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さんとめ の循環型農法

関東の地質

関東平野の土は、関東ローム層が堆積しています。
関東ローム層は、関東平野を囲む火山(富士山や浅間山などいくつもあります)に由来する火山性の土壌です。
埼玉で庭の土を掘れば、10センチ~20センチくらいで、硬い層にぶつかります。色は明るい茶色で、粘性があり、粘土みたいな感じです。
それが、関東ローム層です。
作物の生育には適していない痩せた土地です。

関東の土地の断面

江戸時代の土壌改良政策

 江戸で人口が増えて、近郊での野菜収穫量を増やさねばならなくなりました。そこで、1700年ころ、将軍綱吉の側用人の柳沢吉保は、埼玉県三芳町と所沢にまたがる さんとめ地区で、土の改良に取り組みました。
 土の改良は、そこだけでなく、ほかの土地でもほかの方法が試みられました。大宮では客土(肥沃な土地から土を持って来て、上に被せる方法です)
武蔵野では、人や家畜の排泄物を肥料化したもの(下肥)や魚肥を畑に混ぜたそうです。
 そして、さんとめ地区では、落ち葉堆肥を作って、それを畑に投入することで土質を改良しました。それまでのさんとめは、痩せた土地で草原(まぐさ場)だったそうです。

農業用水、生活用水

 日本には偏西風が吹いており、富士山の東側に位置する埼玉は、全国的に見て、雨が少ない県です。なかでも、所沢 三芳町 富士見のあたりは、とくに少ないような気がします。
 富士見や所沢では、「砂川堀」とか「空堀川」とか、いかにも頼りない名前の川が流れています。江戸時代に工事が行われているのですが、途中で終わっているのは、いろいろ困難があったのかもしれません。
当時は、季節的に水が消えてしまったりそうです。
 そこで、さんとめ全域で11か所の深井戸を掘削して、水を確保しました。

さんとめの農家

 さんとめでは、計画的に土地が割り振られて開拓しました。
1軒1軒は、家屋、それを囲む屋敷林、畑、雑木林(やま)がセットになって、短冊状の土地がずらりと並びました。

googleの航空写真 江戸時代からの縦長の畑が今も続いています

 屋敷林と雑木林(やま)の樹は、薪や木材として利用され、屋敷林の竹も利用されました。やまでは、きのこや山菜も取れたことでしょう。そして、秋に落葉した葉は集められ、熟成されて、落ち葉堆肥として畑で利用されました。  なんと、豊かな・・・
 鶏や羊を飼い、畑の一部で綿花を育てれば、自給自足生活ができそう なんて思ってしまいました。山奥のようには地価が安くないので、無理ですけど。

 無駄のない循環型農法によって、痩せた土地が豊かな土地に生まれ変わりました。

肥料について

 肥料には、N(窒素)P(リン)K(カリ)が含まれています。
植物には、この3要素が必要なのです。
 化学肥料では、リンはリン鉱石を使っています。リン鉱石は、世界的に枯渇が心配されています。それに、無機リンは、土中の鉄分などと化学的に結びつきやすく、そうなると植物に吸収できなくなってしまいます。それで大量の化学肥料を投入することになり、畑の土がガチガチでボロボロの質の悪い土になってしまいます。
 動物性堆肥、落ち葉堆肥には、ちゃんとNPKが含まれています。そして、リンは植物に吸収されやすい有機リンです。
 さんとめの農法は、健康的で肥沃な土を作ります。

サスティナブル

 さんとめの、やまの恵みを利用する農法は、「自然循環型農法」です。
まさにサスティナブル。
 この落ち葉堆肥農法は、「日本農業遺産」の第1回めに認定されたそうです。

わたしにできること

 「循環」
この言葉は、わたしの心の中にぴたりと嵌りました。
循環する畑、循環する森の命、循環する水、循環する大気
地球は循環しています。
 「エコロジー」
本来の意味は、「生物が自然環境の中でどのように生活し、相互作用を持っているのかを研究する学問分野」だそうです。
 人は、地球の自然と生物の世界の中の一部であって、地球は、一方的に人間に与えられた恵みではないし、支配対象でもない とわたしは思います。
 でも、具体的なことを考えれば、身近で急速に失われてゆく林を守る力さえ持っていません。
 わたしにできるのは、わたし個人のサスティナブルな試みを、子供たちに伝えることだと思い、この文章を書き始めました。




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