能のままに、研究所にいたヒトたちを皆殺しにしました。その際、警備のPMC兵士の銃を奪って武装化を果たしました」
「彼らは手近な檜山村を襲い、瞬く間に制圧しました。そこからは、みなさんが見てきた通りです」
(お前はどうなんだ)「私は彼らとは違います。私は失敗作なのです。ヒトに近づきすぎたため、彼らとは隔離して育てられました。私のアイデンティティはヒトのそれであり、もはや猿として生きられません」
(対抗策があると言ったな)「それは研究所で説明しましょう」
▼描写②
 ブルーシートを外し、ヘリの操縦席に意気揚々と乗り込むチンパンジー。キャストたちにも乗るように手招きする。キャストたちがヘリに乗り込むと、ローターが回転し、機体が宙に浮かび上がる。
▼セリフ:エヴァ
「このヘリで研究所へ飛びましょう」
「放置されていた機体ですが、最低限の整備は済ませました。燃料はタンクに、ギリギリ研究所まで飛べる程度は残っています」
「操縦は私がやります。今どきのチンパンジーはヘリの操縦くらいできるんですよ」
「おかしいですね。マニュアルでは確かこう……」(ヘリが大きく揺れる)
◆結末
 山向こうの研究所を目指し、ヘリは飛び立っていく。シーン8へ。

※ブルーシートに覆われたヘリ
 山岳輸送用のものだ。飛行中のトラブルでここに緊急着陸したまま、運用する会社が倒産。現在は管財人の管理下に置かれている。倒産時のゴタゴタで会社資産の整理・売却が進んでおらず、このヘリも塩漬け状態にある。ブルーシートを被せたまま放置されているのは、そういうわけだ。

●シーン7:千早の私道
タイミング:千早の私道へ向かった
◆解説
 千早の私道へ向かったシーン。私道は切り立った崖の脇を通っており、先日の地震の影響で地盤が緩んでいる。崖崩れが発生する。
 キャスト全員、〈知覚〉か〈運動〉目標値15の判定を行なう。成功したキャストは崖崩れの予兆を察知した(〈知覚〉)か、急いでその場を離れる(〈運動〉)ことで、崖崩れから逃れられる。失敗したキャストは崖崩れに飲み込まれて「攻:I+12」のダメージを受ける。
 判定後、崖崩れにより私道は通行不能(※)となる。研究所へ到達することはできない。
▼描写
 千早霊長類研究所へと繋がる私道。私道へのゲートには警備もなく、侵入自体は容易だ。私道は切り立った崖の脇を通っており、崖崩れ注意の看板が見える。通過しようとしたその時、看板の警告通りに崖が崩れ始める!
◆結末
 崖崩れにより、私道は完全に通過できなくなった。別の道を探すしかなさそうだ。処理を終えたらシーン終了。

※通行不能
 無理に通過しようとすれば、土砂に足を取られて思うように進めず、ゆるくなった地盤から再度崖崩れが発生する。神業(《脱出》《不可知》)を使用すれば、崩れた私道を踏破したり、危険な山中を迂回して通過することは可能だ。その場合、研究所に到達できる(シーン8へ)
 もしシーン6でエヴァに会わず研究所に向かう場合、彼女がいるのは研究所ということになる。シーン6でエヴァが話す内容は、シーン8でまとめて説明する。描写を適宜変更すること。

●シーン8:千早霊長類研究所
タイミング:千早霊長類研究所へ向かった
◆解説
 千早霊長類研究所のシーン。エヴァはここで、知性化猿たちへの対抗手段を説明する。それは知性化猿たちに埋め込まれた脳内爆弾(※)を起爆することだ。それにはこの施設の管理室を復旧させる必要がある。
▼描写
 千早霊長類研究所は、山の上に建つ巨大な施設だった。ヘリが屋上ヘリポートに着陸する(※)
 施設内にあちこちに死体が転がっており、激しい戦闘があったことが伺える。それらを横目に、案内するエヴァが知性化猿への対抗策について語る。やがて、破壊しつくされた管理室らしき部屋に通される。
▼セリフ:エヴァ
「知性化チンパンジーの研究目的には、軍事利用もありました。チンパンジーの身体能力に、命令を理解し遂行する知能が加われば、究極の暗殺要員となります」
「ですが制御不能な兵器などナンセンスです。彼らには暴走時のフェイルセーフとして、脳内爆弾が埋め込まれています。実に人間らしいやり方です」
「爆弾の起爆は、この施設の管理室から行なうことができます。先日の反乱時には、地震で電源が完全に落ちており、それができませんでした」
「この管理室のシステムを復旧し、脳内爆弾を起爆すること。それが事態を収束する唯一の方法です」
「私だけでは無理です。村を解放し、被害の拡大を防ぐためにも、力を貸してください」
◆結末
 管理室のシステム復旧への協力を承諾すると、「SPS:檜山村を解放する」(5点)を提示する。クライマックスフェイズへ移行する。

※脳内爆弾
 データ的には脳内爆弾(サイバーウェア、『TNM2』掲載)だ。ちなみにエヴァには埋め込まれていない。他の知性化チンパンジーのような「兵器扱い」ではないためだ。
※屋上ヘリポートに着陸する
 神社を経由せずに研究所に来た(シーン7で神業を使った)場合、この一文は省略する。

■情報収集

 このシナリオでは、情報収集の価値はそれほど高くはない。項目数も少なく、あっと言う間に調べ終わるだろう。
 リサーチフェイズ開始時から調査可能な情報は以下の通り。
【猿】【エヴァ】【檜山村の状況】

▼【猿】目標値10
技能:〈社会:テクノロジー、メディア〉
 この地域に棲息するニホンザルではなく、海外から輸入されたチンパンジーだ。チンパンジーは人間の幼児程度の知能を持つとされるが、村にいる個体は明らかにその範囲を超えている。
 チンパンジーはワシントン条約指定動物であり、動物園か専門の研究施設以外での飼育は難しい。付近に動物園はないため、何らかの【研究施設】から脱走したものと思われる。
→【研究施設】

▼【エヴァ】目標値10
技能:〈社会:テクノロジー〉〈コネ:エヴァ〉
 ドローンのスピーカーから合成音声で会話する謎の人物。優れたニューロのようだ。ドローンは非殺傷用の兵器(スタングレネード)を搭載するなど、民間軍事会社で主に運用されるタイプのものだ。ドローンの航続距離から、村内か村にほど近い場所から遠隔操縦している。

▼【檜山村の状況】目標値10
技能:〈知覚〉〈隠密〉
 村は猿たちが闊歩しており、人間はまったく見当たらない。村人は村の集会所に集められ、閉じ込められている。猿たちもほとんどがここにいる。遠くから観察すれば、ボス格の個体などを確認できるかもしれない。
 また、村に唯一の診療所に、誰かがいる気配がある。診療所のアドレスを得る。
→アドレス:診療所

▼【研究施設】目標値16
技能:〈社会:テクノロジー、ビジネス〉
 檜山村付近に、千早グループが千早霊長類研究所を設立している。類人猿の研究施設だとされるが、詳細は公開されていない。研究所はヘリコプターか私道でしか行き来ができない場所にある。私道は崖の傍を通っており、崖崩れの危険がある。千早の私道のアドレスを得る。
→アドレス:千早の私道

クライマックスフェイズ

●シーン9:モンキー・マジック
◆解説
 研究所の管理システムを復旧するシーン。FS判定(※)を行なう。
▼FS判定
 管理システムを復旧し、知性化猿たちの脳内爆弾を起爆するためのFS判定だ。シートは以下のとおりだ。

画像2

・イベント
初期:研究所の電源は地震で完全に落ちており、非常用発電機も猿たちが破壊している。これを修理しなければならない。まず、修理に使えそうな資材や道具を調達(〈知覚〉で発見、〈運動〉で運搬)する。
進行値3:発電機の修理に必要なものはそろった。実際の修理に取りかかる。技術の知識(〈社会:テクノロジー〉)や手先の器用さ(〈製作〉)が求められる。また、異変を察知した知性化猿たちが研究所に戻ってくる。次のカット開始時に、知性化チンパンジーを「プレイヤー人数-1」体を近距離に配置する。
進行値6:発電機が動きはじめ、施設に電力が戻る。次は管理室のシステムを再起動する。進行判定は〈電脳〉となる。知性化猿たちも次々に押し寄せる。次のカット開始時に、知性化チンパンジーを「プレイヤー人数-1」体を近距離に配置する。
クリア:知性化猿たちの脳内爆弾を起爆(※)できる。その時点で残っているトループは全滅する。
▼描写①
 管理室のシステムを復旧させるために、施設内を奔走する。
▼セリフ:エヴァ
「まずは電源の復旧です。発電機の修理に使えそうな、資材や道具を集めてきてください」
「これで発電機を修理できます! ですが猿たちも、こちらの動きを嗅ぎ付けたようです。作業を急ぎましょう」
「電力が戻りました! システムを再起動します!」
▼描写②(FS判定をクリアした)
 管理室のシステムが再起動した。知性化猿たちの脳内爆弾を起爆すると、彼らは一斉に倒れる。
▼セリフ:エヴァ
「システム再起動! 起爆準備完了!」
(起爆した)「……ごめんなさい」
◆結末
 知性化猿たちは全滅したと思われたが、まだ生き残りがいた。ボス格の2頭(セガールとアンソニー)が管理室に飛び込んでくる。シーン10へ。

※FS判定(補足)
・敗北した:復旧前に知性化猿の群れが押し寄せ、キャストたちとエヴァは皆殺しにされる。
・神業を使用した:任意の進行判定にジョーカーで成功したものとし、進行値を得る。
・エヴァの扱い:エキストラとして扱う。FS判定の途中から、トループが乱入してくるが、エヴァは戦闘に関わることはない。キャストたちが敗北すれば、エヴァも死亡する。
※起爆
 起爆時のイメージは映画「キングスマン」(2015、マシュー・ヴォーン/KADOKAWA)のクライマックスだ。BGMにエルガーの「威風堂々」を流そう。不謹慎だと思ったら、描写はしないでおこう。

●シーン10:モンキー・ピーク
◆解説
 知性化猿たちのボス(セガールとアンソニー)との対決を行なう。彼らは驚くべき機転で、脳内爆弾の起爆を阻止(※)していた。
 カット進行となる。距離は近距離。
▼描写
 2頭のボス格の知性化猿は、キャストたちに復讐の怒りをぶつけてくる。その首筋には、切り裂いたような傷があった。
▼セリフ:エヴァ
「あの傷! そうか、起爆信号を受信するインプラントを、自分で摘出した……なんてこと!」
▼セリフ:セガールとアンソニー
「ウキキ……キキーッ!(訳:ヒトめ……よくも仲間を!)」
「イーッキキキー!(訳:お前らを殺し、村人も皆殺しだ!)」
◆結末
 セガールとアンソニーを倒したら、エンディングフェイズへ。

※起爆を阻止
 脳内爆弾の摘出は不可能だ。だが起爆信号を受信するインプラントが、知性化猿の首の皮膚の下に埋め込まれていた。これを摘出してしまえば、起爆信号は爆弾に届かず、爆発しない。プレイヤー人数が2人の場合、アンソニーは《死の舞踏》、セガールは《突然変異》(でコピーした《死の舞踏》)を使用して、これを行なったものとする。神業を使用済みにすること。

エンディングフェイズ

●シーン11:最後の猿
◆解説
 知性化猿たちを全滅させると、檜山村は解放される。エヴァのその後(※)については、プレイヤーと相談して決めること。特に希望がなければ、彼女はいずこかへ消えて行く。
▼描写
 知性化猿たちを全滅させたことで、檜山村は解放される。だがそれと引き換えに、エヴァは同族を皆殺しにすることになった。エヴァは悲しみをたたえつつ、キャストたちに礼を述べる。
▼セリフ:エヴァ
「協力に感謝します。ありがとう、ヒトのみなさん」
(これからどうする)「仲間たちを滅ぼした私は、もうサルには戻れない。でもヒトにもなれない。そんな私でも生きられる場所が、世界のどこかにあるかもしれない。それを探しに行きます」
◆結末
 エヴァは奥多摩の森の中へと消えて行く。
 それぞれのキャストが締めの演出を行なったら、アクトを終了する。お疲れ様でした。

※その後
 千早はじきに、霊長類研究所の壊滅を知るだろう。その最後の生き残りであるエヴァの行方を追うかもしれない。だがそれは別の物語だ。

ゲスト・トループデータ

セガール
▼スタイル
カブキ、カブトワリ、ヒルコ◎●
▼神業
《チャイ》《とどめの一撃》《突然変異》
▼能力値
理性:3/10 感情:7/14
生命:7/12 外界:5/12
CS:8(15)
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
射撃 3RPL・
アニマルマター 1・・・・
リソース:ビースト 2・・・・
ファッションリーダー 2・・・・
クイックドロー 3・・・・
花吹雪 2・PL・
ハードラック 2・PL・
戦闘本能 2・PL・
▼アウトフィット
・アサルトライフル
攻:P+8 射:近~中 フルオート可(FA3)
・チープシャツ、サングラス
▼戦闘プラン
セットアップ:〈戦闘本能〉、CSをカッコ内の数字に。シーン1回。
メジャーアクション:〈射撃〉〈花吹雪〉によるフルオート攻撃。対象:範囲(選択)、達成値+3、攻撃力P+15(フルオート込み)
リアクション:〈ハードラック〉。達成値+4、カット1回。
常時:肉体・精神ダメージ3点軽減。
アンソニー
▼スタイル
カタナ、カゲ、ヒルコ◎●
▼神業
《死の舞踏》《不可知》《突然変異》
▼能力値
理性:7/11 感情:4/14
生命:9/14 外界:4/9
CS:9(13)
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
白兵 2R・L・
アニマルマター 1・・・・
リソース:ビースト 2・・・・
二刀流 1・・・・
居合い 2・・・・
猿飛 2・・・・
死点撃ち 2R・L・
霞斬り 2R・L・
戦闘本能 2・PL・
▼アウトフィット
・バトルナイフ×2(〈二刀流〉済)
攻:S+10 射:至近
・スカウトスーツ
防(S/P/I):3/3/4
▼戦闘プラン
セットアップ:〈戦闘本能〉、CSをカッコ内の数字に。シーン1回。
メジャーアクション:〈白兵〉〈死点撃ち〉〈霞切り〉。達成値+2、攻撃力x+14、ダメージ軽減不可。
常時:ドッジの達成値+2。
知性化チンパンジー(ヒルコ6レベルトループ)
▼能力値
理性:7/9 感情:9/11
生命:9/11 外界:6/8
HP:15 CS:6(15)
▼技能(R=スペード、P=クラブ、L=ハート、M=ダイヤ)
知覚 3RPL・
射撃 2・PL・
アニマルマター 1・・・・
リソース:ビースト 2・・・・
獣の感覚 3・・・・
生存本能 2・PL・
戦闘本能 2R・・M
▼アウトフィット
・サブマシンガン
攻:P+6 射:近 フルオート可(FA2)
・脳内爆弾
精神ダメージ-2
・チープシャツ
▼戦闘プラン
セットアップ:〈戦闘本能〉、CSをカッコ内の数字に。シーン1回。
メジャーアクション:〈射撃〉。攻撃力はP+12(フルオート込み)
リアクション:〈知覚〉〈生存本能〉でドッジ。達成値+3。カット1回。

セッション用素材

ユドナリウム用アクトルーム

 ユドナリウム用のセッションツールを用意しました。RLは自由にお使いください。使用イメージはこんな感じです。使用方法は、zipをユドナリウムの画面内にドラッグ&ドロップするだけです。

画像4

トレーラー画像

画像3

 トレーラー画像を用意しました。Twitterなどで募集する際に、自由にお使いください。

※長すぎるため、スキ!をしたい方はこちらまで

 「トーキョー・ナイトメア」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。この記事は同社の2次創作規約のもとで作成されています。

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