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夜明けのひととき

夜明けに目が覚める。外はまだ暗い。冷たい空気が静かに部屋に漂い、窓の外からは遠くの街灯がかすかに光を放っている。時計の針はまだ5時を指している。しばらくベッドの中でじっとしていると、遠くから聞こえる鳥の声が次第に近づいてくる。今日も暑くなるだろう。そんな予感がする。

ベッドを出て、キッチンへ向かう。床の冷たさが心地よい。コーヒーメーカーに豆をセットし、スイッチを押す。コーヒーの香ばしい香りが部屋中に広がる。この瞬間だけは、心が穏やかになる。コーヒーカップを手に取り、窓辺に座る。外はまだ暗いが、東の空がわずかに明るくなり始めている。

「こういう毎日は寒い日が恋しくなるものだな」とふと思う。夏の暑さにうんざりしながら、冬の寒さを懐かしむ。しかし、寒くなればまた暑かった日のことを思い出すのだろう。所詮、人生は無いものねだりの連続だ。

コーヒーを一口飲みながら、頭の中に浮かぶ様々な考えを整理しようと試みる。しかし、考えは次から次へと湧いてきて、一向にまとまらない。そんな時は、ただ目の前の風景に身を委ねるしかない。窓の外では、徐々に朝の光が街を照らし始めている。新しい一日が始まる。

この瞬間が好きだ。何も決まっていない、新たな可能性に満ちた朝。今日は何が起こるのだろう。どんな出会いが待っているのだろう。そんな期待と不安が入り混じる感覚が、僕を少しだけ興奮させる。

コーヒーカップの中の液体が少しずつ減っていく。部屋の中も少しずつ明るくなり、壁にかかる影が動いていく。今日もまた、一日が始まる。それは紛れもない現実であり、僕たちの人生の一部だ。無いものねだりをしながらも、一歩一歩前に進むしかないのだ。

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